どういう変化が起きるのか
輸出が止まる、または条件が悪化する要因を挙げます。
相手国の規制変更
- 年式制限が厳しくなる(一定年数より古いものを入れない)
- 特定品目の輸入が禁止される
- 検査や証明の要求が加わる
- 関税、輸入税が上がる
- 輸入ライセンスの発給が絞られる
- 自国産業を保護する政策が取られる
日本側の規制変更
- 品目の輸出に関する要件が変わる
- 廃棄物該当性の判断が厳格になる
その他の要因
- 為替の大幅な変動(採算が合わなくなる)
- 海上運賃の高騰
- 相手国の経済状況の悪化
- 物流の混乱
- 相手国との関係の変化
いずれも自社の努力では変えられません。だから備えるしかありません。
依存度を測る
まず現状を数字にしてください。
集計すべき項目を挙げます。
- 売上全体のうち、輸出が占める比率
- 輸出のうち、仕向地別の比率
- 輸出のうち、取引先別の比率
- 輸出でしか売れない品目の比率
- 粗利全体のうち、輸出が占める比率
5番目が重要です。売上比率より粗利比率のほうが、影響の大きさを表します。輸出の利益率が高い場合、売上比率以上の打撃になります。
そして次の問いを立ててください。
- 最大の仕向地への輸出が止まったら、粗利はどれだけ減るか
- その状態で固定費を賄えるか
- 代替の販路を確保するのに何か月かかるか
- その間の資金は持つか
分散の方向
① 仕向地を増やす
最も直接的な備えです。1国に依存しない形にします。
- 複数の国のバイヤーと取引する
- 少量でも継続的に出しておく(実績がなければ緊急時に使えません)
- それぞれの国の規制を把握しておく
2番目が要点です。「話をしたことがある」だけでは代替になりません。
② 取引先を増やす
同じ国でも、複数のバイヤーと取引しておく。1社が撤退しても続きます。
③ 国内販売の比率を保つ
これが根本的な備えです。輸出が止まっても事業が続く構造にしておく。
- 整備工場、部品商への供給を維持する
- 自社ECや部品検索ネットワークでの販売
- 素材としての出荷
輸出のほうが利益率が高い場合、国内販売を軽視しがちです。しかし国内の販路は、輸出が止まったときの生命線になります。
④ 素材としての出口を確保する
部品として輸出できなくなっても、素材としては売れます。利益は下がりますが、在庫が動かない状態は避けられます。
情報を早く得る
規制の変更は、多くの場合予兆があります。早く知れば準備できます。
情報源を挙げます。
- 取引先のバイヤー(最も早い情報を持っています)
- 通関業者
- 業界団体
- 公的機関の発信
- 同業者との情報交換
1番目が最も実用的です。現地で事業をしている相手は、規制の動きを早く知ります。定期的に状況を聞く関係を作ってください。
止まったときの手順を決めておく
平時のうちに決めておくことを挙げます。
- 輸出できなくなった在庫を、どこへ回すか(国内販売、素材)
- 代替の仕向地へ切り替える手順
- 仕入(入庫)を絞る判断の基準
- 資金繰りへの影響と、対応
- 金融機関へ相談するタイミング
3番目が見落とされます。出口が止まったのに入庫を続ければ、在庫が積み上がります。仕入を絞る判断も必要です。
承継の場面での評価
買い手は輸出の依存度を必ず見ます。
- 売上と粗利における輸出の比率
- 仕向地と取引先の分散状況
- 規制リスクをどう認識しているか
- 国内販売の比率
- 担当者に依存していないか
輸出比率が高く、しかも1国・1社に集中している事業は、リスクとして大きく割り引かれます。「規制が変われば売上が消える」と読まれるからです。
逆に、分散されており、国内販売の柱もある事業は、輸出の売上がそのまま評価されます。
分散を進めることは、日々の安定と承継の準備を同時に果たします。まず依存度を数字にすることから始めてください。
比率の目安を持つ
「どこまでなら依存してよいか」の目安を持ってください。絶対的な正解はありませんが、考え方を示します。
次の問いに答えられる範囲に留めるのが安全です。
- 最大の仕向地が止まっても、固定費を賄えるか
- 最大の取引先が離れても、事業が続くか
- 代替の販路に切り替えるまでの期間、資金が持つか
この3つに「はい」と答えられなければ、依存度が高すぎます。比率を下げる取り組みが必要です。
そして毎年、決算の数字が出たタイミングで比率を確認してください。気づかないうちに依存が進むことがあります。良い取引先が見つかると、そこへの比重が自然に上がります。
※ 規制の動向や市況は変化します。最新の情報は通関業者、業界団体、公的機関の発信をご確認ください。