なぜ回収の問題が起きるのか
この業種に固有の構造があります。
- 一度の出荷金額が大きい
- 相場が短期間で大きく動く
- 出荷先が相場の下落で資金繰りを崩すことがある
- 出荷から入金までに間がある
- 継続的な取引のため、断りにくい
3番目が根本です。相場が下がると、自社の売上も減り、同時に取引先の支払能力も落ちます。二重に効きます。
5番目が判断を狂わせます。長く付き合ってきた相手に「支払が確認できるまで出せません」と言うのは難しいものです。しかし、そこで出し続けた結果、損失が拡大します。
取引先の状況を把握する
付き合いの長さは、支払能力の保証になりません。定期的に確認してください。
- 決算の内容(開示を求められるか)
- 支払の遅れが増えていないか
- 支払方法の変更を求めてこないか
- 担当者が頻繁に変わらないか
- 同業からの評判
- 受け入れの量が急に増えていないか
2番目が最も早い兆候です。期日どおりに入っていたものが数日遅れるようになる。これが最初の合図です。
6番目も注意してください。急に多く引き取ろうとする相手は、資金繰りを回すために量を増やしている場合があります。
5番目は有効な情報源です。同業の集まりで、支払の状況は話題になります。孤立していると、この情報が入りません。
決済条件を設計する
条件を先に決めておいてください。
- 新規の相手は現金または前払いから始める
- 後払いに移す条件を決める(取引期間、実績)
- 相手ごとの上限額を決める
- 支払までの日数を短くする
- 上限を超える場合の承認を誰が出すか
3番目が最も効きます。「この相手には未回収がいくらまでなら許容できるか」を先に決めておく。それを超えたら出荷を止めます。
5番目も決めてください。上限を超える判断を現場に任せると、断れずに広がります。社長の承認を必要とする形にしてください。
4番目は交渉の余地があります。単価を少し下げても支払を早くしてもらう選択が、資金繰りの面で有利な場合があります。
一社への集中を避ける
出荷先が1社に偏っていると、その1社が止まったときに事業が止まります。
- 最大の出荷先の比率を把握する
- その1社が止まった場合に出せる先があるか
- 切り替えるまでにかかる日数
- その間、ヤードに保管できる量
4番目が現実的な制約になります。出荷が止まれば、数日で置き場所がなくなります。保管の上限もあります。
だからこそ、平時から複数の先と取引してください。単価が少し低くても、いつでも出せる先を確保しておく価値があります。
兆候が出たときの手順
- 未回収の残高を確認する:今いくら抱えているか。
- 状況を直接聞く:一時的な遅れか、恒常的なものか。
- やりとりを記録する:いつ、誰に、何を伝えたか。
- 新規の出荷を止めるか決める
- 回収の方法を相談する:分割、担保、支払計画。
- 他の出荷先を確保する
- 回収の見込みを判断する
- 税務上の処理を税理士に相談する
4番目が最も難しい判断です。止めれば回収が難しくなり、続ければ損失が拡大します。上限を先に決めておくのは、この場面で判断できるようにするためです。
6番目を同時に進めてください。出荷を止める決断ができるのは、他に出せる先があるときだけです。
保険と保全の手段
制度として使えるものがあります。
- 取引信用保険
- 手形や電子記録債権の利用
- 担保の設定
- 保証人
- ファクタリング
1番目は、大口の取引がある場合に検討の価値があります。保険料と補償の範囲を比べてください。
ただし、いずれも手段であり、根本は取引先の選択と上限の管理です。制度で守ろうとする前に、集中を避け、上限を決めることが先です。
承継の場面でも見られる
与信の管理は、譲渡の調査で確認されます。
- 売掛金の内容と、回収の状況
- 長期に滞留している債権がないか
- 一社への依存度
- 与信の管理の仕組みがあるか
2番目が指摘されます。回収できていない債権が資産に載っていると、実質的な価値が下がります。整理してから交渉に入るほうが有利です。
上限を決める具体的な方法
「いくらまで」を決めるための考え方を示します。
- その額が回収できなくても事業が続くか
- 1か月分の固定費と比べてどうか
- 手元資金の何割に当たるか
- 他の取引先で代替できる量か
1番目が判断の基準です。失っても倒れない額に留めるのが与信管理の本質です。
そして上限は相手ごとに変えてください。決算を確認できる相手と、そうでない相手で同じ額にする理由はありません。
社内で共有する
- 相手ごとの上限額
- 現在の未回収の残高
- 上限に近づいたときの手順
- 承認を出す人
2番目を出荷の担当者が見られる状態にしてください。知らなければ止められません。週に一度、残高を共有する運用で足ります。
※ 債権の回収や税務上の処理は個別の状況によって異なります。具体的な対応は専門家にご相談ください。