何が問題になるのか

個人所有そのものが悪いわけではありません。問題は次の点です。

  • 会社が事業を続けるために、その土地を使い続けられる保証がない
  • 賃貸借の条件が適正でない場合、税務上の指摘を受け得る
  • 相続が発生すると、土地が他の相続人に渡る可能性がある
  • 後継者が株式を引き継いでも、土地が別の人に行けば事業が続かない
  • 買い手から見て、事業の継続性に不安が残る

3番目と4番目が最も深刻です。会社は引き継げたのに、ヤードが使えなくなるという事態が起こり得ます。この業種では土地がなければ事業が成り立ちません。

1番目は契約の問題です。契約書がない、あるいは期間が短い場合、譲渡の交渉で必ず指摘されます。

まず賃貸借を整える

所有の形をどうするかの前に、現在の関係を書面にしてください。

確認すべき点を挙げます。

  • 契約書があるか
  • 地代の額(近隣の相場と比べて妥当か)
  • 無償で使っていないか
  • 契約の期間と更新の条件
  • 会社が設置した建物や設備の扱い
  • 地代が実際に支払われているか(帳簿と入金の一致)

3番目が指摘されやすいところです。無償で使っている場合、法人と個人のどちらにも税務上の論点が生じ得ます。税理士に確認してください。

2番目も同様です。相場と大きく離れた地代は、実質的な利益の移転と見られることがあります。高すぎても低すぎても論点になります。近隣の水準を調べて、根拠を残してください。

6番目を確認してください。契約書上は地代が発生しているのに、実際には払っていない、あるいは社長への貸付と相殺している。こうした状態は整理が必要です。

承継での選択肢

土地をどう扱うかには複数の道があります。

  • 会社が買い取る:会社に資金が必要。社長には譲渡所得が生じる。
  • 後継者が個人で引き継ぐ:相続または贈与。他の相続人との調整が必要。
  • 賃貸借を続ける:長期の契約にして継続性を確保する。
  • 第三者へ譲渡する場合、土地は残して貸す:買い手は事業だけを引き継ぐ。
  • 土地も一緒に売る:買い手の資金負担が増える。

1番目は継続性の面で最も確実です。会社が所有していれば、株式を引き継ぐだけで土地も付いてきます。ただし買い取る資金と、社長に生じる税負担を検討する必要があります。

4番目は第三者への譲渡でよく使われます。買い手の資金負担が下がり、話が進みやすくなります。売り手には地代収入が残ります。ただし契約期間を長く設定し、相続が起きた場合の扱いも決めておく必要があります。

2番目を選ぶ場合、後継者以外の相続人への配慮が課題になります。ヤードの土地は資産として大きく、それを1人が取ると分割の均衡が崩れます。

相続での分割を想定する

何もしなければ、相続の際に土地は分割の対象になります。

起こり得る展開を挙げます。

  • 相続人が共有で持つことになり、意思決定が難しくなる
  • 後継者以外の相続人が持ち分を主張する
  • 持ち分を買い取る資金が必要になる
  • 売却を求められる
  • まとまらず、事業の継続が危うくなる

1番目が最も起きやすい形です。共有になると、貸すことにも売ることにも全員の同意が必要になります。誰か1人が反対すれば止まります。

3番目のために資金の準備が必要です。土地の評価額に相当する現金を、後継者が用意できるか。生命保険や会社からの支給を組み合わせて備える方法があります。

遺言と生前の対策

分割の問題は、生前の準備で軽くできます。

  • 遺言で土地の帰属を明示する
  • 他の相続人に渡す資産を用意する
  • 後継者の納税資金を準備する
  • 会社に買い取らせておく
  • 事業承継に関する特例の適用を検討する

1番目と2番目を組み合わせるのが基本です。土地を後継者に渡すと決めるなら、他の相続人にも納得できる資産を用意する必要があります

5番目は要件が細かく、期限もあります。適用を考えるなら、税理士に早い段階で相談してください。要件を満たすための準備に時間がかかります。

着手の順序

何から始めるかを示します。

  1. 土地の登記事項を確認する(名義、面積、抵当権)
  2. 賃貸借の契約書があるか確認し、なければ作る
  3. 地代の水準を近隣と比べる
  4. 評価額の概算を出す
  5. 相続人の構成と、想定される分割を整理する
  6. 選択肢ごとの税負担を税理士に試算してもらう
  7. 方針を決め、必要な手続きに入る

1番目から3番目は自社でできます。ここまで整理してから専門家に相談すると、話が早く進みます

4番目で金額の見当がつくと、判断が具体的になります。土地の評価が想定より大きく、納税資金が課題になる場合もあります。早く知るほど手が打てます。

抵当権と借入の関係も見る

個人所有の土地が会社の借入の担保になっている場合があります。

  • 誰の借入に対する担保か
  • 社長個人が保証人になっているか
  • 承継の際、担保と保証をどう扱うか
  • 土地を会社に移す場合、金融機関の同意が必要か

3番目が承継の関門になります。土地の名義を動かすと、担保の設定をやり直すことになります。金融機関に事前に相談してください。

2番目も併せて整理してください。土地の問題と経営者保証の問題は、同じ場面で扱ったほうが話が進みます。

買い手から見た評価

第三者への譲渡を考える場合、土地の形が価格に影響します。

  • 会社が所有していれば、株式の譲渡だけで完結する
  • 個人所有だと、賃貸借の条件が交渉対象になる
  • 契約期間が短いと、継続性への不安が残る
  • 相続で名義が動く可能性が懸念される

3番目と4番目を先に解消してください。長期の契約と、相続時の扱いを定めておけば、この論点は消えます

※ 土地の所有形態と承継の方法は個別の状況によって異なります。具体的な判断は税理士および専門家にご相談ください。