後継者が見つからない状況を整理する
まず大切なのは、後継者が見つからないという状況を一度落ち着いて整理することです。親族に候補がいないのか、いても継ぐ意思がないのか、社内に任せられる人材がいないのか。同じ「後継者不在」でも、その中身によって次に取るべき道は変わってきます。
状況を書き出してみると、実は選択肢が一つに絞られているわけではないと気づくことも多いものです。まだ体力があり事業も回っているうちに考え始めることで、選べる道は広がります。追い込まれてから動くと、選択肢が狭まりがちです。
整理するときにまず確かめたいのが、本当に探したのかという点です。声をかけていない相手が残っていないか。子や従業員に打診していないまま「いない」と判断していることは少なくありません。
整理した内容は書き出しておくと、相談のときにそのまま使えます。誰に何を打診し、どういう返事だったか。口頭で説明するより、経緯が分かる一枚があるほうが話が早く進みます。
選択肢は大きく三つに分かれる
後継者が見つからない場合に次に検討すべき道は、大きく分けて社外への承継、M&Aによる第三者への譲渡、そして廃業の三つです。それぞれに向き不向きがあり、どれが正解と一律に言えるものではありません。
重要なのは、この三つを最初から一つに決めつけず、並べて比べてみることです。従業員や取引先、地域の給油需要をどう守るか、経営者自身がどう引退したいのかによって、ふさわしい道は違ってきます。まずは全体像を押さえておきましょう。
三つと書きましたが、実際にはそれぞれの中にも幅があります。全部を渡すのか一部だけか、いつ渡すのか、渡した後に関わり続けるのか。細かく見ていくと、選べる形はもっと多くあります。
社外への承継という道
社外への承継は、親族や社内にこだわらず、外部から意欲ある人材を招いて経営を引き継いでもらう考え方です。同業での経験者や、地域で事業を広げたいと考える相手が対象になることがあります。事業そのものを残しながら、経営者を入れ替えていく道といえます。
ただし、外部の人材が円滑に経営に入るには、事業の実態が整理され、引き継ぎやすい状態になっていることが前提になります。許認可や設備、取引関係を丁寧に引き継ぐ準備が欠かせず、相応の時間をかけて進める心づもりが必要です。
この道を考えるとき、相手は同業とは限りません。近隣で事業を広げたい会社、別の業種から参入したい相手、地域で何かを始めたい人。想定を狭めると、可能性を自分で閉じてしまいます。
社外といっても、まったく知らない相手だけではありません。取引のある事業者、地域で顔を知っている相手。すでに関係がある分、話が早く進むこともあります。
M&Aで第三者へ引き継ぐ道
M&Aは、事業や会社そのものを第三者へ譲渡する方法です。買い手となる企業に引き継いでもらうことで、従業員の雇用や取引先との関係、地域への給油機能を残せる可能性があります。後継者が見つからないなかでも、事業を止めずに次へつなぐ有力な選択肢です。
ガソリンスタンドのM&Aでは、地下タンクの状態や環境面のリスクなど、業界特有の点が確認の対象になります。だからこそ、業界に詳しい専門家に相談しながら、自社の魅力をきちんと伝えられる準備を整えることが大切です。良い相手と出会うには、早めに動き出すほど有利になります。
この道で見落とされやすいのが、相手にも社内の手続きがあるという点です。担当者が乗り気でも、決まるまでには時間がかかります。返事が遅いことを断られたと受け取らず、進み方を確かめるようにしてください。
廃業を選ぶ場合の考え方
廃業は、事業をたたんで会社を閉じる選択です。引き継ぐ相手が見つからず、設備の更新負担も重いといった事情から、廃業を検討する経営者もいます。ただし廃業は、決めればすぐ終わるものではありません。
ガソリンスタンドの廃業では、地下タンクの撤去や跡地の扱い、従業員の処遇など、片づけるべきことが多岐にわたります。手続きや後始末に相応の手間と負担が伴うため、廃業を選ぶ場合も準備と段取りが欠かせません。廃業とM&Aを比べたうえで判断することをおすすめします。
この道を選ぶ場合も、終えるための費用と期間の見当は先に取っておいてください。資金が尽きてからでは、終えることすらできなくなります。金額の目安は設備を扱う業者に確かめてください。
三つの道を比べる視点
三つの道を比べるときは、金額の面だけでなく、いくつかの視点をあわせて考えることが大切です。従業員の雇用を守れるか、取引先や地域との関係を残せるか、経営者自身が納得して引退できるか。こうした点を並べて見ることで、自社に合う道が見えてきます。
- 従業員の雇用や処遇をどう守るか
- 取引先や地域の給油需要を残せるか
- 設備や許認可を引き継げる状態か
- 経営者自身がどう引退したいか
これらの視点は互いに関係し合っています。一つだけを重く見るのではなく、全体のバランスを見ながら、自社にとって何を優先したいのかを整理していくとよいでしょう。
比べるとき、どれか一つに早く絞る必要はありません。しばらくは複数を並行して持っておき、状況が見えてきた段階で絞る。この進め方であれば、一つが行き詰まっても手詰まりになりません。
比べた結果は、書いて残しておいてください。時間が経つと、なぜその判断をしたのかを自分でも忘れます。書いたものがあれば、状況が変わったときに見直しやすくなります。
迷ったら専門家に相談する
