なぜズレるのか

この業態の資金の流れを追ってください。

  1. 車を引き取り、買取代金を支払う(ここで資金が出る
  2. 解体する(人件費、燃料費が発生)
  3. 処理費を支払う(廃タイヤ、廃油など)
  4. 部品を保管する(数か月売れないものもある)
  5. スクラップがまとまるまで待つ
  6. 出荷する
  7. 締めの後、決済条件に応じて入金される(ようやく資金が入る

1から7までの期間が、資金が出ていって戻ってこない期間です。この期間の長さと、月間の取扱量から必要な運転資金が決まります。

期間を測る

次の日数を測ってください。

  • 買取代金の支払いまで:即金か、締め払いか
  • 入庫から解体まで:滞留期間
  • 解体から出荷まで:スクラップの滞留期間
  • 出荷から入金まで:決済条件
  • 部品の在庫期間:平均何日で売れるか

合計すると、資金が寝ている日数が出ます。

これに1日平均の支出を掛けると、必要な運転資金の目安になります。

この業態で資金を固定するもの

① 部品在庫

最も長く資金を固定します。取り外した時点で費用は発生していますが、売れるのは数か月後、あるいは売れないこともあります。

滞留在庫は、資金が戻ってこない状態です。

② スクラップ在庫

まとまるまで出荷できないため、その間資金が寝ます。相場を待って保有すれば、さらに長くなります。

③ 売掛金

出荷したが入金されていない分。相場が上がると、同じ量でも売掛金の金額が増えます。リスクの絶対額が知らないうちに拡大します。

④ 現金での買取

個人からの買取で即金払いをしている場合、支出が先行します。

手を打てる場所

入金を早める

  • 決済条件の交渉(締め後の支払いサイトを短くする)
  • 出荷の頻度を上げる(早く売れば早く入金される)
  • 部品の値下げを早めて回転させる

支出を遅らせる

  • 買取代金の支払条件(即金から締め払いへ)
  • 処理費の支払条件

ただし取引先の資金繰りも同じ問題を抱えています。一方的に条件を変えると関係が悪化します。慎重に進めてください。

寝ている資金を減らす

最も効果があり、自社だけで実行できる方法です。

  • 滞留在庫を処分する
  • 取る部品を絞る(在庫を増やさない)
  • スクラップの出荷頻度を上げる
  • 入庫から解体までの滞留を減らす

在庫を半分にすれば、その分の資金が戻ります。そして借入を減らせます。

季節変動を見込む

この業態には季節性があります。

  • 車検の時期、決算期に合わせて入庫が増える
  • 年度末、年末に取引が集中する
  • 連休の前後で荷動きが変わる
  • 相場が下がる局面では在庫が増えやすい

月次の資金の動きを1年分並べてください。最も資金が薄くなる月が分かります。そこに備えることが必要です。

金融機関に説明する

運転資金の借入を申し込む際、次を示せると話が進みます。

  • 資金が寝ている日数の内訳
  • 月次の資金の動き(1年分)
  • 在庫の内容と回転状況
  • 売掛金の内訳と回収状況
  • 在庫を減らす取り組みの経過

5番目が効きます。「在庫が資金を固定している」と分かっていて、減らす取り組みをしているという説明ができれば、評価が変わります。

逆に「なんとなく資金が足りない」では、判断材料がありません。

承継への効き方

運転資金の構造は、承継の場面で確認されます。

  • 必要な運転資金の規模
  • それが借入で賄われているか
  • 在庫と売掛金の質
  • 資金が寝ている日数を短縮する余地

4番目が好材料になります。「改善の余地がある」=「買い手が改善すれば資金効率が上がる」と読まれます。

そして、在庫を減らして借入を圧縮できていれば、個人保証を外す交渉も進めやすくなります。資金繰りの改善は、承継の準備そのものです。

資金繰り表を作る

感覚で「今月は厳しい」と言うのをやめ、表にしてください。

最低限必要な項目を挙げます。

  • 月初の残高
  • 入金の予定(出荷実績と決済条件から算出)
  • 支出の予定(買取、処理費、人件費、返済、税金)
  • 月末の残高見込み

3か月先まで見えていれば十分です。足りなくなる月が事前に分かれば、手を打つ時間があります

直前に分かった場合、選択肢は借入しかありません。事前に分かれば、出荷を早める、在庫を処分する、支払を調整するといった手が使えます。

そして金融機関に相談する際も、この表があれば説明が具体的になります。「いくら、いつまで必要か」を示せます。

※ 必要な運転資金の規模は事業構成と取引条件によって異なります。資金計画は税理士等の専門家にご相談ください。