まず契約書を読み直す
何十年も更新を繰り返していると、契約書がどこにあるか分からない、内容を覚えていない、という状態になりがちです。
確認すべき条項を挙げます。
- 契約期間と残存期間:あと何年残っているか
- 更新の条件:自動更新か、協議によるか
- 譲渡・転貸の制限:地主の承諾が必要と書かれているか
- 使用目的の制限:解体業として使うことが明記されているか
- 原状回復の範囲:返すときに何をしなければならないか
- 中途解約の条件:やめるときにどうなるか
- 地代の改定:見直しの取り決めがあるか
特に原状回復の範囲は、後で説明するとおり金額に直結します。
株式譲渡なら原則そのまま
株式を移す形では、契約の当事者である会社は変わりません。したがって賃貸借契約は原則としてそのまま続きます。地主の承諾も、原則としては必要ありません。
ただし例外があります。
- 契約書に「株主が変わる場合は事前に通知する」等の条項がある
- 地主が売り手の親族で、事実上の信頼関係で貸している
- 地代が相場より著しく安く、好意で貸している
後者2つは実務でよくある形です。法的には引き継げても、地主の気持ちが変われば話が変わります。「知らないうちに他人の会社になっていた」という受け止め方をされると、更新時に問題が生じます。
買い手も、この点を必ず確認してきます。地主の意向が不明なままでは、投資判断ができないからです。
事業譲渡なら承諾が必要
ヤードと設備だけを譲る形では、賃貸借契約も新たに結び直すことになります。地主が承諾しなければ、ヤードそのものが引き継げません。
承諾を得る際に論点になるのは次の点です。
- 承諾料を求められるか
- 地代の改定を求められるか
- 契約期間を短くされないか
- 保証人を求められるか
地主にとっては、相手が変わることでリスクが増します。条件が悪くなるのは自然な流れです。買い手が引き受けられる条件かどうかを、早い段階で確認する必要があります。
原状回復条項の確認が最優先
この条項ひとつで、廃業の判断が変わります。
「更地にして返す」と書かれていれば、次の費用が発生します。
- 舗装の撤去と処分
- 建屋、屋根、構造物の解体
- 囲い、掲示板の撤去
- 設備の基礎の撤去
- 残っている車両、部品、スクラップの処分
- 場合によっては土壌の対策
面積が大きければ、相当な金額になります。畳むという判断をした瞬間に、この費用が確定します。
だからこそ、まず見積もりを取ってください。金額が分かれば、「畳む」と「譲る」の比較が具体的になります。譲渡なら原状回復は発生しないため、たとえ譲渡価格が低くても手元に残る金額は大きくなる、という結論になることがあります。
契約期間を延ばす交渉
残存期間が短いと、買い手は投資できません。数年後に土地を返さなければならない事業に、設備を入れる判断はできないからです。
したがって、承継を考えるなら契約期間を延ばす交渉を先に行う価値があります。
進め方としては次のようになります。
- 地主の意向を確かめる(今後も貸し続ける意思があるか)
- 長期の契約に改める提案をする
- その代わりに地代の改定を受け入れる余地を示す
- 合意できたら書面にする
3番目が交渉材料になります。地主にとっては、安定した賃料収入が長期にわたって確保できることに意味があります。お互いの利益になる形を探してください。
地主が高齢の場合
見落とされやすい論点です。地主も高齢化しています。相続が起きれば、土地は相続人に移ります。
そのとき、次のようなことが起こり得ます。
- 相続人が売却を望み、明け渡しを求められる
- 相続人が複数で、意見がまとまらない
- 相続人が地代の大幅な引き上げを求める
- 相続人と連絡が取れない
これらは自社の努力では防げません。だからこそ、契約が書面として整っていること、期間が長く取れていることが守りになります。
口約束や古い契約書のまま何十年も続けてきた場合、この機会に整え直してください。地主が元気なうちにしかできない作業です。
地主に伝える順序
承継を進める際、地主にいつ何を伝えるかは慎重に設計してください。
早すぎると、決まる前の情報が広がります。地主が不安になり、更新を拒む方向に動くこともあります。遅すぎると、後から知って不信を招きます。
実務では次の順序が取られます。
- まず契約書を確認し、承諾が必要かどうかを整理する
- 必要なら、譲渡先が固まる前に「事業の継続を考えている」という趣旨で意向を打診する
- 相手が固まった段階で、具体的な説明をする
- 合意した内容を書面にする
2番目の打診が効きます。「今後も貸してもらえるか」という一点だけ確認できれば、計画の立て方が変わります。
自社所有に切り替えるという選択
地主が売却を検討しているなら、買い取るという選択肢があります。
- 利点:明け渡しの不安が消える。担保として使える。譲渡時の評価が上がる。原状回復が発生しない。
- 負担:取得資金が必要。固定資産税がかかる。土壌の責任を負う立場が明確になる。
最後の点に注意してください。借地なら「返す」という選択がありますが、自社所有なら手放すまで責任が続きます。土壌の状態が不明なまま取得するのは慎重に判断すべきです。
引退が近い経営者にとっては、取得資金を投じるより、契約期間を延ばす交渉のほうが現実的な場合が多くあります。 どちらが有利かは、残存期間と原状回復条項の内容によって変わります。両方の数字を出して比べてください。
※ 賃貸借の取り扱いは契約内容と個別の事情によって異なります。実際の対応は契約書を確認のうえ、弁護士等の専門家にご相談ください。