親子だからこそ対話が難しい
親子の事業承継は、信頼関係があるぶん円滑に進みそうに見えて、実はすれ違いが起きやすいものです。長年一緒にいるからこそ「言わなくても分かるだろう」という思い込みが生まれ、肝心な話が後回しになりがちです。改まって事業の将来を話す機会は、意外と少ないものです。
また、親は現役として築いてきた自負があり、子は子で自分の考えを持っています。近い間柄ゆえに遠慮や甘えが入り混じり、本音をぶつけにくくなることもあります。だからこそ、意識して対話の場をつくることが大切になります。
難しさのもう一つは、他人であれば当然する説明を省いてしまうことです。分かっているはずだと思い込み、肝心のところを伝えていない。他人が相手なら丁寧に話すことを、親子だと飛ばしてしまいます。
まず互いの意思を確認する
対話の出発点は、互いの意思をはっきり確認することです。親は本当に子へ継がせたいのか、いつ頃を引退の目安に考えているのか。子は継ぐ覚悟があるのか、経営に不安はないのか。この根本を確かめないまま話を進めると、途中で食い違いが表面化します。
意思確認では、結論を急がず、それぞれの正直な気持ちを引き出すことが大切です。子が迷っているなら、その理由に耳を傾けます。親が手放しきれない思いを抱えているなら、それも受け止めます。まずは本音を出し合える関係をつくることから始めましょう。
確認するときは、一度の返事で決めつけないことです。その場では継ぐと言っても、後から迷うことがあります。逆もまた同じです。何度か時期を置いて確かめるほうが、実際の気持ちに近づきます。
確認したい中身は、継ぐかどうかだけではありません。いつ頃なら、どういう形なら、何が不安か。ここまで聞けて初めて、話が具体的になります。
世代間ギャップを理解する
親子の承継では、世代の違いによる考え方のギャップがしばしば表れます。親は自らの経験に基づく経営を大切にし、子は新しいやり方や時代の変化を見据えます。ガソリンスタンドを取り巻く環境も変わりつつあり、燃料需要の見通しや店舗の役割についても、世代で見え方が異なることがあります。
大切なのは、どちらが正しいかを競うのではなく、違いがあること自体を認め合うことです。親の培った知見と、子の新しい視点は、どちらも事業の財産です。ギャップを対立ではなく、補い合えるものとして捉える姿勢が、前向きな対話につながります。
違いが出やすいのは、何を大事にするかです。長く続けることを重んじる世代と、変えることを厭わない世代。どちらが正しいということではなく、育った環境が違えば当然の差です。
この差を埋めようとするより、違うものとして扱うほうがうまくいきます。相手のやり方に納得できなくても、その理由は聞ける。そこまでで十分です。
対話を重ねる場をつくる
承継にまつわる話は、一度で結論が出るものではありません。日常の業務の合間ではなく、落ち着いて話せる場を意識的に設けることが有効です。定期的に時間を取り、少しずつ将来のことを話し合っていくと、双方に考える余裕が生まれます。
- 引退や承継の時期についての考え
- 経営理念や事業への思い
- 従業員や取引先との関係の引き継ぎ
- これからの店舗のあり方
こうしたテーマを一度に詰め込まず、回を分けて話していくとよいでしょう。感情的になりそうなときは間を置き、冷静に向き合える状態で話す。焦らず対話を重ねることが、納得のいく承継への近道です。
場をつくるときは、店から離れた場所を選ぶとよいでしょう。店にいると、どうしても目の前の業務に意識が向きますし、従業員の耳もあります。落ち着いて話せる環境そのものが、対話の質を左右します。
感情と事業を切り分ける
親子だと、事業の話がいつのまにか感情のぶつかり合いになってしまうことがあります。過去の出来事や家族としての思いが入り混じり、本題からずれてしまうのです。対話を建設的に進めるには、感情の部分と事業の課題を、意識して切り分けることが役立ちます。
事業の引き継ぎには、経営権や資産、従業員の処遇など、冷静に整理すべき事柄が多くあります。これらを感情から切り離して話し合うために、第三者に間に入ってもらうのも一つの方法です。客観的な視点が加わることで、話が前に進みやすくなります。
切り分けるといっても、感情をなかったことにするわけではありません。むしろ、感情の部分を認めたうえで、それとは別に事業の判断をする、という順序です。無視しようとすると、かえって後で噴き出します。
第三者の伴走で対話を支える
親子だけでは話が煮詰まってしまうときも、事業承継に詳しい第三者が加わることで、対話がなめらかになることがあります。互いに言いにくいことを整理して伝えたり、感情的になりがちな場面で冷静な視点を差し込んだりと、伴走者の役割は小さくありません。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化して事業承継を支援しています。相談無料・秘密厳守で、親子それぞれの思いに耳を傾けながら、対話が前に進むようお手伝いします。世代交代を円滑に進めたいときは、お気軽にご相談ください。
誰に入ってもらうかを選ぶときは、どちらか一方に肩入れしない相手を選んでください。親側の付き合いが長い相手だと、子の側は身構えます。中立に見える立場かどうかを、意識して選ぶことです。
親子には、これまでの歴史がある
他人どうしであれば冷静に話せることが、親子だと難しくなります。理由の一つは、事業の話をしているつもりでも、それまでの関係が下敷きになっているからです。
