Gマークとは

全日本トラック協会が実施している、営業所単位の認定制度です。安全への取り組みが一定の水準にあると認められた事業所が認定を受けられます。

重要なのは、会社単位ではなく営業所単位である点です。複数の営業所を持つ会社では、認定を受けている営業所と受けていない営業所が混在することがあります。

取得するとどう役立つか

1. 荷主からの評価

大手荷主の中には、委託先の選定基準にGマークを入れているところがあります。入札や新規取引の条件になっている場合もあります。

2. 採用での訴求

求職者から見て、安全管理がしっかりした会社であることの分かりやすい目印になります。求人原稿に書ける材料です。求人原稿の書き方をご覧ください。

3. 各種の優遇

違反点数の消去、補助制度、保険料など、いくつかの場面で扱いが変わることがあります。内容は変更されるため、最新の制度は全日本トラック協会の案内を確認してください。

4. 社内の指標になる

審査項目は、そのまま安全管理のチェックリストとして使えます。取得を目指す過程で体制が整うという副次的な効果があります。

審査で見られる領域

大きく三つの領域から評価されます。

  1. 安全性に対する法令の順守状況:巡回指導の結果、行政処分の有無など
  2. 事故・違反の状況:事故歴、違反歴
  3. 安全性に対する取組の積極性:安全対策会議、教育、健康管理、機器の導入など

具体的な評価項目と配点、申請の時期や要件は年度によって変わることがあります。申請を検討する際は、必ず最新の要領を確認してください。

取得を目指すときの準備

審査項目の多くは、日常の管理そのものです。特別なことをするというより、以下を確実にすることが近道です。

つまり、Gマークの取得準備は、そのまま監査対策であり、企業価値の向上でもあります

承継・M&Aでの扱い

株式譲渡の場合

会社そのものが変わらないため、認定はそのまま維持されるのが基本です。ただし、認定には有効期間があり、更新の手続きが必要です。更新の時期と、更新時に必要な条件を確認しておいてください。

事業譲渡・会社分割・合併の場合

事業を移す形の場合、認定の扱いは自動ではありません。営業所単位の認定であるため、営業所の位置づけが変わると影響します。手法を決める前に、全日本トラック協会または都道府県のトラック協会に確認してください。

買い手からの見え方

Gマークを持つ営業所は、次の意味で評価されます。

  • 安全管理の体制が一定水準にあることの客観的な裏付け
  • 荷主との取引条件を満たしている
  • 行政処分のリスクが相対的に低い
  • 買収後の是正コストが小さい

価格に直接反映されるとは限りませんが、信頼度を上げる材料になります。評価が上がる会社の条件をご覧ください。

認定を失う場合

行政処分を受けた場合など、認定に影響することがあります。取得より維持のほうが難しいとも言えます。取得後も、日常の管理を緩めないでください。行政処分の種類と事業への影響をご覧ください。

取得していない会社はどう見られるか

Gマークがないこと自体が問題視されるわけではありません。中小の運送会社では未取得のほうが多いのが実情です。

ただし、取得を目指しているか、そのための体制があるかは問われます。「申請要件を満たすよう準備中」と言える状態と、「考えたこともない」状態では、印象がまったく違います。

取得の壁は「やっていない」ではなく「残っていない」

審査項目の多くは日常の管理そのものだと書きました。裏を返すと、取得できない会社の多くは、やっていないのではなく、やったことが残っていないという状態です。

点呼はしている。教育もしている。事故があれば対策も考えている。ただ、記録が手元にない。あるいは形式が揃っていない。この状態では、外から見て水準を判断できません。

だから、取得を目指すと決めたら、最初にやるのは記録の棚卸しです。点呼、教育、健康管理、事故対応、それぞれについて、いつの分がどこに、どんな形で残っているかを確認してください。抜けている期間が見えたら、そこから埋めていきます。

ここで多いのが、記録の形式が担当者ごとにばらばらというケースです。誰が書いても同じ項目が埋まる様式に揃えるだけで、後の作業がかなり楽になります。

そして、記録は溜めずにその場で残す運用にしてください。月末にまとめて書く運用は、必ずどこかで破綻します。

準備は年単位で考える

申請の時期や要件は年度によって変わるため最新の要領を確認してくださいと書きましたが、実務上もう一つ重要なのは、思い立ってすぐ申請できる制度ではないという点です。

評価の対象には、一定期間の実績が含まれます。つまり、今から記録を整えても、その記録が積み上がるまでの時間が必要です。逆に言えば、今日から始めれば、その分だけ早く申請できる状態に近づきます。

進め方としては、まず現状で評価がどうなりそうかを把握し、足りない部分を月ごとの作業に落とす形が現実的です。「今月は教育の記録様式を整える」「来月は健康診断の受診状況を一覧にする」といった単位に分けます。

一人で抱えないことも大事です。点呼は運行管理者、健康管理は総務、機器は整備担当というように、担当を割り振ってください。準備の過程そのものが、体制づくりになります。

複数営業所ならどこから取るか

会社単位ではなく営業所単位だという点は、複数の営業所を持つ会社にとっては戦略の問題になります。全部を同時に進めるのは、現実的ではないからです。

優先順位の付け方は二つあります。一つは、荷主の要請が強いところから。委託先の条件になっている取引を抱えている営業所は、取得の効果がそのまま売上に直結します。

もう一つは、体制が整っているところから。すでに記録が揃い、事故も少ない営業所なら、比較的短い準備で申請の形になります。最初の一つを取ることで、社内に手順が残り、次の営業所が楽になります。

