通行客は貴重な見込み客

ロードサイドに立つガソリンスタンドの前を、日々多くの車が通り過ぎていきます。その一台一台が、給油や洗車、点検の潜在的なニーズを抱えた見込み客です。ところが、店の存在や提供している価値が伝わらなければ、そのまま通り過ぎられてしまいます。

この機会を逃さないための最前線が、看板やのぼりです。走行中のドライバーの目に留まり、立ち寄る理由を瞬時に伝えられれば、通行客を来店客へと変えられます。立地の強みを活かすうえで、これらの役割は小さくありません。

一瞬で伝わる視認性を高める

走行中のドライバーが看板を見る時間はごくわずかです。その一瞬で内容を認識してもらうには、遠くからでも読み取れる大きさと、はっきりした配色が欠かせません。文字を詰め込みすぎると、かえって何も伝わらなくなってしまいます。

伝えたいことを一つか二つに絞り、大きく分かりやすく示すことが視認性を高める基本です。背景と文字の色のコントラストや、余白の取り方も読み取りやすさを大きく左右します。見る人の立場に立って、瞬時に伝わるかを確かめることが大切です。

なお、視認性を上げる工夫が、かえって逆効果になる場合もあります。目立たせようとして色数を増やすと、どこを見ればよいか分からなくなります。強調したい部分を一つに絞り、他は抑える。この引き算のほうが、結果として目に入ります。

訴求内容を絞り込む

看板やのぼりで伝えられる情報は限られています。あれもこれもと欲張ると、結局どれも印象に残りません。今いちばん来店につなげたいものは何かを見極め、訴求する内容を絞り込むことが重要です。

  • いちばん伝えたい価値を一つに絞る
  • ドライバーの立場で立ち寄る理由を示す
  • 専門用語を避け、直感的に伝える
  • 季節や時期に合った内容にする

洗車をおすすめしたいのか、点検を案内したいのか、目的が明確なほどメッセージは鋭くなります。伝えたいことを一つに定めることで、通行客の心に届きやすくなります。

ロードサイド立地を活かす配置

看板やのぼりは、置く位置によって効果が大きく変わります。走行してくる車から見て、店に気づき、判断し、進入するまでには一定の距離が必要です。手前から段階的に情報を示すことで、ドライバーは余裕を持って立ち寄りの判断ができます。

また、進入路の分かりやすさも来店を左右します。入口が分かりにくいと、立ち寄りたくても通り過ぎられてしまいます。ドライバーの目線で店の前を走ってみて、どこで気づき、どこで判断するかを確かめると、効果的な配置が見えてきます。

配置を考えるときは、掲出できる場所や大きさに制限がある場合があります。自社の敷地内であっても、地域の定めによって条件が異なることがあり、敷地の外に出す場合はなおさらです。作る前に、所管の窓口と看板の業者に確認してください。作ってから設置できないと分かると、費用がそのまま無駄になります。

季節や時間帯に応じた使い分け

のぼりは付け替えがしやすく、季節や時期に応じた訴求に向いています。汚れの気になる季節には洗車を、点検の時期には点検を前面に出すなど、そのときのニーズに合わせて内容を変えることで、来店の動機を的確に刺激できます。

また、夜間も営業する店では、暗い時間帯の見え方への配慮も欠かせません。照明の当て方によって、昼と夜で印象は大きく変わります。時間帯ごとの見え方を確かめ、いつ通っても伝わる状態を整えておくことが大切です。

使い分けを続けるには、誰が、いつ入れ替えるのかを決めておく必要があります。「気づいた人が替える」では、誰も替えません。月初の朝、あるいは週明けの朝といった形で、日と担当を決めてください。

あわせて、しまう場所も決めておいてください。のぼりや表示板は、置き場所が決まっていないと傷みます。数年で買い替えることになると、その費用も積み上がります。

店全体の印象と一体で考える

看板やのぼりは、それ単体ではなく店全体の印象と一体で受け取られます。掲示物が色あせていたり、乱雑に並んでいたりすると、かえって店の印象を損ないかねません。清潔で整った見た目は、それ自体が信頼のメッセージになります。

伝えたい価値と店の実際の様子が一致していることも重要です。看板で丁寧なサービスを掲げるなら、店構えや接客もそれにふさわしいものであることが、来店したお客様の満足につながります。見せ方と中身をそろえる意識が欠かせません。

効果を見ながら育てる

看板やのぼりは、一度設置して終わりではありません。どの訴求が来店につながっているのか、お客様の反応を見ながら、内容や配置を少しずつ調整していくことが大切です。試しながら改善を重ねることで、自店に合った見せ方が見えてきます。

どこから手をつけ、何を優先すべきか迷ったときは、業界に詳しい専門家に相談し、自店の立地や客層に合った工夫を一緒に考えることをおすすめします。外からの視点が入ることで、見慣れた店構えの改善の糸口が見えてくることもあります。

読まれる時間は、思っているより短い

走っている車から看板が見える時間は、ごくわずかです。この前提を数字で押さえておくと、設計が変わります。

  • その道の車が、だいたいどれくらいの速さで通っているか
  • 看板が見え始めてから、店の入口を通り過ぎるまで何秒あるか
  • そのあいだに、判断して減速し、曲がれるか
  • 反対車線からも入れるのか、そうでないのか

三つ目が肝心です。読めても、そこから曲がれなければ来店にはつながりません。入口の直前に大きな看板を出しても、気づいたときには通り過ぎています。手前にも出す必要があるかどうかは、この点から決まります。

