高齢のお客様が増える背景を知る
多くの地域で高齢化が進み、SSを訪れるお客様の層も変わりつつあります。長年通ってくださる方が年を重ね、体力や運転に不安を感じ始める場面も少なくありません。こうした変化を理解し、お客様の立場に立った配慮を重ねることが、これからの店づくりに求められます。
高齢のお客様にとって、近くにあって安心して立ち寄れる店は、暮らしを支える大切な存在です。丁寧な対応や気配りが伝われば、長く通い続けてくれる関係につながります。地域の実情を踏まえ、お客様の変化に寄り添う姿勢が、選ばれる店の土台になります。
給油のサポートを丁寧に
セルフ式の店では、給油の操作に戸惑う高齢のお客様もいらっしゃいます。機器の使い方が分かりにくかったり、手元の作業に不安を感じたりする場面では、さりげないサポートが安心につながります。困っている様子に気づいて声をかけることが、丁寧な対応の第一歩です。
フルサービスの店であれば、給油に伴う負担を軽くできることが強みになります。窓の清掃や簡単な点検を添えるなど、ちょっとした心配りが、お客様の満足につながります。高齢のお客様にとって、手間を代わってくれる存在は、選ぶ理由として大きな意味を持ちます。
暮らしに寄り添うサービスを広げる
高齢のお客様に頼られる店は、給油の枠を越えて暮らしに寄り添う姿勢を持っています。買い物や通院の足に困る方が増えるなかで、送迎の手伝いや、地域での見守りといった役割を担える場面もあります。無理のない範囲で暮らしを支えることが、深い信頼につながります。
暮らしを支える関わり方の例
- 体調や様子への気配りとさりげない声かけ
- 移動に困る方への送迎の手伝い
- 地域と連携した見守りの役割
- ちょっとした困りごとへの相談対応
こうした関わりは、すぐに売上につながるものではありませんが、地域からの信頼を厚くします。何ができるかは地域の実情によって変わるため、お客様の声に耳を傾けながら、できることを少しずつ広げていく姿勢が大切です。
わかりやすい案内を心がける
高齢のお客様に配慮するうえで、案内のわかりやすさは欠かせません。料金やサービスの説明が複雑だと、不安や誤解を招きやすくなります。文字を大きく見やすくしたり、専門用語を避けて平易に伝えたりと、誰にとっても分かりやすい案内を心がけましょう。
案内のわかりやすさは、掲示物だけでなく、スタッフの言葉づかいにも表れます。ゆっくり、はっきりと、相手の理解を確かめながら話すことが、安心につながります。急かさず、丁寧に伝える姿勢が、高齢のお客様に選ばれる店の印象を形づくります。
スタッフの意識を高める
高齢のお客様への配慮は、スタッフ一人ひとりの意識によって支えられます。困っている様子に気づく感度や、相手の立場に立った言葉づかいは、日々の心がけから育ちます。なぜ配慮が大切なのかを共有し、店全体で取り組む姿勢をつくることが重要です。
そのためには、良い対応の事例を全員で分かち合い、認め合う場を持つことが役立ちます。お客様から寄せられた感謝の声を共有すれば、スタッフのやりがいにもつながります。配慮を店の文化として根づかせることが、長く選ばれる店づくりを支えます。
意識を高めると言っても、心構えを唱えるだけでは変わりません。実際に効くのは、困っている場面を具体的に共有することです。「先週、この場面でこう困っていた方がいた」という話を、朝礼などで一つずつ積み上げてください。
そして、良い対応をした人がいたら、その場面を共有してください。抽象的な「丁寧に」より、実際の行動のほうが伝わります。誰がやったかを褒めるより、何が良かったかを説明するほうが、他の人にも使えます。
安全と安心に配慮する
高齢のお客様が安心して立ち寄れるよう、店内の安全にも目を配りたいものです。段差や滑りやすい場所への注意、ゆとりある動線の確保など、身体への負担を減らす工夫が、思わぬ事故を防ぎます。誰もが利用しやすい環境づくりは、店の信頼にもつながります。
安全への配慮は、高齢のお客様だけでなく、すべての来店者にとっての安心につながります。日頃から店内を見回し、危険がないかを確かめる習慣を持つことが大切です。小さな気配りの積み重ねが、安心して通える店という評価を築いていきます。
この場面では、配慮と保安が衝突することがあります。手伝ってさしあげたい気持ちがあっても、決められた手順を省くことはできません。危険物を扱う現場である以上、ここは判断の余地がない部分です。
したがって、あらかじめ「手伝える範囲」と「手伝えない範囲」を明確にし、断るときの言い方まで決めておいてください。その場で判断させると、人によって対応が変わり、断られた方に不公平感が残ります。決まりとして説明できる形にしておくほうが、お客様にも納得いただけます。
具体的に何が認められ、何が認められないかは、設備の形態や関係する定めによって異なります。自己判断せず、所管の窓口と設備の業者にご確認のうえ、社内の決まりとして整理してください。
地域とともに歩む店へ
高齢のお客様への配慮は、単なるサービスの改善にとどまらず、地域とともに歩む店づくりそのものです。暮らしに寄り添い、安心を提供する存在になることで、地域からの信頼が厚くなり、価格以外の理由で選ばれる店へと近づいていきます。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化して、地域に根ざした店づくりや事業の継続を支援しています。これからの地域で頼られる店を目指すうえで、お気軽にご相談ください。
