買い手はどう探すのか
データの設計を考える前に、探す側の行動を理解してください。
整備工場が中古部品を探すとき、手がかりになるのは次の情報です。
- 純正品番:最も確実な手がかり。これで一致すれば適合します。
- 車台番号、型式:品番が分からない場合、車両情報から探します。
- 車種名と年式:おおまかな絞り込み。
- 部品名:呼び方が複数ある場合、揺れが生じます。
つまり、純正品番が入っているかどうかが決定的です。入っていなければ、探す側が確認の連絡をしてくることになり、その手間で他社に流れます。
最低限入れるべき項目
点数が多いため、項目を増やすほど登録が滞ります。優先順位をつけてください。
必須
- 部品名(社内で表記を統一する)
- 車種、型式
- 年式
- 純正品番
- 状態の区分
- 価格
- 保管場所
- 入庫日
あると強い
- 写真(複数方向、傷の部分を含む)
- 走行距離(機能部品の場合)
- 色番号(外装部品の場合)
- グレード、仕様(同じ車種でも部品が違う場合)
- 動作確認の結果
写真の効果が最も大きいです。状態が見えれば、問い合わせなしで購入判断ができます。逆に写真がなければ、買い手は必ず確認してきます。
純正品番をどう取るか
これが実務の壁です。手間がかかります。
取得の方法を挙げます。
- 部品に刻印・ラベルがある:多くの部品には品番が付いています。取り外した時点で確認します。
- 車両情報から調べる:型式と年式から検索できる仕組みを使います。
- 同一部品の過去データを使う:一度登録すれば、次からは流用できます。
3番目が効いてきます。最初は手間ですが、蓄積すれば楽になります。同じ車種を何台も扱うため、データが増えるほど登録が速くなります。
逆に、記録せずに毎回調べていると、いつまでも手間が減りません。
部品名の表記を統一する
見落とされやすい論点です。同じ部品を、人によって違う名前で登録していると検索に引っかかりません。
例えば次のような揺れが生じます。
- フロントバンパー/Fバンパー/前バンパー
- ヘッドライト/ヘッドランプ/前照灯
- ドアミラー/サイドミラー/電動ミラー
対策は単純です。部品名の一覧を作り、それ以外の表記を使わないと決めてください。入力時に選択式にできれば、揺れが起きません。
この一覧は、新しく入った人への教育にも使えます。
解体工程の中で登録する
データを整えるうえで最も重要な運用の話です。
「後でまとめて登録する」という運用は、必ず滞ります。忙しい日が続けば、未登録の部品が積み上がります。そして未登録の在庫は、存在しないのと同じです。
解決策は、登録を解体工程の一部にすることです。
- 取り外した時点で、品番を確認して記録する
- その場で撮影する
- 保管場所に置くときに、場所を記録する
現場で端末を使える環境があれば、これが可能になります。事務所に戻ってから思い出すのではなく、その場で済ませるという設計です。
そのための投資(タブレット、通信環境)は、比較的小さな金額で効果が出る領域です。
データの質が資産になる
整ったデータは、次の3つの意味で資産です。
① 売れる
検索で見つかり、写真で判断でき、即答できる。それだけで成約率が変わります。
② 経営判断の材料になる
何が売れて何が売れないか。回転率、滞留、価格の妥当性。すべてデータから出ます。
③ 譲渡で評価される
買い手が在庫を評価するとき、データの質を見ます。
- 帳簿の点数と現物が一致するか
- どこに何があるか分かるか
- 引き継いだ日から売れる状態か
整っていなければ、買い手はまず整理から始めることになります。その手間が価格から差し引かれます。
逆に整っていれば、在庫が「資産」として評価されます。同じ点数の在庫でも、データの質で評価が変わるということです。
過去の在庫を遡るか
「今からデータを整える」と決めたとき、既存の在庫をどうするかが問題になります。
全部遡るのは現実的ではありません。優先順位をつけてください。
- 単価の高い部品から:エンジン、ミッション、電子部品。
- 問い合わせが来る部品から:探されている車種を優先する。
- 入庫が新しいものから:古い在庫は処分の対象になる可能性があります。
3番目の考え方が効率的です。滞留在庫にデータを整える手間をかけても、売れなければ無駄です。処分の判定を先に済ませ、残ったものを整える順序にしてください。
取引先の探し方に合わせる
データ項目は、実際に問い合わせが来る内容に合わせるのが最も効率的です。
直近の問い合わせを振り返ってください。
- 相手は何を手がかりに聞いてくるか(品番か、車種か)
- どの情報を追加で聞かれるか
- どの情報がないために断念されたか
3番目が最も価値のある情報です。「色が分からないので見送ります」と言われたなら、色番号を入れるべきということです。実際の失注理由から項目を決めてください。
※ データ項目や運用方法は取扱量と体制によって異なります。自社で継続できる範囲から始めてください。