価格以外で選ばれる理由をつくる

ガソリンの価格は、どの店でも大きく変わらないことが多く、価格だけで勝負すると体力の消耗につながりがちです。だからこそ、価格以外の理由で選ばれる店になることが、地域のSSにとって大切になります。その中心にあるのが、地域に根ざした信頼の積み重ねです。

近くにあって安心して任せられる、困ったときに頼れるという印象は、一朝一夕には生まれません。日々の対応の積み重ねが、やがて「あの店なら」という選ばれる理由へと育っていきます。地域密着は、こうした無形の価値を強みに変える考え方です。

顔の見える関係を築く

地域のお客様に選ばれ続ける店には、顔の見える関係があります。名前や車のことを覚えていて、来店のたびに一言二言を交わせる。そうしたやり取りが、お客様にとっての居心地の良さや安心感につながります。大手にはまねしにくい、地域の店ならではの強みです。

顔の見える関係は、スタッフ一人ひとりの姿勢から生まれます。忙しいときでも笑顔で対応し、お客様の様子に気を配る。そうした日常の丁寧さが、少しずつ信頼を厚くしていきます。関係づくりに近道はなく、地道な継続こそが土台になります。

地域行事に関わる

地元のお祭りや清掃活動、季節の催しなどに関わることは、地域とのつながりを深める機会になります。店の外での接点が増えることで、お客様に親しみを持ってもらいやすくなり、地域社会の一員としての存在感が高まります。無理のない範囲で継続することが大切です。

地域行事への関わり方は、規模の大小を問いません。会場の一角で飲み物を用意したり、案内を手伝ったりといった小さな協力でも、積み重なれば地域からの信頼につながります。売上に直結するものではありませんが、長い目で見れば選ばれる土台を支えます。

日々の対応で信頼を積み重ねる

地域密着の核にあるのは、特別なことではなく、日々の当たり前の対応です。窓を拭く、空気圧を気にかける、ちょっとした不調に気づいて声をかける。こうした一つひとつの積み重ねが、お客様の記憶に残り、次の来店へとつながっていきます。

信頼につながりやすい対応

  • お客様の名前や車を覚えて接する
  • 頼まれていない小さな気配りを添える
  • 不調の兆しにさりげなく気づいて伝える
  • 約束したことを確実に守る

これらは派手さこそありませんが、地域の店への信頼を支える大切な土台です。逆に、対応の雑さや約束の不履行は、築いた信頼を一度で損なうこともあります。丁寧さを組織として保つ工夫が求められます。

信頼は積み上げるのに時間がかかりますが、失うのは一度で済みます。とくに次のような場面は、後まで語られます。

  • 急ぎのときに、断り方が冷たかった
  • 約束した時期に間に合わず、連絡もなかった
  • 人によって対応が明らかに違った
  • こちらの手違いを認めず、言い訳が先に立った

四つ目については、手違いそのものより、その後の対応が見られています。認めて、直して、次にどうするかを伝える。この三つができていれば、かえって信頼が増すことすらあります。従業員がその場でどう動くべきかを、あらかじめ決めておいてください。

暮らしに寄り添うサービスを広げる

地域の店として選ばれ続けるには、給油だけにとどまらず、暮らしに寄り添うサービスを広げていく視点も役立ちます。車のちょっとした相談に応じたり、季節ごとの点検を案内したりと、生活の中で頼れる存在になることが、来店の理由を増やします。

どんなサービスが喜ばれるかは、地域の暮らしぶりによって変わります。お客様の声に耳を傾け、必要とされていることに少しずつ応えていく姿勢が、地域に根ざした店づくりにつながります。無理に手を広げるのではなく、地域の実情に合わせて育てることが肝心です。

広げるときに気をつけたいのは、本業が手薄にならないことです。喜ばれるからと引き受けを増やしていくうちに、給油や整備の手が足りなくなる、という形はよくあります。新しく何かを始めるなら、その分の時間をどこから出すのかを決めてください。

また、無償で始めたことは、後から有償にするのが難しくなります。続けていくつもりなら、最初から扱いを決めておいてください。好意で始めたことが、いつのまにか当然の役割になっていた、という事態を避けられます。

スタッフとともに文化を育てる

地域密着は、経営者一人の思いだけでは成り立ちません。日々お客様と接するスタッフが、その考えを共有し、行動に移してこそ形になります。地域を大切にする姿勢を店の文化として根づかせることが、長く選ばれる店をつくります。

そのためには、なぜ地域とのつながりを大切にするのかを、スタッフと繰り返し共有することが欠かせません。良い対応を認め合い、地域からの声を全員で分かち合う。こうした積み重ねが、店全体の姿勢を一つにしていきます。

将来を見据えた店づくりへ

地域に根ざした信頼は、目に見えにくいものの、店にとって大きな財産です。燃料需要の変化や後継者の問題など、SSを取り巻く環境は変わりつつありますが、地域からの信頼という土台があれば、次の展開にも生かしていけます。積み重ねた関係は、将来の選択肢を広げます。

私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化して、集客やブランドづくり、事業承継までをワンストップで支援しています。地域とともに歩む店づくりについて、お気軽にご相談ください。

「地域密着」を、具体的な行動に置き換える

地域密着という言葉は、掲げるだけでは何も変わりません。お客様から見て、何がどう違うのかを具体的に言えるかどうかです。次のような形に落とせるかを確かめてください。

  • 顔と車を覚えていて、名前で呼べる
  • 前回の来店で話したことを、次に覚えている
  • その方の車の状態を把握していて、時期が来たら声をかけられる
  • 急なことがあったとき、融通が利く
  • 近隣の道路や施設について、聞けば答えられる