どちらを選ぶかは、取引の状況によります。ただ、どちらの場合も、最初の営業所の準備の過程を記録として残してください。二つ目以降は、それを引き写す作業になります。

取得後にどう維持するか

取得より維持のほうが難しいと書きました。理由は単純で、目標があるうちは動くが、達成した後は日常に戻るからです。

維持のために必要なのは、更新の時期を管理することと、日常の記録を止めないことです。前者はカレンダーに入れれば済みます。問題は後者です。

実務的には、月に一度、記録の状態を確認する時間を作るのが有効です。点呼の記録に抜けがないか、教育を予定どおり実施できているか、健康診断の受診が済んでいるか。十分ほどの確認で足ります。

そして、担当者が代わるときに引き継ぎを丁寧にしてください。取得のときに何をやったかを知らない人が担当になると、記録の質が落ちます。手順を文書にしておけば、この落ち込みを防げます。

買い手は営業所ごとに見る

認定が評価の材料になると書きましたが、買い手の見方をもう少し具体的に補足します。

買い手は「この会社はGマークを持っているか」ではなく「どの営業所が持っているか」を見ます。取得している営業所が主力なのか、規模の小さい営業所だけなのかで、意味が変わるからです。

あわせて、更新の履歴も見られます。取得して継続しているのか、途中で途切れたことがあるのかは、体制の安定を測る材料になります。

未取得の場合に効くのは、準備の状況を説明できることです。何が足りていて何が足りないのかを自分で把握している会社は、取得済みの会社に近い評価を受けることがあります。逆に、把握していない会社は、他の管理も同じだろうと見られます。

だから、取得の見込みが立たない段階でも、現状の自己評価だけは作っておいてください。それ自体が資料になります。

荷主の条件になっている場合の確かめ方

委託先の選定基準に入っている荷主があると書きました。ここで大事なのは、その条件が自社の取引にかかっているかどうかを、推測で終わらせないことです。

確かめ方は、担当者に聞くことです。「今後の取引で、認定が条件になる可能性はありますか」と尋ねれば、たいてい答えが返ってきます。すでに条件になっている場合は、猶予の有無も聞いておいてください。

ここで、条件になっていないという答えでも、それが将来も変わらないとは限りません。荷主側の方針は、親会社の要請や取引先の監査をきっかけに変わることがあります。

そのため、主要な取引先については、条件の有無を一覧にして年に一度は見直してください。急に言われてから動くと、間に合いません。

そして、認定が条件でない取引でも、安全への取り組みを説明できる状態は無駄になりません。荷主が委託先を減らす場面で、説明できる会社が残ります。

取得を目指さないという判断もある

未取得のほうが多いのが実情だと書きました。だから、取得しないという判断そのものは、責められるものではありません。

ただし、判断には根拠が要ります。営業所の規模が小さく、対象となる取引もなく、準備にかける人手が確保できない。こうした事情があるなら、優先順位を下げるのは合理的です。

問題は、判断せずに放置している状態です。この場合、聞かれたときに答えられません。荷主にも、後継者にも、買い手にもです。

だから、取得しないと決めるなら、決めたことと理由を残してください。そのうえで、審査項目のうち日常管理にあたる部分だけは整えておく。ここまでやっておけば、方針が変わったときにすぐ動けます。

実際、取得しないと決めた会社が、大口の取引をきっかけに方針を変えることはよくあります。そのときに、記録がある会社とない会社の差が出ます。

認定を失う場面をどう避けるか

行政処分を受けた場合など認定に影響することがあると書きました。ここで押さえておきたいのは、処分の多くは突然起きるわけではないという点です。

巡回指導で指摘を受け、改善しないまま次の確認を迎える。同じ違反が繰り返される。こうした経過があって、事態が重くなります。つまり、指摘の段階で手当てできれば、認定を失う道には進みません。

そのために必要なのは、指摘を受けたときの扱いを決めておくことです。誰が受け取り、いつまでに何を直し、直したことを誰が確認するか。この流れがないと、指摘が担当者の机の上で止まります。

もう一つは、事故と違反の件数を自分で追うことです。認定に関わる要素であると同時に、現場の状態を映す数字でもあります。増えていることに気づかないまま迎えるのが、いちばん危ない状態です。

あわせて、更新の直前だけ整える運用にしないでください。評価の対象には期間があるため、直前の努力では届きません。日常の記録が、そのまま結果になります。

審査項目を社内の物差しとして使う

審査項目がそのままチェックリストとして使えると書きました。取得の予定がない会社にとっても、この使い方には意味があります。

使い方は簡単で、項目を並べて、自社が今どうなっているかを三段階ほどで自己採点するだけです。できている、部分的にできている、できていない。半日もあれば一巡します。

この作業の価値は、点数そのものではありません。社内で「どこが弱いか」の認識が揃うことにあります。社長は問題ないと思っていた部分が、現場では回っていないと分かることがあります。

そして、できていない項目のうち、費用がかからず今日から始められるものを二つか三つ選んでください。全部を直そうとすると止まります。記録の様式を揃える、教育の予定を年間で組む、この程度から十分です。

半年後にもう一度同じ採点をすれば、変化が見えます。この変化の記録は、承継の場面でも、荷主への説明でも使えます。

まとめ

Gマークは営業所単位の認定で、荷主の選定基準や採用に効きます。審査項目は日常の安全管理そのものであり、取得準備がそのまま監査対策と企業価値向上になります。株式譲渡なら維持されるのが基本ですが、事業譲渡や分割では扱いが変わるため事前確認が必要です。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。