なぜ棚卸が要るのか
理由は3つあります。
- 決算のため:期末の在庫金額が確定しないと、正しい利益が出ません
- 経営のため:帳簿と現物がずれていると、日齢も回転も信用できない数字になります
- 出口のため:買収監査では実地棚卸に立ち会われます。相続でも財産の確定に必要です
この3つのうち、日々の経営に直結するのは2番目です。帳簿と現物がずれていれば、日齢も回転も原価率もすべて信用できない数字になります。棚卸は、他のすべての管理の土台にあたります。
頻度をどう決めるか
年1回の全数棚卸が基本ですが、点数が多い店では負担が大きすぎます。次の組み合わせが現実的です。
- 年1回:全数を対象にした期末棚卸
- 毎月:高単価カテゴリ(貴金属・時計・ブランド品)だけを対象にした部分棚卸
- 随時:カテゴリを輪番で回す循環棚卸
高単価品を毎月確認するだけでも、金額ベースの精度は大きく上がります。
この組み合わせが現実的なのは、金額ベースの精度を優先しているからです。リユース店では、点数の1割ほどが金額の大半を占めることがよくあります。高単価品を毎月押さえておけば、大きなずれは早く見つかります。
手順の基本
- 締めを決める:棚卸の基準時点を明確にし、その前後の入出庫を分ける
- 売場と保管場所をすべて洗い出す:バックヤード、外部倉庫、修理預かり、催事の持ち出し分
- 2人一組で数える:1人が読み上げ、1人が記録する
- 帳簿と突き合わせる:点数と金額の両方で確認する
- 差異の原因を追う:金額の大きいものから優先して調べる
3番目の2人一組は、人手が足りない店では難しいこともあります。その場合は、数える人と後から確認する人を分ける形でも構いません。1人で数えて1人で記録すると、思い込みによる誤りが残ります。
見落としやすい場所
リユース店で漏れやすいのは次です。
- 修理・クリーニングに出している商品
- ECモールの倉庫に預けている在庫
- 催事・イベントに持ち出している分
- 撮影用に取り置いている商品
- お客様からの預かり品(自社在庫と混ざっていないか)
最後の預かり品は、棚卸の精度以前の問題です。物理的に分けて保管してください。
最後の預かり品については、棚卸の前に手を打ってください。棚の場所を分けるだけで済む話ですが、ここが混ざっている店は多く、買収監査でも指摘の常連になっています。物理的にも帳簿上も分けてください。
差異が出たときの切り分け
差異には必ず原因があります。次の順で当たります。
- 記録漏れ:入荷や販売の入力忘れ。最も多い原因です
- 場所の見落とし:上記の見落としやすい場所を再確認
- 登録ミス:型番や点数の入力誤り
- 破損・廃棄の未処理:処分したのに帳簿から落ちていない
- 盗難・内部不正:上記をすべて潰しても残る場合
最後の可能性に至る前に、必ず1〜4を確認してください。順序を飛ばすと現場の信頼を失います。
この順序を守ることには、現場との信頼関係を守る意味もあります。差異が出た途端に内部不正を疑う言い方をすると、働いている人の意欲を大きく損ねます。記録の問題を先に潰すのが順序としても実態としても正しいやり方です。
出口で問われること
買収監査では、直近の棚卸の記録と差異の推移を求められます。差異が出ていること自体より、原因を追って対処しているかが見られます。
差異の一覧と、その原因、再発防止のために変えたこと。この3点セットが残っていれば、管理できている会社と評価されます。
記録の残し方としては、差異の一覧に「原因」と「その後変えたこと」の欄を足すだけで足ります。毎年の分が並んでいれば、改善の履歴として説明できます。
棚卸を負担なく回すための工夫
点数の多い店では、棚卸そのものが重い作業になります。次の工夫で負担を下げられます。
- 売場を区画に分けて番号をつける — 数え漏れと二重計上が防げます。床にテープを貼るだけでも効きます
- 商品にバーコードや管理番号を付ける — 読み取りで数えられれば、時間が大きく短縮されます
- 営業時間外にまとめてやらない — 疲れた状態での作業は誤りが増えます。カテゴリを分けて数日にわたって行うほうが精度が出ます
- 締めの時点を明確にする — 数えている間の入出庫をどう扱うかを先に決めます
- 前年の差異一覧を手元に置く — 同じ場所で同じ誤りが起きていることが多く、重点的に確認できます
最後の工夫が、年々の負担を軽くしていきます。差異の記録は、翌年の棚卸を楽にするための資料でもあります。
まとめ
全数を年1回、高単価品を毎月。この組み合わせなら少人数店でも回せます。差異は原因を記録に残すことが大切です。
まず今月、貴金属とブランド品だけ数えてみてください。そこから始められます。
今月、貴金属とブランド品だけ数えてみてください。半日で終わり、差異があれば原因を追う練習にもなります。進め方についてはご相談いただけます。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。