ズレが生まれる原因
意図せず差が広がります。理由を挙げます。
- 取得したときの単価で載せ続けている(相場が下がっても直さない)
- 売れない部品が在庫として残っている
- 解体途中の車の評価が実態と合わない
- 滞留した車両が取得時の価格で載っている
- 重量の把握が概算のまま積み上がっている
- 処分費のかかるものが資産として載っている
6番目が最も問題です。実際には金を払って処分するものが、帳簿では資産になっている。この状態では、資産の額が実態より大きく出ます。
2番目も積み上がります。10年前に取った部品が棚に残り、帳簿では在庫として計上されている。売れる見込みがなければ、資産としての価値はありません。
何が起きるか
ズレを放置した結果を押さえてください。
- 利益が実態より大きく出て、税負担が重くなる
- 自社株の評価が上がり、承継の税負担が増える
- 買い手の調査で修正され、価格が下がる
- 金融機関の見方が変わる
- 経営判断を誤る(儲かっているように見える)
2番目が承継で効きます。売れない在庫が資産として載っていると、その分だけ株価が高く評価されます。実態のない金額に対して税金を払うことになります。
3番目も避けられません。買い手は必ず実勢で見直します。そこで下がるなら、先に整理しておくほうが交渉が有利になります。
まず区分する
在庫を性質で分けてください。
- すぐ売れるもの:相場のある素材、動きのある部品
- 時間はかかるが売れるもの:需要の少ない部品
- 売れる見込みがないもの:需要のない部品、劣化したもの
- 処分費がかかるもの
3番目と4番目を洗い出すことが出発点です。ここが判明すれば、あとは処理の方法を決めるだけです。
区分の基準を決めてください。部品なら「何か月動いていないか」で機械的に分けるのが確実です。感覚で判断すると、いつまでも残ります。
評価の考え方を整える
区分ごとに扱いを決めてください。税理士と相談する前提で、論点を整理します。
- 相場のある素材は、直近の実勢に近い単価を使う
- 滞留した部品は、区分に応じて評価を見直す
- 売れる見込みのないものは、処分して損失を確定させる
- 処分費がかかるものは、資産として載せない
- 基準を文書にして、毎期同じ考え方を使う
3番目が実務的な解です。評価を下げるより、実際に処分するほうが説明が明確になります。処分した記録があれば、損失の根拠が示せます。
5番目を必ずやってください。年によって基準が変わると、数字の比較ができず、税務上も説明しにくくなります。
処分の記録を残す
整理するなら、証拠を残してください。
- 処分した日
- 品目と数量
- 処分の方法と委託先
- 費用
- 処分前後の写真
- 処理の伝票
5番目と6番目が揃っていれば、事実が示せます。記録がなければ、損失を計上した根拠を問われます。
そして棚から減らしたことを在庫の記録にも反映してください。処分したのに帳簿に残っていれば、整理した意味がありません。
実勢との差を毎期確認する
一度整理して終わりではありません。仕組みにしてください。
- 決算のたびに、動いていない在庫を洗い出す
- 基準の期間を超えたものは処分の対象にする
- 相場との差を確認する
- 処分した量と費用を記録し、翌期の判断に使う
2番目を自動的に回してください。判断の余地を残すと、毎年先送りされます。「18か月動いていないものは処分」と決めれば、迷いません。
4番目も効きます。処分にかかった費用が分かれば、そもそも取らない判断につながります。取る部品を絞る根拠になります。
承継の前にやっておく
譲渡や相続を考えている場合、順序があります。
- 在庫を区分し、実勢との差を把握する
- 処分すべきものの量と費用を出す
- 相場が良い時期に、売れるものを売る
- 売れないものを処分する
- 基準を文書にして、毎期の運用にする
- 整理後の数字で株価の評価を試算する
3番目の時期が重要です。やめると決めてから慌てて処分すると、買い叩かれます。時間があるうちに動いてください。
6番目まで進めば、承継の税負担の見通しが立ちます。整理する前と後で株価がどう変わるかを見れば、この作業の価値が数字で分かります。
取る部品の判断にも効く
在庫の実態が見えると、上流の判断が変わります。
- 売れずに残る部品の種類が分かる
- その部品を取る手間が無駄だと判明する
- 取らずに素材として出したほうが早い場合がある
- 処分費まで含めると赤字の品目がある
3番目が現場の判断を変えます。取って棚に置き、売れずに処分するなら、最初から取らないほうが利益が出ます。
処分した品目の一覧を現場に共有してください。数字で示すことが最も伝わります。
税理士に相談する前に揃えるもの
- 在庫の区分ごとの数量
- 動いていない期間
- 処分にかかる概算費用
- 売れる場合の見込み額
この4つがあれば、相談が具体的になります。「在庫が実態と合っていない気がする」だけでは、話が進みません。
※ 在庫評価や損失計上の要件は税務上の判断を伴います。具体的な処理は税理士にご相談ください。