3つのリスク
① 短絡による発熱・発火
プラスとマイナスの端子が金属で繋がると、大電流が流れて発熱します。周囲に可燃物があれば火災に至ります。
ヤードでは金属が周囲にいくらでもあるという環境です。取り外したバッテリーを金属の上に置く、金属片が上に落ちる、他のバッテリーの端子と接触する。いずれも起こり得ます。
② 液漏れ
内部の電解液は腐食性があります。漏れれば次の問題が生じます。
- コンクリートや金属を傷める
- 舗装されていない場所なら、土壌に染み込む
- 作業者の皮膚や目に触れれば傷害を負う
- 他の部品を汚損する
③ 盗難
鉛としての価値があるため、持ち去られる対象になります。持ち運べる大きさであることも要因です。
取り外したあとの処理
取り外したら、その場で次を行ってください。
- 端子を絶縁する:テープで覆う、キャップをかぶせる。これが最も重要です。
- 外観を確認する:亀裂、膨らみ、液漏れの跡がないか。
- 状態で分ける:正常品と、破損・液漏れしているものを分けます。
- 保管場所へ運ぶ:立てたまま、倒さないように。
1番目を省略しないでください。「あとでまとめてやる」と決めた作業は、忙しい日に飛びます。取り外しの手順に組み込んでください。
保管の方法
- 屋根の下に置く:雨で端子が腐食し、また外装が劣化します。
- 液が漏れても広がらない場所に置く:受け皿、防液堤、または舗装された場所。
- 立てて並べる:横倒しや積み重ねは液漏れの原因になります。
- 端子同士が触れない間隔を取る:または絶縁材で仕切ります。
- 他の可燃物から離す
- 破損品は分けて置く:受け皿に入れ、早く引き渡します。
3番目が守られていないヤードをよく見ます。積み重ねると下のものに荷重がかかり、外装が割れます。
引渡先を確保する
鉛バッテリーは、資源として引き取られるのが通常です。ただし条件は市況によって変わります。
確認すべき点を挙げます。
- 現在どこへ引き渡しているか
- 有価で引き取られているか、費用が発生するか
- 破損品も引き取ってもらえるか
- 代替の引渡先があるか
- 必要な許可を持つ相手か
3番目に注意してください。破損品や液漏れしたものは、引き取りを断られることがあります。断られた分が敷地に溜まっていく、という状況を避けるため、事前に確認しておいてください。
数量を管理する
盗難への備えとして、また溜め込みを防ぐために、数量を記録してください。
- 取り外した数(日次または週次)
- 現在の保管数
- 引き渡した数と日付
この3つの整合が取れていれば、失われた場合に気づけます。取っていなければ、いつどれだけ持ち去られたのか分かりません。
照合は月に一度で構いません。数えるだけです。
盗難への対策
- 屋外の見える場所に置かない
- 施錠できる場所、または夜間に見えない位置に置く
- 保管場所にカメラを向ける
- 照明を設置する
- 数量を定期的に照合する
- 社内でも、扱える人を明確にする
最後の点も現実的な論点です。管理が曖昧だと、内部での不明が生じても分かりません。数量管理はその抑止にもなります。
駆動用電池との混同を避ける
電動車が増えるなかで、注意すべき点があります。
鉛バッテリーと駆動用リチウムイオンバッテリーは、まったく別の扱いが必要です。しかし現場では「バッテリー」と一括りに呼ばれがちです。
次を明確にしてください。
- 呼び方を分ける(社内の用語を統一する)
- 保管場所を完全に分ける
- 表示を出す
- 扱える人を分ける(駆動用は教育を受けた人のみ)
- 新しく入った人に、違いを最初に教える
混同したまま駆動用電池を鉛バッテリーと同じように扱えば、感電と発火の両方のリスクが生じます。ここは徹底してください。
作業者の保護
最後に、人の安全です。
- 電解液に触れる可能性がある作業では、保護眼鏡と手袋を使う
- 液が付着した場合の洗浄方法を周知する
- 洗眼できる設備または用具を用意する
- 重量があるため、無理な姿勢で持ち上げない
これらを手順書に入れ、新しく入った人には必ず伝えてください。慣れた作業だからこそ、教えないまま任せてしまうという落とし穴があります。
取り外しを工程に組み込む
この部材で最も効く運用は、入庫の早い段階で外してしまうことです。
理由を挙げます。
- 車両に付いたまま置くと、端子が露出したままになる
- 雨で腐食し、液漏れの可能性が上がる
- 盗難の対象になる
- 解体の順番待ちの間に劣化する
液抜きの工程と同じタイミングで外し、その場で端子を絶縁して保管場所へ運ぶ。この流れを標準にしてください。
相場によって扱いが変わる
鉛の相場によって、有価で引き取られるか費用が発生するかが変わることがあります。
そのため次を年に一度確認してください。
- 現在の引取条件(有価か、費用か、いくらか)
- 他の引渡先の条件
- それが1台あたりの収益にどれだけ影響しているか
金額としては大きくない部材ですが、年間の台数を掛ければ無視できない額になります。買取価格の算定にも織り込んでください。
※ 引渡の条件や必要な許可は取引先および地域によって異なります。具体的な取り扱いは引渡先および所管の窓口へご確認ください。