2種類の顧客情報がある
リユース店が持つ顧客情報は、目的が異なる2種類に分かれます。
- 古物営業法にもとづく取引記録・本人確認記録:法令上の義務で作成・保存しているもの
- 販促のための顧客情報:会員情報、LINE登録者、メール配信リストなど
この2つは、扱いが異なります。混同しないでください。
承継の方式による違い
| 株式譲渡 | 事業譲渡 | |
|---|---|---|
| 事業者 | 変わらない(同じ法人) | 変わる |
| 個人情報の扱い | 事業者が同一のため、比較的整理しやすい | 第三者提供にあたるかの検討が必要 |
事業譲渡の場合、個人情報保護法上の整理が必要になります。合併その他の事由による事業承継に伴う提供の扱いなど、具体的な要件を専門家に確認してください。
古物営業法の記録
取引記録と本人確認記録には保存義務があります。事業を引き継ぐ側は、これを引き継いで保存する必要が生じます。
ただし、事業譲渡の場合の記録の扱いは、管轄窓口に確認してください。誰が保存義務を負うかを明確にしておく必要があります。
開示の順序
- 買収監査まで:件数、リピート率などの統計値のみ。個人が特定できる情報は出さない
- 最終契約の直前:法的な整理を済ませたうえで、必要な範囲
- 引き渡し時:整理された形で引き継ぐ
「参考までに名簿を見せる」は避けてください。
価値を示す方法(個人情報を出さずに)
買い手に価値を伝えるには、統計値で十分です。
- 買取のあった相手の総数
- 2回以上取引のある相手の数と比率
- 1人あたりの平均取引回数と平均買取額
- 直近1年で取引のあった相手の数
- 会員・LINE登録者の数と、配信の反応率
実務での注意点
- プライバシーポリシーに、事業承継時の扱いが書かれているか確認する
- 書かれていない場合の対応を、専門家に相談する
- 引き継ぎ後、顧客への通知が必要かを確認する
- 引き継がない情報は、適切に廃棄する
- データの受け渡し方法を安全にする
個人情報の承継手続きを確認する
方式によって、必要な手続きが異なります。
- 株式譲渡の場合 — 法人が変わらないため、扱いが異なります
- 事業譲渡の場合 — 事業の承継に伴う個人データの移転として扱われます
- 利用目的の範囲 — 取得時に示した目的の範囲を超える利用はできません
- 本人への通知や公表の要否
- 安全管理措置の引き継ぎ
- 委託先がある場合の扱い
いずれも法令上の判断を伴います。必ず専門家にご確認ください。個人情報の取り扱いは、違反した場合の影響が大きい領域です。承継の方式を決める段階で、手続きの要否を確認しておいてください。
古物営業法の記録との区別
2種類の情報を、明確に分けて扱ってください。
- 古物台帳の記録 — 法令上の保存義務があります
- 会員情報・販促用の名簿 — 事業上の資産として管理する情報です
- 保存期間が異なる — 台帳には定めがあります
- 利用できる範囲が異なる — 台帳の情報を販促に使えるかは、確認が必要です
- 承継の手続きも異なる可能性がある
4番目を確認せずに運用している店があります。古物営業法に基づいて取得した情報を、販促の目的で利用してよいかは、取得時の説明と同意の内容によります。所轄の警察署と、個人情報保護に詳しい専門家の双方に確認してください。承継の場面だけでなく、日常の運用の問題でもあります。
個人情報を出さずに価値を示す
名簿そのものを開示しなくても、資産としての価値は伝えられます。
- 稼働している顧客数を示す — 直近12か月に取引のあった人数です
- リピート率を示す
- 1人あたりの累計取引額を示す
- 取引間隔の分布を示す
- 案内に対する反応率を示す — 実際に来店につながる割合です
- 買取と販売の両方で取引のある人の割合を示す
5番目が最も強い材料になります。「案内を送ると一定割合が来店する」という実績があれば、名簿が機能する資産であることを、個人情報を一切開示せずに証明できます。日常の販促の中で、この数字を記録しておいてください。
まとめ
買収監査までは統計値のみ。個人が特定できる情報は、法的な整理を済ませてから引き継いでください。
プライバシーポリシーの記載を確認し、専門家に相談したうえで進めましょう。