3つの形がある
長期の取り決めには段階があります。
- 固定価格:期間中の単価を決める。相場に関係なく同じ。
- 相場連動:指標に一定の掛け率や差額を乗せる。
- 量の約定のみ:価格は都度決め、量だけ約束する。
3番目が見落とされやすい選択です。「毎月一定量を出す」と約束するだけで、条件が改善する場合があります。価格を固定しなくても、取引先にとっては量の見通しが立つ利点があります。
2番目が実務では最も使われます。ただし、どの指標に連動させるか、掛け率をどうするかで有利不利が分かれます。
固定が守ってくれる場面
- 相場が下がったとき、単価が維持される
- 資金繰りの見通しが立つ
- 買取価格を安定させられる
- 出荷先の確保になる
- 借入の相談で説明しやすい
4番目が意外に大きい価値です。相場が急落すると、引き取りを絞る出荷先が出ます。そのときに確実に出せる先があるかどうかは、資金繰りに直結します。
3番目も経営の安定につながります。出荷の単価が読めれば、買取価格を頻繁に変えずに済みます。取引先からの信頼にもなります。
固定で損をする場面
- 相場が上がっても単価が変わらない
- 他社がより高く買う状況で出せない
- 約定した量を出せないときに責任が生じる
- 期間が長いと、状況の変化に対応できない
- 他の出荷先との関係が薄くなる
3番目が実務的な危険です。入庫が減って約定した量に届かない場合、どうなるのかを確認しておく必要があります。
5番目も長期的な問題です。1社に集中すると、契約が終わったときに他の選択肢がありません。交渉力が下がります。
条件を設計する
結ぶ場合、次を明確にしてください。
- 期間(短めに始めて、更新で延ばす)
- 対象の品目と等級
- 量の下限と上限
- 量に届かない場合の扱い
- 相場が一定幅動いた場合の見直し条項
- 減量や品質の判定の基準
- 決済の条件
- 解除できる条件
5番目が最も重要です。相場が大きく動いたときに協議できる条項を入れておけば、固定の不利が軽くなります。
3番目も両側に幅を持たせてください。下限だけでなく上限も決めておくと、想定を超える量を安い単価で出す事態を防げます。
6番目を曖昧にしないでください。単価が固定でも、判定で減らされれば実質の手取りは変わります。基準を書面にしてください。
全量を出さない
最も実務的な工夫です。
- 出荷量の一部だけを長期契約に充てる
- 残りは都度の取引にする
- 比率を決めておく(半分程度から始める)
- 状況に応じて比率を見直す
この形にすると、下がったときは契約分で守られ、上がったときは都度の分で利益が取れます。
そして複数の出荷先との関係が維持されます。契約が終わったときの選択肢も残ります。比率は品目ごとに変えても構いません。
相手の事情も見る
長期契約を持ちかけられた理由を考えてください。
- 安定した仕入を確保したい
- 自社の設備を稼働させる量が必要
- 相場が上がると見ている
- 他社に流れるのを防ぎたい
3番目の可能性を頭に置いてください。相手が上がると見ているなら、固定は相手に有利です。逆に、下がると見ているときは持ちかけてきません。
これは相手を疑う話ではなく、情報の非対称の問題です。だからこそ、見直しの条項と、全量を出さない設計が効きます。
判断の順序
- 現在の出荷先ごとの比率と単価を整理する
- 過去数年の相場の推移を確認する
- 提示された条件を、過去の相場に当てはめて試算する
- 下がった局面、上がった局面のそれぞれで比べる
- 量を確実に出せるか確認する
- 一部だけ充てる形で交渉する
- 見直しと解除の条項を入れる
- 契約書を専門家に確認してもらう
3番目と4番目を必ずやってください。過去3年の相場でこの条件だったら、いくら違ったか。数字にすれば、有利不利が見えます。
8番目を省略しないでください。量の約定と、履行できなかった場合の責任は、契約書の文言で決まります。
結ばない場合の備え
長期契約を選ばないなら、別の形で安定を作ってください。
- 出荷先を3社以上確保する
- それぞれと定期的に取引する(いざというとき出せる関係)
- 相場の情報源を複数持つ
- 保管の余裕を確保する
- 資金繰りに余裕を持たせる
2番目が要点です。年に一度しか出さない先は、急に頼んでも受けてもらえません。少量でも継続してください。
承継の場面での見られ方
- 長期契約の内容と残存期間
- その条件が有利か不利か
- 買い手が引き継げるか
- 出荷先の分散状況
3番目を確認してください。会社が変わった場合に契約が続くのか、解除される定めがあるのか。譲渡の前に確かめてください。
※ 契約条件の適否は個別の内容によって異なります。具体的な検討は専門家にご相談ください。