買い手は何を見るか

調査で確認される項目を挙げます。

  • 数量が帳簿と合っているか
  • どこに何があるかの記録があるか
  • どれだけの期間動いていないか
  • 過去の販売実績(何がいくらで売れているか)
  • 評価の基準と、その一貫性
  • 売れない在庫の量と、処分費の見込み
  • 掲載している点数と成約率

1番目で合わなければ、そこから先が信用されません。数えていない在庫は、資産として認められません

3番目と6番目が評価を下げる要因です。動いていない在庫は、資産ではなく処分費のかかる負担として見られます。

資産に見える条件

次が揃っていれば、在庫は強みとして評価されます。

  • 数量と場所が記録され、実物と一致している
  • 販売の実績が数字で示せる
  • 回転している(動いている在庫の比率が高い)
  • 掲載され、売れる状態にある
  • 評価の基準が文書化されている
  • 売れない在庫が定期的に処分されている

2番目と3番目が核心です。「棚にある」ではなく「売れている」ことが示せれば、収益を生む資産として見られます

6番目も評価されます。処分の履歴があれば、管理されている在庫だと判断されます。何も処分していない会社は、溜め込んでいると見られます。

負債に見える条件

逆の状態を確認してください。

  • 数量が把握されていない
  • どこに何があるか分からない
  • 10年以上動いていない部品が多数ある
  • 取得時の価格で評価され続けている
  • 掲載されていない
  • 処分の履歴がない
  • 状態が悪く、売れる見込みがない

4番目が数字の面で問題になります。実際には売れないものが資産として計上されていれば、株価が実態より高く評価されます。承継の税負担が重くなります。

そして買い手は必ず実勢で見直します。そこで大きく下がるなら、先に整理しておくほうが交渉が有利です。

今から整える順序

  1. 棚に番号を振り、置く区分を決める
  2. 単価の高い部品から数える
  3. 動いていない期間で区分する
  4. 売れる見込みのないものを洗い出す
  5. 相場と需要を見ながら、売れるものを売る
  6. 売れないものを処分し、記録を残す
  7. 入出庫の記録を付ける運用にする
  8. 掲載率を上げる
  9. 評価の基準を文書にする
  10. 販売実績を品目別に集計する

5番目の時期が重要です。譲渡を決めてから急いで処分すると、買い叩かれます。2年前から動けば、処分費が売却収入に変わる部分があります。

10番目まで進めば、在庫の価値を数字で説明できます。ここまで整えている会社は少なく、差がつくところです。

処分は損ではない

処分をためらう理由と、その考え方を整理します。

  • 「いつか売れるかもしれない」→ 期限を決めて判断する
  • 「取るのに手間をかけた」→ 過去の手間は戻らない
  • 「帳簿の資産が減る」→ 実態に近づくだけ
  • 「処分費がかかる」→ 置いておく費用も発生している

2番目が判断を狂わせる要因です。かけた手間は、置いておいても回収されません。売れないものは、早く処分するほうが損失が小さくなります。

4番目も認識してください。置いておく費用は、場所、管理の手間、棚卸の負担、資金の拘束です。見えないだけで、発生しています。

数字で効果を確認する

整理の前後で比べてください。

  • 在庫の点数と評価額
  • 動いている在庫の比率
  • 在庫の回転(年間の売上を平均在庫で割る)
  • 掲載率
  • 自社株の評価額の試算

3番目が最も見られる指標です。回転が上がっていれば、在庫が資産として機能していることになります

5番目を税理士に試算してもらってください。整理する前と後で株価がどう変わるかが分かれば、この作業の価値が金額で見えます。

後継者に渡す形にする

  • どこに何があるかの記録
  • 何が売れているかの実績
  • 取る部品と取らない部品の一覧
  • 評価と処分の基準
  • 販路(掲載先、取引先)

3番目が引き継ぎの中心です。長年の経験で選んできた判断を、一覧という形にして渡してください

これがなければ、後継者は同じ経験を積み直すことになります。その間に無駄な在庫が増えます。

回転を上げる具体策

評価を上げる最短の道は、動く在庫の比率を上げることです。

  • 掲載率を上げる(棚にあるものを全部載せる)
  • 動かない品目の価格を見直す
  • 期限を決めて処分する
  • 取る部品を絞り、増やさない
  • 販路を増やす(国内、海外、専門店)

4番目が根本の対策です。出口を広げるより、入口を絞るほうが早く効きます

売れない部品を取り続けている限り、処分と並行して増え続けます。取る基準を見直してください。

説明できる資料を1枚作る

  • 在庫の点数と評価額
  • 区分別の内訳(動いている、滞留、処分予定)
  • 年間の販売実績
  • 回転の推移
  • 評価と処分の基準

この1枚があれば、調査で在庫の話が止まりません。数字を出せる会社と、棚を見せるだけの会社では、扱いが違います

※ 在庫の評価や株価の算定は個別の状況によって異なります。具体的な試算は税理士にご相談ください。