なぜ輸出を考えるのか
この業態で輸出が選択肢になる理由を整理します。
- 国内で需要が終わった年式の部品に、海外では需要がある
- 国内で走っていない車種の部品が求められる地域がある
- まとまった量を一度に売れる
- 国内相場とは別の価格形成になる
特に1番目が大きいのです。国内で滞留している在庫の出口になり得ます。
ただし、簡単ではありません。手間とリスクを理解したうえで始めてください。
始める順序
第1:何が売れるかを知る
最初にやるべきはこれです。自社の在庫のうち、どれに海外需要があるのか。
調べ方を挙げます。
- 既に輸出している同業者に聞く
- 国内のバイヤー(輸出業者)に在庫リストを見せる
- 部品検索ネットワーク経由で海外からの問い合わせがあるか確認する
- 展示会や商談会に参加する
2番目が最も現実的な入口です。自分で輸出する前に、国内のバイヤーに売るという段階があります。
第2:国内のバイヤーに売ってみる
これが最も安全な始め方です。
- 輸出の手続きは相手が行う
- 代金は国内取引として回収できる
- 何が売れるのかが分かる
- 価格の水準を知れる
利益は自分で輸出するより小さくなります。しかしまず実績と知識を得る段階として合理的です。
第3:直接輸出を検討する
需要が分かり、相手が見つかってから初めて自社で輸出します。
梱包の実務
輸送中の破損は、そのまま損失になります。国内配送より条件が厳しいと考えてください。
- 長期間の輸送、積み替え、湿気にさらされる
- 荷崩れ、圧縮
- 塩害(海上輸送)
- 受け取り側での荷降ろし方法が分からない
対応としては次のとおりです。
- 木枠、パレットを使う(規制がある場合、処理済みの材を使う)
- 防錆処理をする
- 緩衝材で保護する
- コンテナ内で動かないよう固定する
- 内容物のリストを添付する
- 積み込み時の写真を撮る(破損の責任を切り分けるため)
最後の点を必ず行ってください。「届いたときに壊れていた」という主張への備えになります。
書類の実務
輸出には所定の書類が必要です。品目と仕向地によって異なるため、詳細は通関業者に確認してください。
一般的に関わるものを挙げます。
- インボイス(請求書)
- パッキングリスト(梱包明細)
- 船積みに関する書類
- 品目や仕向地によって必要になる許可、証明
最初は通関業者に依頼するのが確実です。自社で完結させようとすると、書類の不備で貨物が止まります。
そして、規制の対象になる品目がないかを必ず確認してください。特に廃棄物に該当し得るもの、フロン類を含むもの、電池を含むものは注意が要ります。
決済の実務
ここが最大のリスクです。代金を回収できなければ、すべてが損失になります。
基本的な考え方を示します。
- 初回は前払い:これを原則にしてください。
- 取引実績を積んでから条件を緩める
- 一度に大きな金額を後払いにしない
- 信用状などの仕組みを使う:金額が大きい場合。
1番目を守ってください。「今回だけ後払いで」という要請に応じて回収できなかったという事例があります。
そして為替の影響も見込んでください。契約から入金までの間に変動します。
社内に必要な体制
輸出を継続するには、次が必要です。
- 連絡を取れる人(言語の問題)
- 書類を作れる人
- 梱包の作業を回せる人員
- 在庫リストを英語で出せる仕組み
1番目が壁になります。多くの場合、特定の1人に依存します。その人が辞めれば輸出が止まります。
対策としては、やりとりを記録に残す、翻訳の仕組みを使う、複数人が関われる形にする。承継の場面でも問われる部分です。
最初の1件をどう作るか
具体的な進め方をまとめます。
- 滞留している在庫のリストを作る(車種、部位、状態、写真)
- 国内の輸出バイヤーを探し、リストを見せる
- 売れた品目と価格を記録する
- それを繰り返して、需要のある品目を特定する
- 量がまとまるようになったら、直接輸出を検討する
1番目から始めてください。写真付きのリストがあれば、それだけで商談ができます。
そして、この作業は国内販売にも効きます。在庫の整理とデータ化は、どの販路でも前提になります。
輸出が国内販売を助ける
輸出を「別の事業」と考えると負担に見えます。しかし実際には、国内販売にも効きます。
理由を挙げます。
- 在庫リストを整えることになる(国内でも売れやすくなる)
- 写真を撮る運用が定着する
- 滞留在庫の出口が増え、在庫が回る
- 取る部品の判断材料が増える(海外需要も考慮できる)
1番目と2番目が本質的です。輸出のために整えたデータは、国内販売でもそのまま使えます。
したがって、輸出を始めるかどうか迷っている段階でも、在庫のリスト化と撮影は進める価値があります。それ自体が投資になります。
※ 輸出に必要な手続きや規制は品目と仕向地によって異なります。実際の輸出にあたっては通関業者および所管窓口へご確認ください。