SAFとは何を指すのか

SAFは、持続可能な航空燃料と訳される次世代燃料の一つです。廃食用油や植物、廃棄物などを原料とし、従来の航空燃料に比べて脱炭素に資するとされています。航空分野は電動化が難しいとされることから、燃料側から二酸化炭素を減らす手立てとして関心が高まっています。

SAF自体は航空機のための燃料であり、ガソリンスタンドが直接扱うものではありません。しかし、燃料そのものを脱炭素化していくという発想は、自動車や物流にも共通しており、業界全体の方向性を読むうえで押さえておきたい動きです。

この分野は言葉が先行しやすく、同じ言い方でも指しているものが違うことがあります。誰かとこの話をするときは、何を指しているのかを確かめるところから始めると、話が噛み合いやすくなります。

物流や産業に広がる次世代燃料

次世代燃料の議論は航空にとどまりません。トラックや船舶といった物流分野、あるいは産業機械の分野でも、脱炭素に対応した燃料への関心が高まっています。電動化だけでは置き換えが難しい領域が多く残るなかで、燃料の中身を変えるという選択肢が現実味を帯びてきているのです。

こうした流れは、液体燃料を供給してきたガソリンスタンドの役割を、単純に縮小させるものとは限りません。むしろ、燃料を安全に蓄え、必要とする人や車両へ届けるという機能が、形を変えて求められ続ける可能性を示しています。

ガソリンスタンドが担ってきた供給の機能

ガソリンスタンドは長年、地域における燃料供給の要として機能してきました。危険物を安全に管理し、車両へ確実に給油するという役割は、燃料の種類が変わっても本質的に必要とされるものです。この供給網としての価値は、簡単には失われません。

次世代燃料が普及する局面が訪れたとき、こうした既存の拠点や運営の知見が、新しい供給の担い手として見直される可能性もあります。今ある機能を軽視せず、将来にどうつなげられるかという視点を持っておくことが大切です。

この機能は、平時にはほとんど意識されません。必要なときに必要な量が手に入るのは当たり前だと思われています。しかし、それを支えているのは、各地に散らばる店と、そこで働く人たちです。

自社がその一部を担っているという自覚は、事業を続ける動機にもなりますし、地域や取引先との関係を考えるうえでの土台にもなります。数字には表れませんが、確かに担っている役割です。

すぐに対応を迫られるわけではない

次世代燃料の話題に触れると、自社もすぐに何か手を打たなければと感じるかもしれません。しかし、これらの燃料が地域の給油拠点に直接関わってくるまでには、なお時間がかかると見るのが自然です。焦って設備投資に走るよりも、まずは動向を丁寧に追うことが賢明です。

大切なのは、変化を正しく理解し、自社にとって何が現実的な選択肢なのかを見極めることです。過剰に反応する必要はありませんが、無関心のまま流れから取り残されることも避けたいところです。落ち着いて情報を集める姿勢が求められます。

すぐに対応が要らないということは、今のうちに準備ができるということでもあります。急かされている状態では、じっくり考えることも、複数の選択肢を比べることもできません。時間があるうちに考えておくのが、最も効率のよい備え方です。

ただし、時間があると思っているうちに何もしないでいると、時間がなくなってから慌てることになります。急ぐ必要はありませんが、始めない理由にはしないことです。

脱炭素の全体像のなかで自社を捉える

SAFや次世代燃料は、脱炭素という大きな絵の一部にすぎません。同じ絵のなかには、電気自動車への対応、地域のエネルギー拠点としての役割、給油以外の事業への展開など、さまざまな要素が含まれています。一つの技術に目を奪われず、全体の流れのなかで自社を位置づけることが重要です。

燃料を取り巻く環境がこれほど動いている時代だからこそ、事業をどう続け、あるいはどう次の世代へ引き継いでいくかという経営の根本を、改めて考える機会にもなります。技術動向は、経営判断の材料の一つとして捉えるとよいでしょう。

全体像のなかで捉えるとは、自社が世の中の動きのどの部分に触れているのかを見定めることです。触れていない部分まで背負う必要はありませんし、触れている部分を見落とすわけにもいきません。この線引きが、無駄のない備えにつながります。

変化の時代における備え方

先の読みにくい時代においては、選択肢を一つに絞り込まないことが安心につながります。事業を続けながら新しい役割に対応していく道もあれば、体力のあるうちに信頼できる相手へ事業を託す道もあります。どの道が良いかは、経営者の意向と自社の状況によって変わります。

私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、燃料をめぐる大きな変化のなかで、経営の選択肢を一緒に整理するお手伝いをしています。将来に向けて何を考えておくべきか、早めのご相談をおすすめします。

備え方として最も確かなのは、何が来ても対応できる力を蓄えておくことです。収益に余裕があり、人が育っていて、設備が整っている。この状態にある店は、どんな変化にも構えられます。特定の未来を当てにいくより、確実な方法です。

そして、一人で考え込まないことです。取引先、同業、金融機関、専門家。それぞれ見えている景色が違いますから、話すたびに自社の位置づけがはっきりしてきます。分からないことは、分かる人に聞けばよいのです。

直接扱わない話を、なぜ知っておくのか

自店が扱うことのない燃料の動向を知る意味は、どこにあるのでしょうか。理由の一つは、自社のお客さまの側で起きる変化に、こうした動きが先行して現れることがあるからです。

