回収できないと何が起きるか
まず現実を押さえてください。海外の相手から代金を回収するのは、極めて困難です。
- 訴訟を起こすには、相手国での手続きが必要
- 費用が回収額を上回ることが多い
- 相手の所在が不明になることがある
- 貨物は既に相手の手に渡っている
つまり実質的に回収不能になります。だから、出す前に条件を固める必要があります。
決済条件の選択肢
① 前払い(全額)
- リスク:売り手にはほぼありません。
- 難点:買い手が嫌がります。相手にとってはリスクが全部自分に来ます。
- 使う場面:初回取引、少額、相手の信用が不明な場合。
初回はこれを原則にしてください。相手が嫌がるなら、その取引を見送る判断もあります。
② 一部前払い、残額を後払い
- 例えば半額を前払い、残りを船積み後または到着後。
- リスクを分け合う形です。
- 取引実績が少しある相手に使います。
前払いの比率は、「回収できなくても耐えられる金額」から決めてください。
③ 信用状(LC)
- 銀行が支払いを保証する仕組みです。
- 書類の要件を満たせば、銀行から支払われます。
- 金額が大きい取引に向きます。
ただし書類の不備があると支払われません。要件が細かいため、銀行と通関業者の助言を得て進めてください。手数料もかかります。
④ 後払い
最もリスクが高い形です。長年の取引実績があり、回収に問題がなかった相手に限るべきです。
そして、後払いにする場合も金額の上限を決めてください。
取引実績に応じて緩める
段階的に条件を緩めるという考え方です。
- 1〜3回目:全額前払い、少額から
- 4〜10回目:一部前払い、金額を上げる
- それ以降:条件を協議。ただし上限を設ける
そして各段階で回収に問題がなかったことを確認してください。1度でも遅れがあれば、前の段階に戻す判断が必要です。
相手を確認する
決済条件と併せて、相手方の確認が必要です。
- 会社として実在するか(登記、住所、電話)
- どういう事業をしているか
- 他の日本の業者との取引実績があるか
- 連絡が安定して取れるか
- 担当者が代わっても会社として続いているか
3番目が有力な材料です。同業者に聞けば、その相手との取引経験がある会社が見つかることがあります。業界のつながりを使ってください。
そして、会って話したことがあるかどうかも判断材料になります。商談会や相手国への訪問で顔を合わせている相手は、そうでない相手より信頼できます。
危険な兆候
次のような場合は慎重に判断してください。
- 相場より明らかに高い価格を提示してくる
- 大量の注文を急いでまとめたがる
- 初回から後払いを強く求める
- 会社の情報を出さない
- 連絡手段が個人の携帯やメッセージアプリだけ
- 支払いの名義が注文者と違う
1番目と2番目が組み合わさっている場合は、特に注意が要ります。好条件には理由があります。
6番目も確認してください。第三者からの入金は、後で問題になることがあります。
為替の影響
決済までの期間に為替が動きます。
- 円建てにできれば、自社は為替リスクを負わない(相手が嫌がる場合がある)
- 外貨建てなら、契約時と入金時の差が損益に出る
- 期間が長いほど変動幅が大きくなる
対応としては、円建てで交渉する、期間を短くする、価格に余裕を持たせるといった方法があります。
そして、輸出の比率が高い事業では、為替の影響を月次で把握してください。相場と為替の両方で振れる構造になります。
社内のルールにする
判断を個人に任せず、ルールを決めてください。
- 初回取引は全額前払い
- 後払いを認める場合の上限金額
- 上限を超える場合、誰の承認が必要か
- 未回収が発生した場合の対応手順
- 相手方の確認項目
担当者が「関係を作るため」に条件を緩めることがあります。ルールがあれば、担当者が断る根拠になります。
そしてこのルールは、承継の場面でも評価されます。輸出のリスク管理が仕組みになっているかどうかは、買い手が必ず確認する点です。
未回収が出たときの対応
それでも回収できない事態は起こり得ます。対応の手順を決めておいてください。
- まず連絡を取る:単なる遅延か、支払う意思がないのかを確かめる。
- やりとりを記録する:いつ、誰に、何を伝えたか。
- 新規の出荷を止める:未回収がある相手に出し続けない。
- 回収の見込みを判断する
- 税務上の処理を税理士に相談する:貸倒として処理できる要件がある。
- 原因を振り返り、ルールを見直す
3番目を徹底してください。「今度払うから、次も送ってほしい」に応じて損失を拡大させるのが最も避けたい展開です。
6番目も忘れないでください。なぜ後払いにしたのか、誰が判断したのか。そこを直さなければ繰り返します。
※ 決済条件や信用状の実務は取引内容によって異なります。具体的な設計は取引銀行および専門家にご相談ください。