見るべき指標

  1. 在庫の日齢分布:181日超、365日超の比率と金額
  2. 簿価と実勢価格の差:ここが価格そのものになります
  3. カテゴリ別の粗利率と回転日数
  4. 買取件数とチャネル別の内訳:広告依存度
  5. 買取原価率の推移
  6. 査定できる人材の人数と勤続年数
  7. 棚卸差異の推移

落とし穴1:在庫の過大評価

最も多い失敗です。簿価をそのまま資産と見ると、引き継いだ後に売れずに損失が出ます。

  • 必ず実地棚卸に立ち会う
  • 日齢別に分けて評価する
  • 過去1年の実売価格を確認する
  • 自社の販売網で売れる商材かを見る

「売れる在庫」と「売れない在庫」を分けて評価してください。

落とし穴2:法令面の承継

株式譲渡では、過去の法令違反も引き継ぎます。

  • 古物商許可の届出内容と実態の一致(営業所、管理者、品目、URL)
  • 古物台帳と本人確認記録の作成・保存状況
  • 過去の行政指導・処分の有無
  • 盗品・偽造品に関するトラブルの履歴

記録が探せない会社は、法令リスクを抱えていると考えてください。

落とし穴3:人材の流出

査定できる人が辞めれば、買った意味がなくなります。

  • 査定担当が何人いるか、勤続年数は
  • 査定基準が文書になっているか(人に依存していないか)
  • 売り手の社長が唯一の査定者でないか
  • 残留のための施策を用意する

落とし穴4:労務の潜在債務

  • シフト制の未払残業
  • 歩合給がある場合の割増賃金の計算
  • 社会保険の未加入
  • 店長の管理監督者としての扱い

落とし穴5:預かり品と簿外在庫

  • 預かり品が自社在庫として計上されていないか
  • 逆に、帳簿に載っていない在庫がないか
  • 委託販売品の扱い

買収後を見据えた確認

  • 在庫データを個品で引き継げるか
  • システムからデータを出力できるか
  • ECモールのアカウントを承継できるか
  • 賃貸借契約に、経営権変動に関する条項がないか

買収前に確認する在庫の実態

簿価をそのまま信じないでください。確認の手順があります。

  1. 在庫リストの提出を求める — 1点ごとの管理番号、仕入日、仕入額
  2. 日齢の分布を確認する — 区分別の金額です
  3. 実地棚卸に立ち会う — 抽出でも、実施することに意味があります
  4. 直近の実売価格と比較する — 同種商品がいくらで売れているかです
  5. 預かり品・委託品が混ざっていないか確認する
  6. 日齢別の掛け率を当てて再評価する

3番目を省略しないでください。リストと現物の照合は、この業種の買収監査で最も重要な手続きです。書面だけの確認では、実在性も状態も分かりません。日程と人員を確保して実施してください。

人材の流出を防ぐ準備

査定できる人が抜けると、事業の入口が止まります。

  • キーマンを事前に特定する — 誰が何を担っているかを把握します
  • 処遇の改善を条件に含める — 買収後すぐに提示できる形にします
  • 早い段階で面談する — 成約後、速やかに会う機会を作ります
  • 役割を明確に示す — 統合後の位置づけを伝えます
  • 契約で雇用維持を定める — 売り手側の協力義務も含めます
  • 基準の文書化を求める — 引き渡し前に、査定基準の整備を条件にする形もあります

6番目は交渉の条件として提案できます。査定基準が文書化されていない会社であれば、引き渡しまでに整備することを条件にする。この作業自体が、属人性を下げる効果を持ちます。

労務と法令の潜在債務を洗う

数字に表れない負債が、この業種では見つかることがあります。

  • 未払いの割増賃金 — 歩合給がある場合、計算方法を確認します
  • 労働時間の管理状況 — 記録の有無と実態です
  • 社会保険の加入状況 — パート・アルバイトの加入要件です
  • 古物営業法上の記録の不備 — 記載漏れ、保存の状況
  • 許可の届出漏れ
  • 個人情報の管理体制
  • 係争・クレームの有無

これらの確認には、社会保険労務士・弁護士の関与が必要です。財務の監査だけでは把握できません。買収の規模に応じて、労務と法務の監査を実施するかを判断してください。是正に費用がかかる項目は、価格の交渉材料になります。

まとめ

在庫の日齢と実勢価格、法令の記録、査定人材。この3点を重点的に見てください。

実地棚卸には必ず立ち会い、「売れる在庫」と「売れない在庫」を分けて評価しましょう。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。古物営業法にもとづく許可の要否・必要書類・審査期間や、本人確認義務の具体的な運用は、法令の改正や管轄する警察署・公安委員会の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄窓口および専門家にご確認ください。