M&A仲介とは何か
M&A仲介とは、売り手と買い手のあいだに立ち、両者の橋渡しをしながら、M&Aの成立を後押しする支援の形をいいます。仲介者は、どちらか一方だけの味方につくのではなく、双方の意向を聞きながら、両者が納得できる着地点を探る役割を担います。
不動産の売買で、売り手と買い手のあいだに立って話をまとめる担当者を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。M&A仲介も同じように、双方のあいだをつなぎ、条件のすり合わせや手続きの進行を支えます。中立の立場で全体を見渡し、話し合いが円滑に進むよう調整するのが特徴です。
FAとは何か
FAとは、ファイナンシャルアドバイザーの略で、売り手か買い手のどちらか一方につき、その依頼者の立場に立って支援する専門家をいいます。仲介が双方の橋渡し役であるのに対し、FAは片方の代理人のような立ち位置で、依頼者にとって望ましい条件を目指して動きます。
依頼者の利益を第一に考えて交渉に臨むため、条件を巡ってしっかりと主張してほしい場合には、FAの支援が向くことがあります。売り手ならより良い条件を、買い手なら納得のいく条件を、それぞれの立場から追求するのがFAの役割です。
仲介とFAの違い
仲介とFAの最も大きな違いは、誰の立場に立つかという点にあります。整理すると次のようになります。
- 仲介:売り手と買い手の双方のあいだに立ち、両者が納得できる成立を目指す。
- FA:売り手か買い手のどちらか一方につき、その依頼者にとって望ましい条件を目指す。
この立ち位置の違いから、進め方にも差が出ます。仲介は両者の橋渡しをするため、話がまとまりやすく、円滑に進みやすい面があります。一方でFAは依頼者の立場を強く反映するため、条件の主張がはっきりしやすい面があります。どちらが良い悪いではなく、何を重視するかによって向き不向きが分かれます。
SSの場合の論点
ガソリンスタンドのM&Aでは、支援の形を選ぶうえで業界ならではの事情が関わってきます。SSは設備や立地、許認可、環境面など、業界特有の論点が多いため、これらを理解している相手かどうかが、支援の質を大きく左右します。
たとえば、地下タンクの状態や環境面のリスクといった論点は、一般的なM&Aの知識だけでは十分に扱えません。仲介であれFAであれ、SSの実情に通じていなければ、大切な点を見落としてしまうこともあります。立ち位置の違い以前に、業界を理解しているかどうかが、SSでは重要な選び方の軸になります。
また、SSの承継では、従業員の雇用や地域の顧客との関係を大切にしたいと考える経営者が多くいます。こうした思いを丁寧にくみ取り、相手方に伝えてくれる支援者かどうかも、見極めたい点です。
どちらが向いているか
仲介とFAのどちらが向いているかは、経営者が何を重視するかによって変わります。次のような目安を参考に考えてみましょう。
- 円滑に、なるべく穏やかに話をまとめたいなら仲介が向きやすい
- 条件面で自分の立場をしっかり主張したいならFAが向きやすい
- 相手との関係を大切にしながら進めたいなら仲介が向きやすい
中小規模のSSの承継では、円滑に話を進め、双方の納得を大切にしたいという場面が多く、仲介の形が選ばれることがよくあります。ただし、どちらが正解ということはなく、自社の事情や希望に応じて選ぶことが大切です。
よくある誤解
仲介とFAには、いくつか誤解されやすい点があります。あらかじめ知っておくと、支援者選びで迷いにくくなります。
一つは「仲介は売り手の味方をしてくれない」という思い込みです。仲介は双方の橋渡し役であり、どちらか一方に偏るわけではありませんが、売り手の意向を軽んじるものではありません。両者が納得できる成立を目指すなかで、売り手の思いもきちんとくみ取っていきます。
もう一つは「FAをつければ必ず高く売れる」という誤解です。FAは依頼者の立場に立ちますが、価格は最終的に相手との交渉で決まるものです。立場を代弁してくれることと、望みどおりの結果になることは別だと理解しておく必要があります。どちらの形でも、大切なのは業界を理解し、信頼できる相手を選ぶことです。
実務での流れ
支援を受けてM&Aを進める場合、実務ではおおまかに次のような流れになります。仲介でもFAでも、大きな流れは共通しています。
- 支援者に相談し、方針や進め方を確認する
- 秘密保持のうえで、相手探しを進める
- トップ面談や条件の話し合いを、支援者が調整する
- 基本的な合意を経て、買い手が実態を調査する
- 最終契約を結び、引き継ぎへと進む
この過程で、支援者がどこまで丁寧に寄り添ってくれるか、業界の事情をどれだけ理解しているかが、進めやすさを左右します。立ち位置の違いだけでなく、実際の対応の質を見極めることが、支援者選びでは欠かせません。
支援者を選ぶときの目安
仲介かFAかという形の違いにとらわれすぎず、実際に信頼して任せられる相手かどうかを見ることが大切です。とくに次のような点に目を向けるとよいでしょう。
まず、SSの業界事情をどれだけ理解しているか。設備や許認可、環境面といった論点を分かっていなければ、大切な点を見落としかねません。次に、秘密保持をきちんと守れるか。売却の検討が漏れれば、従業員や取引先に動揺が広がります。そして、疑問に丁寧に答えてくれるか。分からないことをその都度確認しながら進められる相手であれば、初めてでも安心して任せられます。
加えて、これまでどのような支援を重ねてきたかにも目を向けるとよいでしょう。自社と近い状況の承継を手がけた経験があれば、想定される論点をあらかじめ見通し、先回りして備えてくれます。形式的な立ち位置よりも、こうした実際の頼もしさを確かめることが、後悔のない支援者選びにつながります。
