給油需要だけに頼らない発想

ガソリンスタンドは長らく、車に燃料を入れる場所として認識されてきました。しかし、車の使われ方や地域の人口動態が変わるなかで、給油だけに収益を頼る構造には不安が残ります。だからこそ、地域のなかで自社がどんな役割を担えるかという発想が重要になります。

立地の良さや、日々多くの車が立ち寄る動線は、給油以外の価値にもつながり得る資産です。地域とのつながりを深めることで、燃料需要の変化に左右されにくい立ち位置を築いていく発想が求められています。

ただし、頼らないという言い方には注意が要ります。本業を軽んじるという意味ではなく、本業以外にも足場を持っておくという意味です。給油があるからこそ、地域にとって欠かせない場所であり続けられるのですから、そこを守ることが前提になります。

そのうえで、今ある強みをほかにどう活かせるかを考える。立地、営業している時間、地域での知られ方。これらはどれも、すでに手にしているものです。新しく何かをつくるより、持っているものの使い道を広げるほうが、始めやすいはずです。

道の駅との連携が生む相乗効果

道の駅は、地域の特産品や観光情報が集まり、多くの人が行き交う拠点です。近隣のガソリンスタンドがこうした拠点と連携できれば、立ち寄る人の流れを取り込み、互いに人を呼び込む相乗効果が期待できます。給油と休憩、買い物が一つの動線でつながれば、地域全体の魅力も高まります。

連携の形はさまざまで、情報の相互発信や、地域の催しへの協力といった身近なところから始められます。大がかりな取り組みでなくても、地域の拠点と手を組む姿勢そのものが、地域での存在感を高めていきます。

観光の玄関口としての役割

地方を訪れる旅行者にとって、給油の場所は旅の途中で必ず立ち寄る接点です。そこで地域の見どころや道の情報を案内できれば、ガソリンスタンドは観光の玄関口としての役割を担えます。ちょっとした案内や声かけが、地域の印象を左右することもあります。

観光客に選ばれる拠点になることは、地域経済への貢献であると同時に、自社の存在意義を高めることにもつながります。単なる通過点ではなく、地域の魅力を伝える場として位置づける発想が、これからの差別化につながるでしょう。

観光で訪れる方への応対は、日頃の常連の方への応対とは求められるものが違います。道を尋ねられる、近くの店を聞かれる、この先の道路の状況を確かめられる。給油とは直接関係のない問いに、どれだけ答えられるかで印象が決まります。

これは、特別な準備がなくてもできることです。周辺の情報をまとめた紙を一枚用意しておく、従業員が答えられるよう共有しておく。手間は小さいのに、覚えていただける度合いは大きく変わります。次に通るときにまた寄っていただける理由になります。

防災拠点としての存在意義

ガソリンスタンドは、災害時にエネルギーを供給できる貴重な拠点でもあります。停電や物流の混乱が起きたとき、燃料を確保できる場所の存在は、地域の安心を大きく支えます。この役割は、平時には見えにくくても、地域にとってかけがえのない価値です。

地域の防災の取り組みに関わっていくことは、住民や自治体との信頼関係を深めることにもつながります。地域に欠かせない拠点として認識されることは、事業の継続を考えるうえでも大きな強みになります。

とはいえ、こうした役割を担うには、日頃からの備えと、いざというときに動ける体制が要ります。誰がどう判断するのか、何ができて何ができないのか。期待だけが先行して、実際には応えられないという状態は、かえって信頼を損ねます。

だから、地域と話をするときには、自分たちにできることの範囲を正直に伝えておくことが大切です。できることを確実にやると約束するほうが、何でもやると言って果たせないより、はるかに信頼されます。

地域インフラとしての信頼を資産に

給油、観光案内、防災といった役割を通じて地域に根づくことは、目に見えにくいながらも確かな資産になります。地域に必要とされる拠点であるという信頼は、一朝一夕には築けないものであり、それ自体が事業の価値を支える土台となります。

こうした地域との結びつきは、将来事業を次の世代や新しい担い手へ引き継ぐ際にも、大きな意味を持ちます。地域に根ざした存在であることは、引き継ぐ相手にとっても魅力であり、事業の価値を高める要素として評価されやすいものです。

信頼は資産だと言われますが、決算書には載りません。だからこそ、目に見える形で残しておくことに意味があります。どういう取り組みを、いつ、誰と行ってきたか。写真や記録が残っていれば、それは説明できるものになります。

この記録は、承継の場面でも生きてきます。引き継ぐ側にとって、地域との関係は引き継げるかどうか分からない不確かなものです。積み重ねが見える形で残っていれば、それが続くものだと信じてもらいやすくなります。

連携を将来につなげる視点

地域拠点との連携は、目先の集客だけでなく、事業を長く続け、次へつないでいくための布石にもなります。地域に必要とされ続ける拠点であるほど、経営の選択肢は広がります。続けていく道も、信頼できる相手へ託す道も、地域での存在価値が支えとなります。

私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、地域に根ざしたガソリンスタンドが、その価値を将来へつなげていくためのご相談を承っています。何から取り組めるか迷われた際は、お気軽にご相談ください。

将来を考えるときに気をつけたいのは、連携そのものが目的にならないようにすることです。地域との関わりは大切ですが、本業が成り立っていなければ続けられません。関わりを持つことと、事業として立つことは、別々に見ておく必要があります。

