この業態で溜まりやすい資産
解体・リサイクル業の貸借対照表を見ると、次のものが残っていることがあります。
棚卸資産
- 何年も動いていない部品在庫
- 値が付かなくなったスクラップ
- 中古車として売るつもりで置いてある車両
固定資産
- 稼働していない重機、設備
- すでに処分したのに除却していない資産
- 使っていない建屋、倉庫
- 遊休地
その他
- 回収できない売掛金
- 役員貸付金
- 保険積立金(内容を把握していないもの)
- 差入保証金(回収可能性が不明なもの)
2番目に注意してください。固定資産台帳を見ると、すでに無い設備が載っていることがあります。除却の処理をしていないためです。
整理する4つの理由
① 自社株の評価が下がる
この業態では最も効く理由です。土地と棚卸資産が積み上がると、利益が薄くても株の評価額が膨らみます。
整理すれば純資産が下がり、相続税の負担や、後継者が株を買い取る負担が軽くなります。
② 買い手からの評価が上がる
価値のない資産が載っている決算書は、信用されません。「他にも実態と違う部分があるのではないか」と疑われます。
そして処分すべきものが残っていれば、その処分費が価格から差し引かれます。
③ 場所と管理の手間が減る
使わない設備が敷地を占め、動かない在庫が倉庫を埋めています。空けば、価値のあるものに使えます。
④ 現場の意識が変わる
処分の量と費用を共有すると、「取る」判断が変わります。後で捨てることになると分かれば、最初から取らなくなります。
処分の順序
効果と実行しやすさから、次の順序をお勧めします。
第1:除却していない資産の整理
すでに現物がないのに帳簿に載っているもの。処分費も発生せず、帳簿を実態に合わせるだけです。まずここから。
第2:回収できない売掛金
相手が廃業した、連絡が取れない。回収の努力を尽くしたなら、整理の対象です。税務上の要件を確認のうえ処理します。
第3:明らかに売れない在庫
劣化して使えない部品、値の付かないスクラップ。処分費がかかるため、金属部分は素材として売れる分を分けてください。
第4:稼働していない設備
撤去費用がかかります。ただし鉄として売れる部分があるため、収支を確認してください。
第5:滞留在庫(動きの遅いもの)
値下げして売る、まとめて引き取ってもらう、海外に出す。捨てる前に収益化を試してください。
第6:遊休地、使っていない建屋
金額が大きく、判断も重いため最後になります。売却、賃貸、活用のいずれかを検討します。
決算と資金への影響を平準化する
一度に大量に処分すると、次の問題が生じます。
- 大幅な赤字決算になり、金融機関からの評価に影響する
- 処分費が一度に出ていき、資金繰りが厳しくなる
- 損失を使い切れない(当期の利益を超える分)
したがって、数年に分けて進めてください。
- 1年目:除却していない資産、明らかに売れないものから。
- 2年目:滞留在庫の一部、稼働していない設備。
- 3年目:残りを処理。並行して、新たに滞留させない運用を定着させる。
並行してそもそも溜めない仕組みを作ってください。取る部品を絞る、値下げを早める、除却を都度行う。処分だけを繰り返しても根本は変わりません。
役員退職金と重ねない
この業態で特に注意すべき点です。
引退を前に、次をまとめて処理したくなります。
- 老朽設備の除却
- 滞留在庫の処分
- 不良債権の整理
- 役員退職金の支給
これらを同じ期に重ねると、資金が一度に出ていき、損失も使い切れません。時期を分けて設計してください。
順序としては、在庫と設備の整理を先に数年かけて進め、退職金を最後に置くのが実務的です。
税務の確認を先に
処分の方法によって、税務上の取り扱いが変わります。着手前に税理士へ確認してください。
- 在庫の評価損を計上できる要件
- 固定資産の除却損の計上時期
- 売掛金の貸倒処理の要件
- 貸付金の債権放棄の影響
処分してから「損失として認められない」と分かるのは避けたい展開です。証拠の残し方も含めて確認してください。
始め方
最初にやることは1つです。固定資産台帳と在庫リストを出してもらい、現物と突き合わせる。
これで次が分かります。
- 帳簿にあるのに現物がないもの
- 現物はあるが動いていないもの
- 帳簿価額と実際の価値の差
1日で終わる作業ではありませんが、ここから整理の全体像が見えます。決算の作業に合わせて着手してください。
処分の記録を残す
整理した内容を記録してください。3つの用途があります。
- 税務上の証拠:損失を計上した根拠。処分した日、方法、数量、写真。
- 現場への共有:処分した量と費用を伝えれば、取る判断が変わります。
- 承継の材料:整理を続けてきた経過を示せます。
1番目は特に重要です。処分の事実を示せなければ、損失が認められない可能性があります。写真と処分の伝票を残してください。
2番目も効きます。「今年、動かない在庫を処分するのに○円かかった」と共有すれば、現場の意識が変わります。数字で示すことが最も伝わります。
※ 資産の処分や損失の計上には税務上の要件があります。必ず税理士等の専門家にご相談のうえ進めてください。