運送や製造に関わる事業者は、取引先や社会の求めに応じて、自分たちの使うエネルギーを見直していくことがあります。その動きが進めば、こちらへの求めも変わります。何を求められるようになるのかを、少し早く察知できる材料になります。

もう一つは、自社が何を売っている事業者なのかを考え直す機会になることです。燃料を売る事業だと捉えるのか、車を使う人を支える事業だと捉えるのか。この捉え方によって、将来の姿はまったく変わってきます。

法人のお客さまの側の変化に、店頭から気づく

こうした変化は、報道より先に、日々の商売のなかに現れることがあります。取引のある事業者から普段と違うことを尋ねられる、車の使い方が変わる、担当の方の関心が変わる。小さな兆しとして出てきます。

気づくために必要なのは、特別な情報網ではなく、日頃の会話です。取引先の担当の方と、注文以外の話をしているか。最近どうですか、と尋ねる関係があるか。ここに情報が現れます。

そして、現場で聞いた話が経営者まで届く形になっているかも重要です。担当者が聞いた変化が、その人のところで止まっていては意味がありません。気づいたことを言い合える場を、月に一度でも持っておきたいところです。

自社は何を売っているのかを、言葉にしておく

エネルギーをめぐる動きが大きくなるほど、自社が何を担っている事業者なのかを問われる場面が増えます。このとき、燃料を売っているとだけ答えるのか、別の言い方ができるのか。この違いは小さくありません。

地域の人が移動するための支えになっている。事業者が仕事を続けるための土台になっている。こうした捉え方ができていれば、扱うものが変わっても、事業の芯は変わらないことになります。

言葉にしておくことは、従業員にとっても意味があります。世の中の変化を耳にしたとき、自分たちの仕事がなくなるのではなく、形が変わるのだと理解できます。この違いが、変化に向き合う姿勢を分けます。

承継の相手は、この視点を持っていることがある

事業を引き継ぐ相手が、比較的規模のある企業や、他業種から来る相手である場合、エネルギー全体の動きを踏まえて自社を見ていることがあります。そのとき、こちらが何も考えていないと、話がかみ合いません。

求められるのは、詳しい知識ではありません。自分たちがどう見ているのか、どう備えようとしているのか。自分の言葉で語れるかどうかです。答えが正しいかどうかより、考えているかどうかが見られます。

逆に、こうした視点を持って話ができる経営者は、相手からの信頼を得やすくなります。数字だけでは伝わらない部分ですが、条件の話にも影響してきます。承継を意識する段階に入ったら、押さえておきたい準備の一つです。

売り先の内訳を、種類ごとに把握しているか

こうした動きへの備えとして、まず確かめておきたいのが、自社の燃料が誰に売れているかの内訳です。一般のお客さまと、事業で使われる分。事業で使われる分のなかでも、どういう業種が多いのか。

この内訳が分かっていれば、どの業種で変化が起きたときに自社が影響を受けるかが見えます。逆に、内訳を把握していないと、変化が起きてから慌てて調べることになります。

調べ方は難しくありません。取引の記録を業種ごとに分けてみるだけです。一度やっておけば、あとは年に一度確かめれば足ります。この一枚があるかどうかで、変化への反応の速さが変わります。

特定の相手への偏りを、把握しておく

内訳を見ていくと、特定の取引先に大きく依存していることに気づく場合があります。その一社が事業を縮小したり、方針を変えたりすれば、自社の収入は大きく動きます。これはエネルギーの動向とは別に、それ自体が経営上の弱点です。

偏りがあること自体が悪いわけではありません。問題は、偏っていることに気づいていない場合です。気づいていれば、その相手との関係を大切にする、別の柱を育てるといった手が打てます。

この確認は、承継の場面でも必ず行われます。収入が特定の相手に依存していれば、その関係が続くかどうかが評価に直結するからです。早いうちに把握し、必要なら手を打っておくことが、将来の選択肢を広げます。

取引先との関係を、担当者から店の関係へ

事業で燃料を使う相手との関係は、多くの場合、特定の担当者どうしのつながりで成り立っています。長い付き合いのなかで信頼が積み重なり、細かな融通も利くようになる。これは大きな財産です。

ただし、この関係が一人に紐づいたままだと、その人が抜けたときに一緒に失われます。相手の側で担当が代わったときも同じで、こちらとの経緯を知らない人が来れば、条件が見直されることもあります。

だから、やり取りの経緯を記録に残し、複数の人が関わる形にしておくことです。誰といつ何を決めたか、どういう事情に配慮してきたか。これが残っていれば、人が代わっても関係は続きます。承継の際にも、そのまま引き継げる資産になります。

まとめ

SAFをはじめとする次世代燃料の広がりは、航空や物流、産業全体で脱炭素を進める大きな流れの表れです。ガソリンスタンドが直接扱うものではありませんが、燃料を安全に供給するという機能は形を変えて求められ続ける可能性があります。

すぐに対応を迫られるわけではないからこそ、動向を丁寧に追い、脱炭素の全体像のなかで自社を捉えることが大切です。将来の描き方に迷われた際は、業界に詳しい専門家とともに、無理のない道筋を考えていきましょう。