遅れの原因は在庫にある
売上と経費の集計は、それほど時間がかかりません。詰まるのは在庫です。
この業種で在庫の把握が難しい理由を挙げます。
- ヤードに大量の車両があり、数えるのに時間がかかる
- 解体の途中の車が、どの状態にあるか分けにくい
- 取り外した部品が棚に散らばっている
- スクラップの山の重量を測れない
- 品目ごとに単価が違い、相場も動く
- どこに何があるかの記録がない
4番目と6番目が最大の壁です。山になったスクラップの重量は、出荷するまで正確には分かりません。
だからこそ、厳密さを求めると月次が止まります。ここを割り切ることが、早く締めるための出発点です。
厳密さと速さを分ける
月次と決算を同じ精度でやる必要はありません。
- 月次:概算でよい。傾向をつかむのが目的。
- 決算:実地の棚卸を行い、精度を上げる。
この2つを分けてください。月次の目的は判断であり、正確な税額の計算ではありません。
月次で使える概算の方法を挙げます。
- 車両は台数で数え、平均の評価額を掛ける
- スクラップは前月末の残高に、入りと出の差を足し引きする
- 部品は棚の点数で数え、区分ごとの平均額を掛ける
- 単価は月初に決めた値を使い、月中は動かさない
2番目が実務的です。実測しなくても、入荷と出荷の記録があれば残高は推定できます。ずれは決算で調整します。
月初に決めておくこと
締めを早くするには、判断を先に済ませておく必要があります。
- 品目ごとの評価単価
- 車両の状態区分と、それぞれの評価額
- 部品の区分と平均額
- 誰が数えるか
- いつ数えるか(月末最終営業日など)
- 誰が集計するか
1番目を月初に決めてしまってください。月末に相場を見ながら単価を決めようとすると、そこで止まります。
5番目も固定してください。「余裕があるときに」では毎月ずれます。日を決めて、その日は他の作業を入れない形にしてください。
数える仕組みをつくる
棚卸を短時間で終えるための準備です。
- 区画ごとに置くものを決める(数える単位が明確になる)
- 車両の状態を区分し、区画で分ける
- 部品の棚に区分の表示をする
- 数える用紙を区画ごとに用意する
- 2人1組で数える(読む人と書く人)
1番目と2番目が効きます。解体前、解体中、解体済みを区画で分けておけば、区画ごとに台数を数えるだけで済みます。
混在していると、1台ずつ状態を確認することになり、時間が数倍かかります。日常の置き方が棚卸の速さを決めます。
10営業日で出す
目標を決めてください。翌月10営業日以内が現実的な水準です。
そのための段取りを示します。
- 月末最終日に棚卸をする
- 翌月の初日に売上と仕入を締める
- 3日目までに経費を入力する
- 5日目までに集計する
- 7日目までに前年同月と比べた資料を作る
- 10日目までに社内で共有する
6番目まで到達することが目的です。数字が出ても共有されなければ、判断に使われません。
そして最初から10日を目指さないでください。今が翌月末なら、まず20日を目標にしてください。段階を踏むほうが定着します。
税理士との役割分担
月次を税理士に任せきりにすると、遅くなります。
- 入力を自社で行うか、任せるか
- 在庫の把握は自社でしかできない
- いつまでに何を渡すかを決める
- 月次の面談をいつ行うか
- 速報を先に出してもらえるか
2番目が要点です。在庫の数字は現場にしかありません。ここが遅れれば、税理士が何をしても月次は出ません。
5番目も相談してください。細かい調整を後に回して、まず概算の数字を出してもらう形にすれば、判断は早くできます。
早く出ると何が変わるか
- 相場が下がり始めた段階で気づける
- 資金繰りの見通しを立てられる
- 買取価格を早く見直せる
- 滞留している在庫に気づける
- 金融機関に説明できる
- 後継者に判断を任せられる
1番目が最も大きい効果です。2か月前の数字では、下落に気づくのが遅れます。その間に高く買い続けることになります。
6番目も承継の準備として意味があります。数字が早く出る仕組みがあれば、後継者は経験に頼らずに判断できます。
置き方が締めの速さを決める
棚卸の時間は、日常の管理で決まります。
- 区画ごとに置くものが決まっているか
- 解体の段階で区画が分かれているか
- 部品の棚に区分の表示があるか
- どこに何があるかの記録があるか
- 通路が確保されていて数えて回れるか
2番目が効きます。解体前と解体済みが混ざっていると、1台ずつ見て判断することになります。
この整理は棚卸のためだけではありません。日々の作業の効率と、検査への備えにもなります。一度の投資で複数の効果があります。
最初の3か月は形を固定する
- 同じ区分、同じ様式で3回続ける
- 途中で細かくしない
- 3回分を並べて傾向を見る
- そこから精度を上げる部分を決める
2番目を守ってください。毎月区分を変えると比較できず、締めも遅くなります。粗くても同じ形で続けることが先です。
※ 会計処理や在庫評価の方法は個別の状況によって異なります。具体的な運用は税理士にご相談ください。