子の側には、認めてもらえなかったという記憶があるかもしれません。親の側には、期待どおりに育たなかったという思いがあるかもしれません。事業の話に見えて、実は昔の話をしていることがあります。
だから、話が噛み合わなくなったら、今何の話をしているのかを確かめてください。事業の判断の話なのか、それとも別の感情なのか。分けられれば、事業の部分は進められます。
言えないことが、たまっていく
親子は毎日顔を合わせるため、かえって改まった話をする機会がありません。日常のやり取りのなかに紛れて、大事な話が先送りされます。
そして、言いにくいことほど言わないままになります。継ぐつもりがない、このやり方は続けたくない、実は不安だ。どれも言えないまま何年も過ぎ、承継の直前になって表に出ます。
これを防ぐには、日常とは別の場を持つことです。時間を決めて、場所を変えて、事業の話をする。改まった場だからこそ、言えることがあります。
子の側から切り出しにくい理由
親が現役である以上、子から承継の話を持ち出すのは難しいものです。早く譲れと言っているように受け取られかねません。
だから、切り出す役目は親の側が担うほうが自然です。まだ先の話だが、いずれこうしたい。この一言があれば、子の側も話しやすくなります。
逆に、親が何も言わないまま年月が過ぎると、子は自分の人生の計画を立てられません。継ぐのか継がないのかが決まらなければ、住む場所も、職も決められないのです。
第三者が入ると、話し方が変わる
親子だけで話すと、どうしても普段の関係が出ます。同じ内容でも、他の人がいる場では言い方が変わり、聞き方も変わります。
入ってもらう相手は、専門家でも、信頼している取引先でも構いません。判断してもらう必要はなく、その場にいてもらうだけで十分です。
とくに、話が行き詰まっているときには効きます。二人だと引くに引けなくなる場面でも、第三者がいれば一度整理し直せます。恥ずかしいことではなく、実際的な手立てです。
継がないという答えも、受け止める
対話を始めるとき、継いでもらう前提で話すと、子の側は本音を言えなくなります。断れば親を落胆させると分かっているからです。
だから、最初に伝えておきたいのは、どちらの答えでも構わないということです。継がない道を選んでも、それを責めない。この前提があって初めて、正直な話が出てきます。
そして、継がないという答えが出たなら、それは早く分かってよかったのです。外に相手を探す時間ができます。曖昧なまま何年も過ぎるほうが、はるかに困ります。
話し合いを、日常に埋め込む
改まった場を持つことは大事ですが、それだけでは足りません。何か月も間が空くと、前に何を話したかを忘れます。
だから、日常のなかでも事業の話が出る状態にしておきたいところです。今日こういうことがあった、こう判断した。理由も添えて話しておくと、それ自体が引き継ぎになります。
この積み重ねは、後で効いてきます。改まった場で伝えられることには限りがありますが、日々の判断の積み重ねは、時間をかけてしか渡せないものです。
配偶者の存在を、忘れない
親子で話をまとめたつもりでも、それぞれの配偶者が納得していなければ、後から話が戻ります。とくに、子の側の配偶者は生活が大きく変わる立場です。
住む場所、働き方、家族の予定。継ぐという判断は、その人の人生にも直結します。本人だけで決めて、後から説明する形にすると、反発を招きます。
だから、早い段階で話に加わってもらうか、少なくとも状況を伝えておくことです。決める場に呼ばなくても、知らされていないという状態は避けたいところです。
渡す側にも、整理する時間が要る
対話というと、後継者の意思を確かめることに目が向きます。しかし、渡す側の気持ちの整理も、同じくらい時間がかかります。
長く自分で決めてきた事業を、他人の判断に委ねる。頭で理解していても、実際にその場面が来ると口を出したくなります。これは自然なことです。
だから、渡す練習を早めに始めることをおすすめします。小さな判断から任せてみて、口を出さずに見守る。この経験を重ねておくと、本番のときに慌てずに済みます。
話が進まない期間があってよい
何度か話しても結論が出ない時期は、必ずあります。そこで焦って結論を迫ると、相手は追い込まれ、口をつぐみます。
むしろ、決まらないまま時間を置くことに意味があります。その間にそれぞれが考え、次に話すときには少し変わっています。急ぐと、この変化が起きません。
ただし、放置とは違います。次にいつ話すかを決めておくこと。日付が入っていれば、間が空いても話は続きます。
話したことを、書いて残す
親子の話し合いは、その場で分かり合えたつもりになりやすいものです。ところが数か月後、それぞれが違うことを覚えていた、ということが起こります。
だから、話した内容はその日のうちに書き留めておいてください。何が決まって、何が持ち越しになったか。改まった文書は要らず、覚え書きで十分です。
次に話すときは、その覚え書きから始めます。同じ議論を繰り返さずに済みますし、積み上がっている感覚があると、話し合いを続ける気力も保てます。
まとめ
親子でガソリンスタンドを承継するときは、互いの意思確認から始め、世代間ギャップを認め合い、対話を重ねる場をつくることが欠かせません。感情と事業を切り分けて向き合うことで、すれ違いを避けながら前に進めます。
身内だからこそ難しい話し合いは、第三者の伴走で楽になることがあります。焦らず対話を積み重ね、業界に詳しい専門家の力も借りながら、納得のいく世代交代を実現していきましょう。