何が属人化しているのか
まず、どの判断が集中しているかを分けてください。
- 買取価格をいくらにするか
- 出荷を今するか、待つか
- どの出荷先に出すか
- 雑品を分けるか、そのまま出すか
- 断る案件の判断
- 相場が動いたときに何を変えるか
2番目が最も感覚に頼られている部分です。「そろそろ上がりそうだから待つ」という判断は、根拠を説明されないまま行われます。
1番目は算式にできます。実は多くの会社で、社長の頭の中には算式があります。それを言葉にしていないだけです。
頭の中の算式を書き出す
買取価格の判断から始めてください。取り出す手順を示します。
- 直近に買った10台を選ぶ
- それぞれ、いくらで買ったかを並べる
- なぜその金額にしたのかを、社長に説明してもらう
- 説明に出てきた要素を書き出す
- 要素ごとに、金額への影響を数字にする
- その算式で他の10台を計算し、実際の金額と比べる
- ずれた分の理由を聞き、算式を直す
3番目が要点です。「なんとなく」で片付けられそうになりますが、必ず理由があります。年式、車格、取れる部品、事故の程度、相場。それを言葉にしてもらってください。
6番目で検証すると、算式の精度が分かります。8割の車で近い金額が出れば、実用になります。残りは例外として社長が判断すればよいことです。
出荷のタイミングを基準にする
相場を読むのは誰にもできません。だからこそ、読まなくてよい基準を作ってください。
- 一定量たまったら出す
- 一定の日数が経ったら出す
- 置き場所の上限に達したら出す
- 相場が一定水準を超えたら多めに出す
- 下がっている局面では待たずに出す
1番目から3番目を基本にしてください。相場を読んで待つより、決めた基準で回すほうが、長期では安定します。
待って上がることもありますが、下がることもあります。そして待つ間、資金が寝て、置き場所が埋まり、状態が劣化します。そこまで含めると、機械的に回すほうが有利な場面が多くあります。
4番目と5番目は幅を持たせる部分です。ここだけ社長が判断すればよい、という形にしてください。
相場の情報を共有する
判断を共有するには、材料も共有する必要があります。
- どこで相場を見ているか
- 週に一度、数字を記録する
- その記録を社内で見られるようにする
- 出荷先から聞いた情報を書き留める
- 過去の推移をグラフにする
5番目が有効です。数年分の推移が見えると、今が高いのか安いのかが感覚に頼らず分かります。
1番目を書き出してください。社長がどの情報源を見ているかを知らなければ、他の人は判断できません。
誰に渡すか
共有する相手を決めてください。
- 後継者(親族または従業員)
- 現場の責任者
- 買取の窓口を担う人
- 複数人に分散させる
4番目を勧めます。1人に全部渡すと、その人が辞めたときに元に戻ります。買取の算式は窓口の人に、出荷の基準は現場の責任者に、という形で分けてください。
そして渡した後、判断させてください。基準を教えても、実際に決める経験がなければ身につきません。最初は社長が確認する形で、徐々に任せる範囲を広げてください。
失敗を許す設計にする
任せると、社長ならしなかった判断が出ます。
- 金額の上限を決めて、その範囲では自由に判断させる
- 上限を超える場合だけ承認を求める
- 結果を振り返る(責めるためではなく)
- 基準に問題があれば直す
1番目が現実的な設計です。「30万円までは任せる」と決めれば、失敗の影響が限定されます。
3番目の姿勢が定着を左右します。判断を任せて失敗を責めれば、次から判断しなくなります。基準の問題として扱ってください。
承継に直結する
この作業は、事業承継の中心的な準備です。
- 後継者が判断できる状態になる
- 買い手から見た属人化のリスクが下がる
- 社長が現場を離れられる
- 体調を崩したときに事業が止まらない
2番目が譲渡の価格に影響します。社長の感覚に依存している会社は、社長が抜けた後の業績が読めません。買い手はその分を織り込みます。
3番目も実務的な効果です。休みが取れない状態のままでは、承継の準備を進める時間そのものが作れません。
週に一度の場をつくる
共有は、機会がなければ進みません。
- 週に一度、30分の場を設ける
- 相場の数字を確認する
- 今週の出荷の判断を話す
- 買取で迷った案件を共有する
- 判断の理由を言葉にする
5番目が核心です。結論だけ伝えると引き継げません。なぜそう決めたかを言葉にする場が必要です。
参加者は2〜3人で構いません。人数より継続が重要です。
記録に残していく
- 判断の基準(買取の算式、出荷の基準)
- 過去の判断とその結果
- 失敗した事例とその原因
- 相場の推移
3番目が最も価値のある記録です。高く買いすぎた事例、待って損をした事例。これが後継者の教材になります。
※ 判断基準の設計は各社の実情に応じた検討が必要です。具体的な進め方は専門家にご相談ください。