起きやすい災害の型
予防は、型を知ることから始まります。
はさまれ・巻き込まれ
- 重機の旋回範囲に人が入る
- アタッチメントと車体の間に入る
- 破砕機やプレスの稼働部に手を入れる
- 吊り上げた物の下に入る
墜落・転落
- 積み上げた車両の上での作業
- トラックの荷台からの落下
- 重機への乗降時
飛来・落下
- 積み上げた物の崩落
- 切断時の破片
- 吊り上げ中の落下
そのほか
- 切創(板金の端、ガラス)
- 火災、爆発(残った燃料、ガス、電池)
- 感電(電動車の高電圧部)
- 熱中症
最初の型が最も多く、そして重篤化します。重機と人が同じ場所で動くことが根本の原因です。教育だけでなく、作業のやり方そのものを変える必要があります。
教えるべき中身
抽象的な注意喚起では行動が変わりません。具体的に定めてください。
- 重機が動いている間、立ち入ってはいけない範囲
- 重機のオペレーターと地上作業者の合図の方法
- 重機を離れるときの手順(アタッチメントを下げる、キーを抜く)
- 積み上げの上限(高さ、段数)
- 高所で作業する際の要件
- 電動車を扱う際の手順
- 作業を止めてよい条件(誰でも止められること)
7番目を明示してください。「危ないと思ったら止めてよい」と経営者が言っているかどうかで、現場の行動が変わります。言われていなければ、人は作業を続けます。
1番目は図で示すのが確実です。文章では伝わりません。ヤードの図面に、立入禁止の範囲を描いてください。
伝わる伝え方
教育は形式を整えるだけでは意味がありません。
効果が出やすい方法を挙げます。
- 実際の現場で、その場所を指して説明する
- 過去に起きた事例(自社、他社)を具体的に話す
- 写真を使う(危ない状態と正しい状態を並べる)
- 短く、回数を多くする(月に一度15分)
- ベテランに話してもらう
4番目が現実的です。年に一度の長い研修より、月に一度の短い確認のほうが定着します。
5番目も効きます。経営者が言うより、同じ作業をしている人が「これで怖い思いをした」と話すほうが伝わります。
ヒヤリハットを集める
災害に至らなかった事例を集めてください。予防の材料になります。
集める仕組みの要点を挙げます。
- 紙1枚、3行で書ける形式にする
- 名前を書かなくてよいことにする
- 出したことを責めない
- 集まった内容を朝礼で共有する
- 設備で解決できるものは改善する
3番目が最も重要です。報告したら怒られる環境では、何も出てきません。出さなかった結果として災害が起きるほうが、はるかに大きな損失です。
そして5番目まで回してください。報告しても何も変わらなければ、次から出てこなくなります。
記録を残す
教育の記録には3つの用途があります。
- 行政の検査:教育の実施状況を確認されます。
- 災害が起きた場合:安全配慮の状況を示す材料になります。
- 承継・M&A:安全管理体制として評価されます。
記録する内容は、実施日、参加者、内容、使った資料。これだけでよいので、毎回残してください。
3番目は意外に重く見られます。労災の履歴と、教育の実施記録は必ず確認される項目です。記録がない会社は、体制が整っていないと判断されます。
作業のやり方そのものを変える
教育だけでは限界があります。人が危険な場所に入らなくて済む段取りに変えてください。
- 重機が動いている間、地上作業を同じ区画で行わない
- 時間で分ける(重機の作業時間と手作業の時間を分ける)
- 吊り上げた物の下を通らない動線にする
- 積み上げの高さを下げ、上に登る作業をなくす
- 治具や台を使い、無理な姿勢を減らす
2番目が実務的です。場所で分けられないなら、時間で分ける。これだけで接触の機会が消えます。
4番目は在庫の管理とも重なります。積み上げを低くするには、置く量を減らす必要があります。安全と在庫回転は同じ方向を向いています。
電動車への対応を先に入れる
高電圧を扱う作業は、従来の手順の延長では扱えません。
- 誰が扱ってよいかを決める(資格と教育)
- 絶縁用の保護具を用意する
- 電源を切る手順を明文化する
- 損傷した電池の扱いと保管場所を決める
- 発熱や発煙が起きた場合の対応
4番目が最も準備が遅れている領域です。損傷した電池は時間が経ってから発熱することがあります。他の物から離した場所を決めてください。
台数が少ないうちに手順を作ってください。増えてから整えるのでは間に合いません。
資格と教育の期限を管理する
必要な資格を持つ人が現に在籍しているかを、一覧で管理してください。
- 誰がどの資格を持っているか
- 更新が必要な資格の期限
- その資格を持つ人が1人しかいない作業
- 次に取らせる人と時期
3番目が事業の継続に関わります。その人が抜けた日に止まる作業を洗い出してください。安全の話であると同時に、属人化の話です。
4番目を予算に入れてください。資格の取得は費用と日数がかかります。必要になってから動くと、間に合いません。
※ 労働安全衛生に関する義務は法令で定められています。具体的な要件と運用は所管の窓口および専門家にご相談ください。