鉄と非鉄は別の動きをする
まず押さえたいのは、この2つが違う要因で動くという点です。
鉄スクラップ
主な需要先は電炉です。したがって国内の建設需要と、電炉の稼働状況が価格に効きます。加えて輸出の動きも影響します。
季節性もあります。建設が動く時期、動かない時期で需要が変わります。年末年始や連休の前後で荷動きが変わることもあります。
非鉄(銅、アルミなど)
こちらは国際的な取引価格が基準になります。したがって海外の需給と為替の影響を強く受けます。
鉄が下がっているのに非鉄は上がっている、あるいはその逆という局面が生じるのは、この違いによるものです。
自社にとって効く指標を絞る
あらゆる指標を追う必要はありません。自社の出荷構成に応じて、効くものだけを見てください。
まず、直近1年の出荷金額を品目別に分けてください。鉄が8割の会社と、非鉄が半分を占める会社では、見るべきものが違います。
そのうえで、次を押さえます。
- 自社の主要な出荷先の建値:これが最も直接的です。取引先から提示される価格そのものです。
- 公表されている国内の相場情報:業界紙、専門サイトなど。方向感を掴むために使います。
- 非鉄の国際価格と為替:非鉄の比率が高い場合。
1番目が最も重要です。市場全体の話より、自社が実際にいくらで売れるかが経営判断の材料になります。
日々の仕入判断にどう使うか
相場が下がる局面で仕入価格を下げられなければ、粗利が消えます。逆に、上がる局面で仕入を抑えすぎれば、量が確保できません。
判断を勘に頼らないために、次の考え方があります。
- 出荷したときの想定単価を置く
- そこから必要な粗利を引く
- 処理にかかる費用(人件費、処理費、運搬費)を引く
- 残った金額が、支払える上限になる
この計算を相場が動いたら更新するという運用にすれば、仕入価格は自動的に決まります。社長が毎回判断する必要がなくなります。
そして、この仕組みがあること自体が承継の準備になります。仕入の判断が社長の頭の中にしかない会社は、引き継げません。
月次の経営管理にどう使うか
相場が動く事業では、売上金額だけを見ても実力が分かりません。前月より売上が減っていても、相場が下がっただけかもしれません。
並べて見るべき数字を挙げます。
- 処理台数:事業の量そのもの
- 出荷トン数:品目別に
- 平均単価:品目別に(相場の影響がここに表れます)
- 粗利率:仕入と出荷の差が確保できているか
- 在庫の量:期末に持っている量
この5つを並べると、売上の増減が「量の問題」か「価格の問題」かが判別できます。判別できれば、打つ手が変わります。
量が減っているなら入庫の開拓が必要です。価格だけの問題なら、量を維持しているという事実を評価すべきです。
相場に振り回されないために
相場は自社では動かせません。だからこそ、動かせるものに集中するという発想が要ります。
動かせるものを挙げます。
- 仕入価格(相場に連動させる仕組み)
- 処理量(入庫の開拓)
- 歩留まり(選別の精度)
- 運搬コスト(積載効率、出荷先の選択)
- 固定費(人員配置、設備の維持費)
- 在庫水準(持つ量の判断)
相場を1日中眺めていても、これらは改善しません。相場の確認は短時間で済ませ、残りの時間を上記に使うという時間配分をお勧めします。
社内で共有する
相場観が社長1人にしかないと、次の問題が生じます。
- 社長が不在の日に仕入の判断ができない
- 現場が「なぜ今日は安く買うのか」を理解できず、取引先に説明できない
- 承継のときに引き継げない
共有の方法は簡単なものでよいのです。
- 週に一度、主要品目の建値を紙に書いて掲示する
- 仕入価格の上限表を作り、更新する
- 月次の会議で、単価とトン数の推移を見せる
数字を見せると、現場の行動が変わります。品位を上げれば単価が上がると分かれば、選別に手をかけるようになります。
金融機関への説明にも使う
相場で業績が振れる事業は、決算書だけを見せると評価が読みにくくなります。単年度の利益が落ちた理由が伝わらないためです。
次の資料を月次または四半期で出しておくと、関係が変わります。
- 処理台数と取扱トン数の推移(3年分)
- 品目別の平均単価の推移
- 相場の指標と自社の単価を並べたグラフ
- 粗利率の推移
「相場は下がったが、量と粗利率は維持している」と示せれば、事業の実力が伝わります。設備投資の相談や、個人保証を外す交渉の土台にもなります。
見すぎないという判断
最後に、逆の注意点を挙げます。相場を1日中気にしていると、判断が短期的になります。
この業態で本当に効くのは、量の確保、歩留まりの向上、固定費の管理といった積み上げに時間がかかる要素です。相場の確認は決まった時間に短く済ませ、残りの時間をそちらに使ってください。
相場は自社では動かせません。動かせるものに時間を使うほうが、結果として利益が残ります。
※ 相場の水準や動きは市況によって変動します。本記事は見方の整理であり、将来の価格を示すものではありません。