この形が多い理由
解体・リサイクル業では、ヤードの土地を社長個人が所有していることがよくあります。
経緯としては次のようなものです。
- 創業時、個人で土地を買って事業を始めた
- 相続で受け継いだ土地を事業に使っている
- 法人化する際、土地は個人に残した
- 税務上の判断で個人所有にした
いずれも自然な経緯です。問題は所有形態ではなく、条件が整っていないことです。
何が問題になるのか
次の状態は、承継と保証の場面で必ず論点になります。
- 賃貸借契約書がない
- 何十年も前の契約書のまま
- 地代が相場から大きく離れている(高すぎる、または無償に近い)
- 地代を払っていない期間がある
- 固定資産税を会社が払っている(負担の取り決めがない)
- 登記上の範囲と実際に使っている範囲が違う
- 建物は会社のもので、土地は個人のもの(権利関係が整理されていない)
3番目が両方向で問題になります。
- 地代が高すぎる:会社の利益が個人へ流れていると見られる。買い手は「実際の収益力はもっと高い」と見る一方、承継後も同じ条件が続くのかを問う。
- 地代が安すぎる、または無償:社長の好意で成り立っている事業と見られる。社長が退けば条件が変わるリスクとして計算される。
適正な水準をどう決めるか
「相場」を調べる必要があります。手がかりを挙げます。
- 近隣の同種の土地の賃料事例
- 不動産業者への照会
- 固定資産税評価額を基準にする考え方
- 近隣の資材置場、駐車場の賃料
ただし、ヤードとして使える土地の賃料事例は少ないため、簡単には分かりません。不動産の専門家と税理士の両方に相談するのが確実です。
そして、根拠を文書に残してください。「この水準にした理由」を説明できることが重要です。
契約書を整える
記載すべき項目を挙げます。
- 対象となる土地の範囲(実際に使っている範囲と一致させる)
- 契約期間と更新の条件
- 地代の額と支払方法
- 固定資産税の負担
- 用途(解体業として使用すること)
- 建物や構築物の所有関係
- 原状回復の範囲
- 譲渡・転貸に関する取り決め
7番目を明確にしてください。会社が舗装や設備の基礎を設置している場合、契約終了時にどうするのか。ここが曖昧だと、承継や廃業の際に揉めます。
2番目も重要です。期間が短いと、買い手は投資できません。長期の契約に改める交渉をしておく価値があります。
相続への備え
社長個人の土地は、相続財産です。次のリスクがあります。
- 複数の相続人で分割されると、権利関係が複雑になる
- 事業を継がない相続人に渡れば、明け渡しや賃料引き上げを求められ得る
- 相続人が売却を望む可能性
- ヤードの土地が相続財産の大半を占め、他の相続人に渡せるものが残らない
4番目がこの業態で特に起きやすい問題です。事業を継ぐ子に土地と株を渡せば、他の相続人に渡すものがほとんどありません。不公平感から話がこじれます。
備えとしては次が考えられます。
- 遺言を整える
- 他の相続人に渡せる資産を用意する(生命保険など)
- 会社が土地を買い取る(資金が必要)
- 長期の賃貸借契約を結び、権利を安定させる
4番目が最も現実的な場合があります。所有権が誰に移っても、契約が続く形にしておくという考え方です。
会社が買い取るという選択
個人所有をやめる方法です。検討すべき点を挙げます。
- 利点:明け渡しの不安が消える。担保として使える。相続の分割問題から切り離せる。
- 負担:取得資金が必要。個人には譲渡所得への課税。
- 注意:土壌の状態が不明なまま取得すると、責任を負う立場が明確になる。
3番目に注意してください。借地なら「返す」という選択がありますが、自社所有なら手放すまで責任が続きます。
また、価格の設定が問題になります。相場から離れた価格での売買は、税務上の問題を招きます。必ず専門家と進めてください。
承継後の扱いを決めておく
第三者へ譲渡する場合、買い手は必ずこう聞きます。
「この土地は、承継後も同じ条件で貸してもらえるのか」
答えを準備しておく必要があります。選択肢は次のとおりです。
- 社長個人が引き続き貸す(契約を長期化して安定させる)
- 買い手が土地も買い取る(価格の交渉が加わる)
- 承継前に会社が買い取っておく
いずれにせよ、条件が明確になっていることが前提です。契約書もなく地代も曖昧な状態では、買い手は判断できません。
契約書を整えるのに数か月です。地代の適正化には税務の検討が要ります。承継を考え始めたら、まずここから着手してください。この業態では最も効果の大きい整理です。
他の資産も同じ論点
土地以外にも、社長個人の資産を会社が使っている場合があります。同じ整理が必要です。
- 建物、倉庫:家賃の設定と契約書
- 重機、車両:使用料の設定
- 社長の自宅の一部を事務所にしている:按分の根拠
- 駐車場、資材置場:地代の設定
いずれも「無償で使っている」または「相場と離れた条件」が論点になります。
まず一覧を作ってください。会社が使っているもののうち、社長または親族の所有物はどれか。それぞれ契約書があるか、条件は適正か。この表が整理の出発点になります。
※ 地代の設定や土地の売買には税務上の取り扱いが関わります。必ず税理士・不動産の専門家にご相談ください。