選ぶ際に見ておきたいのが、これまでどれくらいの規模の案件を扱ってきたかです。大きな案件を中心に扱ってきた相手にとって、一店舗や数店舗の案件は、優先度が下がることがあります。逆に、小規模の案件を数多く扱ってきた相手であれば、この規模の進め方に慣れています。
また、相談の場で、こちらの話をどれだけ聞いてくれるかも手がかりになります。自社の実績や仕組みの説明が中心で、こちらの事情や希望を聞く時間が短い相手は、その後も同じ進め方になりがちです。
専門家に相談する意味
仲介とFAのどちらを選ぶにせよ、M&Aは専門的な手続きが多く、初めての経営者が一人で進めるのは負担が大きいものです。とりわけガソリンスタンドは業界特有の論点があるため、事情に詳しい専門家の伴走があると安心です。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化してM&Aを支援しています。相談無料・完全成功報酬・秘密厳守・全国対応で、どのような形の支援が自社に合うのかという入り口の相談から、成約後の引き継ぎまで伴走します。まずはお気軽にご相談ください。
誰が誰から報酬を受け取るのかを、確かめる
支援する立場の違いを理解するうえで、いちばん分かりやすい手がかりは、報酬の出どころです。双方から受け取るのか、自社だけから受け取るのか。ここが、立場そのものを表します。
双方から受け取る形であれば、話をまとめることが役割になります。これは、相手を探して橋渡しをする力があるということでもあり、価値のある働きです。一方で、条件をこちらに有利にするために動くのとは、性質が違います。
ですから、契約を結ぶ前に、報酬を誰から受け取るのか、金額はどう決まるのか、どの時点で発生するのかを確かめてください。曖昧なまま進めると、後になって想定外の請求が生じたり、期待していた働きが得られなかったりします。書面で示してもらい、分からない項目は必ず質問してください。
SS の事情を分かっているかどうかで、進み方が変わる
この業種には、他の業種にはない論点があります。設備の状態、点検や保安に関わる決まり、仕入や看板に関する取り決め、そして土地に関する事項。これらを理解している支援者と、そうでない支援者では、進め方がまったく違います。
分かっていない相手に依頼すると、論点が出てくる時期が遅くなります。契約の直前になって、確認が必要な事項が判明し、日程を組み直すことになる。こうした事態は、実際に起こります。
ですから、依頼する前に、この業種を扱った経験があるかを率直に尋ねてください。経験がない場合でも、必要な専門家をどう手配するつもりかを聞けば、姿勢が分かります。「調べながら進めます」という答えであれば、その手間と時間は誰が負うのかを確かめてください。
最初に相談した相手に、そのまま任せなくてよい
売却を考え始めたとき、多くの方は、知り合いに紹介された一社に相談します。そして、そのまま話を進めます。しかし、これは必ずしも最善ではありません。
支援の形も、報酬の仕組みも、扱っている相手先の幅も、支援者によって違います。複数の話を聞いてから決めるほうが、自社に合った形を選べます。相談すること自体は、多くの場合、費用がかかりません。
そして、他にも話を聞いていると伝えることに、遠慮は要りません。真っ当な支援者であれば、それを当然のこととして受け止めます。むしろ、他社に相談することを嫌がる、あるいは早く契約するよう急かす相手には、注意が必要です。判断を急がせる理由が、こちらの利益にあるとは限りません。
契約の期間と、途中でやめる場合の扱い
支援を依頼する契約には、期間が定められているのが通例です。そして、その期間中は他の支援者に依頼できない、という取り決めが入ることがあります。
この取り決め自体は、支援者が時間と費用をかけて動く以上、理由のあるものです。ただし、期間が長すぎれば、こちらの選択肢が長く閉じることになります。また、期待した働きが得られなかった場合に、途中でやめられるのかどうかも重要です。
ですから、契約を結ぶ前に、期間、更新の仕方、途中で終える場合の条件と費用を確かめてください。この部分の書き方は契約ごとに異なりますので、署名の前に専門家に見てもらうことをお勧めします。相談する相手と、契約を見てもらう相手を分けることには、意味があります。
自社の側に立つ人を、別に持っておく
誰に支援を頼むにせよ、契約の内容や条件の妥当性については、自社の側に立って見てくれる方を別に持つことをお勧めします。顧問の税理士、取引のある金融機関、あるいは契約を見てもらえる専門家。
これは、支援者を信用しないという話ではありません。立場が違うということを、仕組みとして受け止めるということです。医療で別の医師の意見を聞くのと同じで、判断の材料を増やすための備えです。
とくに、契約書に署名する場面と、最終的な条件を決める場面では、必ず別の目を通してください。この二つの場面で立ち止まれるかどうかが、後の納得を左右します。
まとめ
M&A仲介とは、売り手と買い手のあいだに立ち、双方が納得できる成立を目指す支援の形です。一方のFAは、依頼者の立場に立ってその利益を追求します。両者の違いは誰の立場に立つかにあり、どちらが良いというより、何を重視するかで向き不向きが分かれます。
とくにSSでは、立ち位置の違い以前に、業界を理解し、秘密保持を守り、丁寧に寄り添ってくれる相手かどうかが重要です。形にとらわれず、信頼できる専門家の伴走を得ながら、自社に合った進め方を選んでいきましょう。