原則は「誰が排出したか」
判断の軸はここです。
- 自社が排出した廃棄物を、自社で運ぶ:収集運搬業の許可は不要とされています。
- 他社が排出した廃棄物を、依頼を受けて運ぶ:許可が必要です。
単純な原則ですが、実務では境目が曖昧になります。「自社が排出した」と言えるかどうかが論点になります。
つまずきやすい場面
① 整備工場から車を引き取る際、廃タイヤも積んでくる
車は使用済自動車として引き取ります。しかしタイヤ交換で発生した廃タイヤは、整備工場が排出した廃棄物です。
これを運ぶなら、収集運搬業の許可が必要になり得ます。「車と一緒だから」では説明になりません。
② 同業者から処理しきれない廃棄物を回してもらう
相手が排出者です。運搬にも、受け入れて処分することにも許可の確認が必要です。
③ 工場から金属くずを引き取る
有価で買い取っているなら、有価物の売買です。しかし処理費をもらって引き取るなら、廃棄物の処理になります。
お金の流れる向きを確認してください。相場が下がって逆有償になった時点で、扱いが変わっている可能性があります。
④ 建設現場から金属くずを運ぶ
排出事業者が誰かの確認が要ります。元請なのか下請なのか。そして有価か廃棄物か。
⑤ 個人から不要品を引き取る
一般廃棄物に当たる場合、産業廃棄物とは別の枠組みになります。市町村の許可が関わる領域です。
「ついで」が積み上がる構造
この問題が起きる理由を整理します。
- 取引先との関係で断りにくい
- 1回だけならと引き受ける
- それが定例化する
- 現場が判断できず、そのまま続く
- 社長も把握していない
つまり悪意なく積み上がります。だからこそ、仕組みで防ぐ必要があります。
防ぐための運用
① 受け入れてよいものの一覧を作る
品目ごとに、受け入れ可否と必要な手続きを一覧にします。現場が見て判断できる形にしてください。
② 断ってよいという方針を明示する
これが最も重要です。現場は「持って帰ってこい」と言われるのを恐れて、確認せずに積みます。
「一覧にないものは受け入れない、判断に迷ったら会社に連絡する」と明示してください。そして実際に断った場合、それを責めないことです。
③ 引き取りに行く人にチェックリストを持たせる
- 今日引き取るものは何か(事前に確認する)
- それ以外のものを積むよう頼まれたら、その場で判断せず連絡する
- 誰が排出したものかを確認する
- お金の流れる向きを確認する
④ 定期的に実態を確認する
四半期に一度、実際に何を運んでいるかを洗い出してください。知らないうちに定例化しているものが見つかります。
許可を取るという選択
取引先の要望に応えることが事業機会になるなら、許可を取るという判断もあります。
検討すべき点を挙げます。
- どの品目について、どの区域で許可が必要か(都道府県ごとに必要になります)
- 取得の要件(講習の受講、車両、経理的基礎など)
- 取得に要する期間と費用
- 取得後の管理負担(更新、変更届、報告)
- それによって得られる収益
1番目に注意してください。運搬する区域ごとに許可が必要になります。積む場所と降ろす場所の両方が関わります。複数県を跨ぐなら、それぞれで取得が必要です。
4番目も見込んでください。許可が増えるほど、更新と管理の負担が増えます。担当者1人に集中させないよう、体制を整えてから取得してください。
自社運搬でも記録を残す
許可が不要な自社運搬でも、次を残しておいてください。
- 何を、いつ、どこへ運んだか
- 車両(自社の車両であることが分かる形で)
- 運搬した人
これは義務の有無とは別に、「自社運搬であること」を説明するための材料になります。行政の確認で、運搬の実態を問われた際に示せます。
承継の場面で問われる点
買い手はここを確認します。
- 持っている許可の範囲と、実際の運搬内容が一致しているか
- 他社の廃棄物を運んでいる実態がないか
- 許可の有効期限と更新の管理
- 受け入れ判断の基準が文書になっているか
2番目が問題になると、過去の行為について責任を引き継ぐことになります。買い手が最も嫌う類型のリスクです。
心当たりがあるなら、承継の話が始まる前に整理してください。行政に相談して是正するほうが、隠して発覚するより結果がよくなります。
取引先に説明する
断るときの伝え方も設計してください。関係を損なわずに断るのは可能です。
伝える内容の例を挙げます。
- 「当社の許可の範囲外なので、お引き受けできません」
- 「許可を持つ業者をご紹介できます」
- 「有価で買い取れる品目であれば対応できます」
2番目が有効です。断るだけでなく代わりの手段を示せば、関係は続きます。許可を持つ業者との関係を作っておく価値があります。
そして、相手も法令上の立場があります。「無許可の業者に委託した」ことになれば、相手も責任を問われます。断ることは相手を守ることでもあると説明できます。
※ 許可の要否は運搬する物、区域、取引の形態によって異なります。個別の判断は所管の自治体窓口へご確認ください。