実際に確かめる方法は簡単で、自分の車で、お客様が通る側から走ってみることです。助手席に人を乗せて、何が読めたかを聞いてください。店の中から眺めているのとは、まったく違う景色が見えます。

一枚に載せる情報を削る

伝えたいことは多くありますが、載せるほど何も伝わらなくなります。次の順で削ってください。

  • まず、その看板で伝えたいことを一つに決める
  • それを、最も少ない文字数で言い換える
  • 読まなくても分かる要素(色、形、記号)に置き換えられないか考える
  • 残った文字を、遠くから読める大きさにする
  • 入りきらなければ、伝えたいことをもう一段削る

五つ目が要点です。文字を小さくして詰め込むのではなく、内容を減らしてください。小さい文字は、走行中には存在しないのと同じです。

複数のことを伝えたいなら、看板を分けて、通る順に並べるという手があります。手前で「何の店か」、次に「今すすめていること」、入口で「ここです」。一枚に詰め込むより、順に伝わります。

見えなくなっていないかを、定期的に確かめる

設置したときは見えていた看板が、時間とともに見えなくなることがあります。次のことを、季節ごとに確かめてください。

  • 植栽が伸びて、隠れていないか
  • 近隣に建物や工事の囲いができて、遮られていないか
  • 色があせて、遠くから判別しにくくなっていないか
  • 夜間の照明が切れていないか
  • 雪や雨のとき、どう見えるか

一つ目は、実際によくあります。自店の植栽なら手を入れられますが、隣地のものだとそうもいきません。その場合は、看板の位置や高さを変えることを検討することになります。

三つ目については、毎日見ていると気づけません。設置したときの写真を残しておき、たまに見比べてください。写真があると、変化がはっきり分かります。

店全体の見え方と合っているか

看板が良くても、店の見た目がそれと合っていなければ、入りにくさは残ります。次の点も、あわせて確かめてください。

  • 入口が、どこから入ればよいか分かるか
  • 敷地の中が見通せるか(何をしている店か分かるか)
  • 清掃が行き届いているか
  • 古いのぼりや、終わった告知が残っていないか
  • 営業しているかどうかが、外から分かるか

四つ目は、意外と印象を左右します。色あせたのぼりや、期限の過ぎた告知が出ていると、店全体が「手が回っていない」ように見えます。出すことより、下げることのほうが忘れられがちです。下げる日も決めてください。

五つ目については、営業時間の表示だけでなく、実際に営業していると分かる状態かどうかです。明かりがついているか、人の動きが見えるか。とくに夜間や、セルフの区画では気をつけたい点です。

効果をどう確かめるか

看板の効果は測りにくいものですが、まったく確かめられないわけではありません。

  • 看板を変えた前後で、新規のお客様の数が動いたか
  • 特定の告知を出したとき、その商品の動きが変わったか
  • お客様に「どこで知りましたか」と聞いてみる
  • 従業員から見て、初めて来た方が増えた実感があるか

三つ目は、手間はかかりますが確かな方法です。数週間だけでも聞いてみると、傾向が掴めます。看板を見て入ったという方が一定数いるなら、その看板は効いています。

そして、変えたことは記録に残してください。いつ、何を、どう変えたか。これがないと、数か月後に効果を振り返ろうとしても、何と比べればよいか分からなくなります。告知で来店を促すもあわせてご覧ください。

誰に向けた看板かを決める

「通行客に来てほしい」だけでは、何を書くかが決まりません。通っている車には、いくつかの種類が混ざっています。

  • 毎日この道を通る、近隣にお住まいの方
  • 通勤で決まった時間に通る方
  • 仕事で回っている法人の車
  • たまたま通りかかった、遠方からの方
  • この先の施設や道路に向かっている方

一つ目と二つ目には、毎回同じことを伝えても意味がありません。すでに店の存在は知っています。この方々に効くのは、今すすめていることや、価格以外の理由です。

四つ目と五つ目には逆で、「ここにガソリンスタンドがある」ことそのものが情報です。加えて、この先しばらく店がないなら、それを伝えることに価値があります。

どの種類が多い道なのかによって、看板の内容が変わります。朝と夕方で通る車の性質が違うなら、時間帯で出し分けるという手もあります。まず、自店の前を通る車を観察してください。

費用のかけ方を段階で考える

看板は、一度作ると簡単には変えられません。だからこそ、次の順で進めると無駄が出ません。

  • まず、のぼりや簡易な表示で試す(安く、すぐ変えられる)
  • 反応のあった内容や置き場所を確かめる
  • 効いたものを、しっかりした形にする
  • 恒久的なものは、内容が変わりにくいものに絞る

四つ目が要点です。季節や価格で変わる内容を、作り替えにくい形で出さないでください。恒久的な看板には、店名や取り扱い、入口の案内など、当面変わらないものを載せます。

逆に、変えたい内容は簡単に差し替えられる形にしておいてください。差し替えが面倒だと、古い内容が出しっぱなしになります。これは、先に述べた「終わった告知が残っている」状態を生みます。

まとめ

看板やのぼりは、ロードサイドに立つガソリンスタンドが通行客を来店へと導くための重要な接点です。一瞬で伝わる視認性を高め、訴求内容を絞り込み、立地を活かした配置と季節に応じた使い分けを工夫することで、通り過ぎる車を来店客へと変えられます。

見せ方と店の中身をそろえ、効果を見ながら育てていく姿勢が成果につながります。自店の立地や客層に合った工夫に迷ったときは、一人で抱え込まず、業界に精通した専門家の伴走を得ながら進めていきましょう。