そのためにも、連携によって何がどう変わったのかを、ときどき確かめておきましょう。来店の様子、周囲からの声、従業員の受け止め方。数字にならないものも含めて見ていくと、続ける意味が自分たちの言葉で語れるようになります。

連携は、相手のあることだと考える

併設と連携の大きな違いは、相手がいるかどうかです。自社の敷地で始める事業であれば、進め方も速さも自分たちで決められます。連携は、相手の都合と足並みを揃える必要があり、思うようには進みません。

だから、話を持ちかける前に、相手にとって何が得になるのかを整理しておくことが欠かせません。自社が何をしてほしいかだけを並べても、相手は動きません。相手が抱えている課題のどこに、自分たちが役に立てるのか。ここから考えるほうが、話は前に進みます。

また、相手には相手の事情や意思決定の仕組みがあります。担当の方が乗り気でも、決まるまでには時間がかかることがあります。急かさず、こちらの都合で期限を切らないことが、長い付き合いにつながります。

役割の分担と、費用の負担を最初に書く

連携でよく揉めるのは、始めるときではなく、続けているうちに「これは誰がやるのか」が曖昧な仕事が出てきたときです。掃除、片づけ、案内、問い合わせへの対応。細かなことほど、決めていなければ押しつけ合いになります。

だから、始める前に、何を誰がやるのかを書いたものを交わしておくことをおすすめします。仰々しい契約にする必要はなく、覚書のような形でも構いません。書いてあれば、後から確かめられます。書いていなければ、記憶の食い違いになります。

費用についても同じです。かかるものを誰がどれだけ負うのか、収入が生まれる場合はどう分けるのか。金額の話は言い出しにくいものですが、後から持ち出すほうがはるかに気まずくなります。どういう形で取り決めておくのが適切かは、事情に応じて専門家に相談してください。

担当者が変わっても続く形にする

地域との連携は、人と人のつながりから始まることがほとんどです。ある担当の方が熱心で、話が進み、うまく回り始める。ところが、その方が異動や退職でいなくなると、途端に動きが鈍くなることがあります。

これを防ぐには、やり取りの記録を残し、複数の人が関わる形にしておくことです。決めたこと、続けていること、これまでの経緯。こうしたものが残っていれば、新しい担当の方にも引き継げます。人が変わることを前提にした作りにしておくということです。

自社の側も同じです。経営者一人が窓口になっていると、承継の際に関係ごと途切れかねません。従業員にも関わってもらい、店として付き合っている形にしておくほうが、長く続きます。

期待の水準を、互いに揃えておく

連携が続かなくなる理由として案外多いのが、期待していたものと実際が違った、というものです。こちらは来店が増えると思っていたが、そこまでではなかった。相手はもっと積極的に動いてくれると思っていた。どちらも悪意はなく、最初に揃えていなかっただけです。

始める前に、それぞれが何を期待しているのかを言葉にしておくと、この行き違いはかなり防げます。控えめに見積もっておくくらいでちょうどよいでしょう。期待が小さければ、それを上回ったときに関係はより良くなります。

そして、始めた後に一度、話し合う機会を持つことです。思っていたのと違う点があれば、そこで調整すればよいのです。うまくいっているかを確かめる場を定期的に設けておくと、小さなずれが大きくなる前に手を打てます。

まず、小さく一緒にやってみる

いきなり大きな枠組みをつくろうとすると、決めることが増えて話が止まります。現実的なのは、一度きりの催しや、期間を区切った試みから始めることです。実際に一緒に何かをやってみると、相手の進め方や、自分たちとの相性が分かります。

小さく試すことのもう一つの良さは、断りやすいことです。合わないと分かったときに、終わりにする理由が自然にあります。最初から長い取り決めを結んでしまうと、合わないと気づいた後も抜けにくくなります。

試したうえで、続ける価値があると双方が感じたなら、そこから形を整えていけばよいのです。順序としては、関係が先で、取り決めは後。この順番のほうが、無理のない連携になります。

自社が地域から何を期待されているかを知る

連携の話を進めるうえで、自分たちが周囲からどう見られているかを知っておくことは大きな助けになります。給油の場所として見られているのか、困ったときに頼れる場所として見られているのか。この違いによって、任せてもらえる役割が変わります。

知る方法は難しくありません。日頃から来てくださる方に尋ねてみる、地域の集まりに顔を出してみる。改まった調査をしなくても、話を聞いていれば見えてきます。思っていたのと違う見られ方をしていることに気づくこともあります。

そこで分かったことは、連携の相手に話をするときの材料にもなります。自分たちがどういう存在として受け止められているかを具体的に語れれば、相手も一緒にできることを想像しやすくなります。抽象的な提案より、はるかに伝わります。

まとめ

道の駅や地域拠点との連携は、給油だけに頼らない存在価値を生み出す有力な視点です。観光の玄関口や防災拠点としての役割を通じて地域に根づくことは、燃料需要の変化に左右されにくい立ち位置を築くことにつながります。

地域に必要とされる信頼は、事業を続けるうえでも、次へ引き継ぐうえでも大きな資産になります。自社にできる連携の形を考えたい方は、業界に詳しい専門家とともに、無理のない一歩を探っていきましょう。