なぜ回らないのか

止まる原因を先に押さえてください。

  • 点数が数千から数万になる
  • 同じ部品でも状態が違い、評価が一律にできない
  • 置き場所が決まっておらず、探すのに時間がかかる
  • 棚に載っているものと帳簿の品番が対応していない
  • 数える人が誰か決まっていない
  • 数えても評価額が決まらない

3番目と4番目が根本です。どこに何があるか分からない状態では、棚卸は探す作業になります

だから最初にやるべきは、数えることではなく置き場所を決めることです。順序を逆にすると進みません。

置き場所を決めることから始める

棚卸の前段として、区分を作ってください。

  • 棚に番号を振る(列と段)
  • 区分ごとに置くものを決める(部位別、車種別、単価別)
  • 区分の表示を棚に付ける
  • 大型部品の置き場所も決める
  • 入庫したら決めた場所に置く運用にする

2番目の分け方は、自社の売り方に合わせてください。部位別が探しやすい会社と、車種別が探しやすい会社があります。注文の来方で決めてください。

5番目が定着すれば、棚卸は棚を順に見て回るだけの作業になります。ここが整えば、時間が数分の一になります。

全数と抽出を分ける

全部を毎回数える必要はありません。

  • 単価の高い部品:全数を数える。頻度も高くする(月に一度)。
  • 中位の部品:区分ごとに点数を数える。四半期に一度。
  • 単価の低い部品:区分ごとの概算。年に一度。

この3段階に分けてください。金額の大半は、点数の一部が占めています。そこを押さえれば、精度の大部分が確保できます。

単価の高い部品は、盗難対策とも重なります。月に一度数える運用があれば、なくなったことに早く気づけます。

数える手順

  1. 棚の区分ごとに用紙を用意する
  2. 2人1組で回る(読む人と書く人)
  3. 区分の順に、点数を数える
  4. 棚にあるのに帳簿にないものを記録する
  5. 帳簿にあるのに棚にないものを記録する
  6. 状態が悪く売れないものに印を付ける
  7. 差異の原因を調べる
  8. 帳簿を実態に合わせる

4番目と5番目を必ず記録してください。差異の内容が分からなければ、原因を直せません

6番目も同時に行ってください。棚卸は、売れない在庫を見つける最良の機会です。数えるだけで終わらせるのは損です。

差異の原因を分類する

ずれには型があります。

  • 売ったのに帳簿から減らしていない
  • 取ったのに帳簿に載せていない
  • 処分したのに残っている
  • 置き場所が違って見つからなかった
  • 従業員が使った、または持ち出した
  • 盗難

1番目と2番目が最も多い原因です。入出庫の記録が付いていないことが根本です

4番目も頻繁に起きます。この場合、次の棚卸で「ないものが2つある」ことになり、混乱します。見つからなかったものは記録に残し、後で探してください。

5番目と6番目に至る場合は、管理の仕組みを見直す必要があります。数が分かっていること自体が抑止になります。

入出庫の記録を先に整える

棚卸で合わせても、記録が付かなければ次の棚卸でまたずれます。

  • 取り外して棚に入れたときに記録する
  • 売ったときに記録する
  • 処分したときに記録する
  • 従業員が使う場合の手続きを決める
  • 記録する人と方法を決める

1番目が最も抜けます。解体の現場で取った部品が、記録されずに棚に置かれるという流れが典型です。

解決策は、記録の手間を最小にすることです。棚に入れる際に伝票を1枚書く、あるいは棚の場所と品名を書いた札を付ける。それだけでも追えるようになります。

評価額の決め方

数量が出たら、金額にする必要があります。

  • 区分ごとの平均額を決めておく
  • 単価の高い部品は個別に評価する
  • 動いていない期間に応じて評価を下げる基準を作る
  • 基準を文書にして毎期同じ考え方を使う

1番目が実務の要です。1点ずつ評価しようとすると終わりません。区分ごとに平均を決めておけば、点数を掛けるだけで済みます。

3番目は税理士と相談してください。基準を持っておくことで、実態に近い数字になり、処分の判断もしやすくなります。

棚卸が承継の準備になる

  • 在庫の実態が数字で示せる
  • 売れない在庫を処分し、評価を実勢に近づけられる
  • 買い手からの信頼につながる
  • 後継者が在庫の状況を把握できる

3番目が交渉に効きます。在庫の数量と評価に根拠がある会社は、そこで議論が止まりません。数えていない会社は、買い手が実勢で大きく引き下げます。

最初の一巡に時間をかける

置き場所を決める作業は、一度だけ大きな手間がかかります。

  • 入庫の少ない時期を選ぶ
  • 何日かかるかを見積もり、予定に入れる
  • 区分を先に紙の上で決める
  • 棚の番号札を先に作る
  • 並べ替えながら、売れないものを抜く

5番目を同時にやってください。並べ替えの手間をかけるなら、売れないものを運ぶ必要はありません

この一巡が終われば、以降の棚卸は数分の一の時間で済みます。投資として考えてください。

※ 在庫の評価方法は税務上の判断を伴います。具体的な処理は税理士にご相談ください。