どこで困っているかを、場面ごとに見る
配慮というと漠然としますが、実際に困りやすい場面は決まっています。自店に当てはめて確かめてください。
- 敷地に入るとき(段差、進入の角度、見通し)
- 車を停める位置が分かりにくい
- 表示の文字が小さく、読みにくい
- 機器の操作が分からない、画面が見えにくい
- 会計の方法が増えて、どれを選べばよいか迷う
- 店員に声をかけたいが、どこにいるか分からない
六つ目は、セルフの区画がある店で起こりやすい問題です。困っている方から店員が見えるかどうかを、実際に立って確かめてみてください。店の中からは全体が見えていても、外から中は見えにくいことがあります。
五つ目については、選択肢を増やしたことの副作用です。手段が増えるほど、迷う方が出ます。「現金でもお使いいただけます」と一言添えられる状態にしておくだけで、負担は減ります。
声のかけ方を決めておく
配慮は、良かれと思った行動が裏目に出ることがあります。次の点を、全員で揃えておいてください。
- 困っていそうでも、いきなり手を出さない
- まず声をかけ、必要かどうかを尋ねる
- 断られたら、無理に手伝わない
- 年齢を理由にした言い方をしない
- ゆっくり話すことと、子ども扱いすることを混同しない
四つ目と五つ目が要点です。「お歳ですから」といった言い方は、親切のつもりでも受け取る側には違います。必要なのは、聞き取りやすく、短く、はっきり伝えることであって、相手を弱い立場として扱うことではありません。
一つ目については、手を出されることを嫌う方もいます。自分でできることは自分でしたい、という気持ちは年齢に関わりません。まず尋ねる。この順序を守ってください。
表示と案内を見直す
費用をあまりかけずにできることとして、表示の見直しがあります。次を確かめてください。
- 文字の大きさが、離れた位置から読めるか
- 背景と文字の色の差が十分か
- 案内が、行動の順に並んでいるか
- 専門的な言葉を、日常の言葉に置き換えられるか
- 夜間の照明で、表示が読めるか
三つ目は見落とされがちです。必要な情報が全部書いてあっても、順番が行動と合っていなければ読めません。実際に操作する順に並べ直すだけで、分かりやすさが変わります。
二つ目については、薄い色の組み合わせは、明るい屋外で特に見えにくくなります。デザインとして良く見えても、読めなければ意味がありません。実際に日中の屋外で確かめてください。
従業員の負担とのつり合い
丁寧な対応は時間がかかります。混雑時にどうするかを決めていないと、現場が板挟みになります。
- 混んでいるときも、同じ対応を求めるのか
- 手伝いに時間がかかる場合、他の人がどう補うのか
- 待っている方への説明を、誰がするのか
- 特定の従業員に、こうした対応が偏っていないか
四つ目は確かめる価値があります。丁寧な人ほど頼まれ、その人だけ時間を取られている、という状態はよくあります。本人は口に出さないので、周りが気づく必要があります。
そして、この対応ができることは、店の強みでもあります。近隣の店が対応しきれない部分に応えられるなら、それは価格以外の選ばれる理由になります。負担として扱うだけでなく、強みとして位置づけて、必要な人手を配ってください。
先を見据えて考えると
地域によっては、この層のお客様の割合が今後さらに高まります。次のことを、少し先の話として考えておいてください。
- 免許を返納された方が、来なくなるということ
- その方のご家族が、代わりに来るようになること
- 来店の頻度そのものが下がる可能性
- 給油以外の用事で立ち寄る形が増えるかもしれないこと
二つ目は、機会でもあります。親御さんの車を見てくれていた店として、ご家族との関係が始まることがあります。そのためには、その方の車の記録が残っていることが前提になります。
これらは短期の集客の話ではなく、この店が数年後どういう役割で地域に残るかという話です。地域密着を強みにするもあわせてご覧ください。
ご家族との関わりが生まれる場面
この層のお客様との関係は、ご本人だけで完結しないことがあります。次のような場面で、ご家族が関わってきます。
- 車の買い替えや、手放すかどうかの相談
- 整備や車検の判断を、離れて暮らすご家族がする
- 体調の変化で、運転を続けるかどうかが話題になる
- 支払いの方法が変わる
二つ目は、実際によくある形です。離れて暮らすご家族から、電話で状況を尋ねられることがあります。そのとき、車の状態や過去の整備の記録をきちんと説明できるかどうかで、信頼のされ方が変わります。
三つ目については、こちらから踏み込む話ではありません。ただ、ご本人やご家族から相談された場合に、慌てず受け止められる姿勢は持っておいてください。この業種は、そうした場面に立ち会うことがあります。
いずれの場面でも、記録が残っていることが前提になります。いつ何をしたか、どういう状態だったか。これがあるかないかで、答えられることがまったく違います。
まとめ
高齢化が進む地域では、高齢のお客様への配慮が、SSの選ばれる理由を大きく左右します。給油のサポート、暮らしに寄り添うサービス、わかりやすい案内を丁寧に重ねることが、その土台になります。
大切なのは、お客様の変化に気づき、スタッフとともに配慮を店の文化として育てることです。地域とともに歩む店づくりについて迷ったときは、いつでもご相談ください。