後継者が見つからないという悩みは、一人で抱え込むほど視野が狭くなりがちです。社外への承継、M&A、廃業のどれが自社に合うのかは、事業の状態や経営者の思いによって変わります。早い段階で業界に詳しい専門家に相談することで、選べる道の広がりが見えてきます。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化して事業承継やM&Aを支援しています。相談無料・完全成功報酬・秘密厳守で、自社にとってどの道がふさわしいかを一緒に整理し、次の一歩を伴走します。まずはお気軽にご相談ください。
相談するときは、まだ何も決まっていない段階で構いません。むしろ、決めてから相談すると、その道が最善だったかを確かめる機会を失います。決めるための材料を集める場だと考えてください。
どこに相談すれば、相手に出会えるのか
探すと決めても、どこに行けばよいのかが分からず止まってしまうことがあります。実際には、扱っている先はいくつかあります。
取引のある金融機関、商工団体、公的な相談窓口、承継やM&Aを扱う専門の事業者。それぞれ扱える範囲も、抱えている情報も違います。
どこから始めても構いません。日頃付き合いのある相手に「こういうことを考えている」と伝えるだけで、扱える先を教えてもらえることが多いものです。動き始めれば、道はつながっていきます。
探し始めてから決まるまでの長さ
相手が現れるまでには時間がかかります。しかも、現れてから条件を詰め、調査を経て、引き継ぐまでにも期間が要ります。全体では年単位になることも珍しくありません。
この長さを見込まずに動くと、途中で息切れします。とくに、探しているあいだも事業は続きますから、その体力が必要です。
だから、探し始める時期は、余力があるうちでなければなりません。追い込まれてから探し始めると、時間そのものが足りません。
条件を、どの順に緩めるか
希望どおりの相手がすぐに見つかるとは限りません。そのとき、何から緩めるかを決めておくと判断が楽になります。
金額、時期、雇用の維持、屋号、経営者が関わり続ける期間。すべてを通そうとすれば、相手は見つかりません。逆に、何も譲れないものがないと、相手の言うままになります。
だから、探し始める前に順番をつけておいてください。絶対に譲れないもの、できれば守りたいもの、譲ってよいもの。この整理があると、話が来たときに素早く判断できます。
探していることを、どこまで知られてよいか
相手を探すということは、外に情報を出すということです。従業員に知られたら、取引先に伝わったら。この懸念が、動き出しを鈍らせます。
実務としては、初期の段階では社名を伏せた形で進めるのが一般的です。どこまでを、いつ、誰に開示するかは相談する相手と決められます。
だから、この心配を理由に動かないのはもったいないことです。まずは、情報がどう扱われるのかを尋ねてみてください。想像していたより慎重に扱われることが分かるはずです。
探しながら、事業を良くしておく
相手を待っているあいだ、事業をそのままにしておくと、状態は少しずつ落ちていきます。設備は古くなり、人は年を取り、数字も動きます。
だから、探す期間は同時に整える期間でもあります。数字を分かる形にする、設備の記録を残す、経営者に集まっている仕事を分散する。どれも、相手が現れたときに効きます。
そして、この作業には別の効き目もあります。整えていくうちに事業そのものが良くなり、続ける道が見えてくることがある。探すことと整えることは、矛盾しません。
断られたときに、理由を聞く
話をした相手から断られることは普通にあります。そのとき、理由を聞けるかどうかで、次が変わります。
設備の状態が理由なのか、地域の条件なのか、収益の構造なのか、条件が合わなかっただけなのか。理由が分かれば、直せるものは直せます。
断られたことを失敗と捉える必要はありません。何が引っかかるのかを教えてもらえた、と考えれば、次の話に活かせます。同じ理由で何度も断られるなら、そこが本当の課題です。
この業種で、相手が関心を持つところ
探すにあたって、自社の何が相手の目に留まるのかを知っておくと、伝え方が変わります。
この業種でよく見られるのは、立地、許認可の状況、法人との取引、そして働いている人です。設備は新しいほうがよいものの、記録が残っていて状態が説明できれば、古さそのものが決定的な障害になるとは限りません。
逆に、相手が慎重になるのは、状態が読めない部分です。設備の履歴がない、数字の内訳が分からない、取引先の状況が説明できない。ここを埋めておくことが、探す準備そのものになります。
一人で抱えないための工夫
探す作業は、長く、結果が見えず、社内に相談できる相手もいない。精神的に消耗しやすい期間です。
だから、伴走してくれる相手を持っておくことが実質的な支えになります。定期的に状況を話す相手がいるだけで、抱え込みが減ります。
また、家族には早めに状況を伝えておくことをおすすめします。心配をかけたくないという思いから黙っていると、様子がおかしいことだけが伝わり、かえって不安にさせます。
まとめ
後継者が見つからないガソリンスタンドが次に検討すべき道は、社外への承継、M&A、廃業の三つに大きく分かれます。どれが正解と決めつけず、従業員や取引先、地域への影響、経営者自身の思いを並べて比べることが、納得のいく判断につながります。
いずれの道も、早く動き出すほど選べる幅が広がります。焦って一つに決める前に、業界に精通した専門家の力を借りながら、自社に合った道をじっくり見極めていきましょう。