費用の性質が違う
この判断の本質は、固定費にするか変動費にするかです。
自社で持つ場合(固定費)
- 車両の取得または借入の返済
- 車検、保険、税
- 運転手の人件費(仕事がない日も発生する)
- 整備と修繕
- 駐車場
外注に出す場合(変動費)
- 運んだ分だけの運賃
- 仕事がなければ発生しない
- ただし単価は自社より高い
- 繁忙期に手配できないことがある
この違いが判断を決めます。量が安定していて稼働率が高ければ自社が安く、量が振れるなら外注が安全です。
そして相場が下がって出荷量が減る局面では、固定費が重くのしかかります。この業種は量が振れやすい業態です。そこを踏まえて判断してください。
実際の費用を計算する
「自社のほうが安い」を検証してください。
自社車両1台の年間費用を出します。
- 車両の取得費を使用年数で割った額
- 借入がある場合の利息
- 車検、重量税、保険
- 整備と修繕(過去3年の実績)
- タイヤなどの消耗品
- 燃料
- 運転手の人件費(社会保険を含む)
- 駐車場
これを年間の稼働回数で割ってください。1回あたりの費用が出れば、外注の運賃と直接比べられます。
7番目を忘れないでください。運転手の人件費を計算に入れずに「燃料代だけ」で比べている例があります。それでは判断を誤ります。
4番目も実績で見てください。古い車両は修繕費が上がります。年間で数十万円かかっているなら、その分を含めた比較が必要です。
稼働率を確認する
計算の分母になる部分です。
- 月に何日、実際に走っているか
- 1日に何回動いているか
- 走っていない日は何をしているか
- 繁忙期と閑散期の差
3番目を確認してください。運転手が走らない日にヤードの作業を担っているなら、費用は運搬だけのものではありません。その場合、自社で持つ意味が増します。
逆に、走らない日に手持ちになっているなら、稼働率が低いということです。外注に切り替える検討の余地があります。
4番目の差が大きい会社は、組み合わせが向きます。基本の便を自社で回し、繁忙期だけ外注を使う形です。
数字以外の要素
費用だけでは決まりません。
自社で持つ利点
- 急な依頼に対応できる
- 時間の融通が利く
- 荷の扱いを自社で管理できる
- 取引先に顔を見せられる
- 運転手がヤードの作業も担える
外注の利点
- 量の増減に対応できる
- 運転手の採用と教育が不要
- 労務管理の負担がない
- 事故のリスクを負わない
- 車両の資金が不要
自社の1番目と4番目は、営業上の意味があります。すぐに引き取りに行ける会社は、整備工場から選ばれます。この価値は費用に表れません。
外注の2番目は現実の制約です。運転手の確保は年々難しくなっています。採用できない前提で計画する必要がある場合もあります。
組み合わせの設計
どちらか一方に決める必要はありません。
- 近距離の引き取りは自社(頻度が高く、急ぎが多い)
- 遠方の出荷は外注(量がまとまり、日程が読める)
- 繁忙期は外注を足す
- 特殊な車両が必要なものは外注
1番目と2番目の組み合わせが多くの会社に合います。急ぎの対応力は自社で確保し、量の変動は外注で吸収する形です。
そして外注先は複数確保してください。1社に頼ると、繁忙期に手配できません。
車両を増やす前に確認すること
投資の判断です。次を確かめてください。
- 現在の車両の稼働率は上限に達しているか
- 配車の工夫で吸収できないか
- 運転手を確保できるか
- 量が減った場合に固定費を支えられるか
- 外注に出した場合の費用と比べてどうか
2番目を先に検討してください。積載効率と配車を見直すだけで、車両を増やさずに量をこなせる場合があります。
3番目が現実の関門です。車両を買っても運転手がいなければ動きません。採用の見込みを立ててから判断してください。
承継の場面での見られ方
- 車両の稼働率と、資産としての価値
- 借入の残高と返済の負担
- 運転手の年齢構成
- 労務管理の状況(運行の記録、時間の管理)
4番目が指摘されやすい点です。運行の記録や労働時間の管理が整っていないと、簿外の負担として扱われます。
3番目も見られます。運転手が高齢で、後に続く人がいなければ、買い手はその分を織り込みます。
運転手の労務管理を整える
自社で持つ場合、避けられない管理です。
- 拘束時間と休息の管理
- 点呼と運行の記録
- 健康状態の確認
- 免許と資格の期限
- 事故が起きた場合の手順
1番目が最も指摘されやすい点です。朝の引き取りから夕方の出荷までを1人に任せると、時間の上限を超えることがあります。
そして記録を残してください。承継の調査で確認され、記録がなければ管理していないと判断されます。
判断の順序
- 現在の1回あたりの費用を出す
- 外注の運賃と比べる
- 稼働率を確認する
- 量の振れ幅を確認する
- 運転手を確保できるか判断する
- 組み合わせの形を決める
4番目を軽く見ないでください。相場が下がって量が半分になった場合に成り立つかが、判断の分かれ目です。
※ 運送に関する要件や労務管理の義務は法令で定められています。具体的な対応は専門家にご相談ください。