二つ目と三つ目は、記録があるかどうかで大きく変わります。覚えている人が一人しかいないと、その人がいない日には成り立ちません。記憶に頼っている部分を、少しずつ記録に移してください。

四つ目については、線引きが要ります。融通を利かせることと、決まりを曲げることは違います。とくに保安に関わることは、相手が誰であっても例外にできません。何なら応じられて、何は応じられないのかを、全員で揃えておいてください。

関係は、記録がないと引き継げない

地域との関係は、この業種にとって大きな資産です。ただし、その関係が誰か一人の頭の中にあるなら、資産としては不安定です。次のことを確かめてください。

  • 取引先や近隣との関係を、社長以外が把握しているか
  • いつから、どういう経緯で始まった関係かが分かるか
  • 担当者が代わっても、続けられる形になっているか
  • お客様ごとの経緯が、どこかに残っているか

二つ目は、承継の場面で必ず問題になります。「昔からのお付き合い」としか言えない関係は、引き継ぐ側にとって扱いが分かりません。いつ、何がきっかけで、どういう条件で続いているのか。書き残しておいてください。

そして、これは売却の場面でも同じです。買い手が見ているのは、社長個人への信頼なのか、店への信頼なのかです。前者だけなら、社長が退いた時点で失われます。後者にしていく取り組みが、地域密着の実質です。引き継がれやすいガソリンスタンドの条件もあわせてご覧ください。

行事や活動との関わり方を決める

地域の行事に関わることは、確かに関係づくりになります。ただし、無制限に受けていると負担が重くなります。次を決めておいてください。

  • 年にどれくらい関わるのか(回数か、費用か)
  • どういう種類のものに関わるのか
  • 誰が窓口になるのか
  • 断る場合、どう伝えるのか
  • 関わったことを、社内でどう共有するのか

四つ目を決めておくと、判断が楽になります。「今年は他に予定があって」と一度断れる形をつくっておかないと、依頼が来るたびに受けることになります。断ることが関係を壊すとは限りません。

五つ目については、忘れられがちですが重要です。社長が地域の活動に出ていることを、従業員が知らないという状態はよくあります。知らなければ、その意味も伝わりません。何のために関わっているのかを共有してください。

従業員がその地域の人であること

地域との関係は、社長一人がつくるものではありません。従業員がその地域に住んでいるなら、それ自体が関係の一部です。

  • 従業員が、地域でどう見られているかを意識しているか
  • お客様との会話が、その人の負担になっていないか
  • 知り合いが来たときの対応が、他の方と変わっていないか
  • 従業員自身が、この店で働いていることを言いやすいか

四つ目が、実は最も本質的です。働いている人が、この店で働いていることを人に言いにくいなら、外から見た評判もそうだということです。逆に、胸を張って言える店なら、その人が歩く範囲すべてが接点になります。

二つ目については、配慮が要ります。地域が狭いほど、仕事とそれ以外の境目が曖昧になります。休みの日に呼び出される、といったことが常態化していないかを確かめてください。関係づくりが、働く人の負担で成り立っているなら、それは長続きしません。

そして、こうした状態は数字には表れませんが、人が辞めない、採用のときに応募が来る、という形で結果に出ます。高齢のお客様への配慮もあわせてご覧ください。

価格で選ばれていないことを、どう確かめるか

「うちは価格以外で選ばれている」と考えていても、実際にそうかは確かめないと分かりません。次のような場面で、答えが見えてきます。

  • 近隣の価格が動いたとき、来店数がどう変わるか
  • 価格を上げざるを得なかったとき、離れた方がどれくらいいたか
  • 油外の利用が、来店のうちどれくらいの割合か
  • 同じ方が、月に何回来ているか

一つ目が、最も分かりやすい指標です。近隣が下げたときに来店が大きく減るなら、価格で選ばれている部分が大きいということです。それ自体は悪いことではありませんが、価格競争から降りられないことを意味します。

三つ目については、給油だけの方と、油外も使う方の割合を見てください。後者が多いほど、価格以外の理由で選ばれている可能性が高くなります。この割合は、そのまま事業の安定性にも関わります。

時間をかけて積み上げるものだと理解する

この分野の取り組みは、来月の数字には表れません。それを前提に、次のように扱ってください。

  • 短期の施策と、長期の取り組みを分けて考える
  • 長期のものには、短期の効果を求めない
  • ただし、続いているかどうかは定期的に確かめる
  • 担当者や社長が代わっても続く形にする

二つ目が守れないと、効果が見えないという理由で、数か月でやめてしまうことになります。やめれば、それまでの積み上げも失われます。始めるときに「これは何年かけるものか」を決めておいてください。

四つ目については、社長が代わると地域との関係が切れる、という状態を避けることです。これは承継の準備そのものでもあります。関係を店のものにしておく取り組みは、日々の集客と、将来の承継の両方に効きます。

まとめ

地域密着は、価格競争とは異なる土俵で選ばれ続けるための、ガソリンスタンドならではの強みです。顔の見える関係、地域行事への関わり、日々の丁寧な対応の積み重ねが、その土台をつくります。

大切なのは、無理なく継続し、スタッフとともに地域を思う文化を育てることです。地元に根ざした信頼は、これからのSS経営を支える確かな財産になります。どう育てていくか、迷ったときはいつでもご相談ください。