なぜアプリが再来店につながるのか
給油はどの店でもできるため、お客様がその店を選び続ける理由は生まれにくいものです。会員アプリは、この関係に継続のきっかけを加えます。スマートフォンのなかに店の存在が残り続けることで、次の来店を思い出してもらいやすくなります。
アプリを通じてポイントがたまったり、会員だけの案内が届いたりすると、お客様のなかに「この店に行く理由」が積み重なります。ちょっとした接点の積み重ねが、給油だけの浅い関係を、選び続けられる関係へと変えていきます。
ただし、注意しておきたいことがあります。アプリを入れれば来店が増えるわけではありません。効くのは、もともとこの店を選んでくださっている方に、次の来店を思い出してもらう場面です。まだ来たことのない方を呼ぶ手段としては、あまり期待できません。
したがって、新規のお客様を増やしたいのか、今のお客様の来店頻度を上げたいのかを、先に決めてください。目的が違えば、手段も変わります。新規を増やしたいなら、看板やのぼりの工夫や地図アプリでの見え方のほうが直接的です。
ポイントで再来店を促す
ポイントは、再来店を後押しする分かりやすい仕組みです。来店のたびにたまり、次の利用で使えるようにしておけば、お客様は自然と同じ店を選ぶようになります。たまっていく感覚そのものが、通い続ける動機になります。
大切なのは、たまり方や使い方が分かりやすいことです。仕組みが複雑だと、せっかくのポイントも活用されずに終わってしまいます。お客様が手間なく使える設計にすることが、再来店の効果を高めます。
会員機能でつながりを保つ
会員アプリは、ポイント以外にも来店の記録や車のメンテナンス時期を管理する機能を持たせられます。オイル交換や点検の時期をアプリから案内できれば、お客様は自分で管理しなくても済み、必要なタイミングで来店してもらえます。
- ポイントで再来店の動機をつくる
- メンテナンス時期の案内で来店を促す
- 会員だけの案内で特別感を伝える
- 来店履歴を活かした提案につなげる
こうした機能を通じて日々ゆるやかにつながっておくことで、お客様との関係が途切れにくくなります。つながりが保たれるほど、他店へ流れにくくなるのです。
日々の接点をつくる工夫
アプリの強みは、来店していないときにもお客様と接点を持てる点にあります。季節に応じた洗車の案内や、点検時期のお知らせなど、役立つ情報を適度に届けることで、店の存在を思い出してもらえます。ただし通知が多すぎると煩わしく感じられるため、頻度への配慮が欠かせません。
押し付けにならない範囲で、お客様の役に立つ情報を届ける姿勢が信頼につながります。日々の接点は、次の来店へと静かに背中を押す役割を果たします。
導入と運用のハードルを下げる
アプリと聞くと難しく感じるかもしれませんが、既存の仕組みを活用すれば一から開発する必要はありません。大切なのは、現場のスタッフが無理なく案内でき、お客様が簡単に登録できることです。導入の入口が複雑だと、せっかくの仕組みも広がりません。
まずは登録の声かけを日々の業務に組み込み、少しずつ会員を増やしていく進め方が現実的です。運用しながら改善を重ねることで、自店に合った活用の形が見えてきます。
スタッフの巻き込みが定着の鍵
アプリの活用は、現場のスタッフが動かなければ広がりません。給油や洗車の合間に、自然な形で登録を案内できるよう、声かけの流れを共有しておくことが大切です。スタッフが仕組みの狙いを理解していれば、案内にも説得力が生まれます。
会員が増え、再来店の手応えが見えてくると、現場のやりがいにもつながります。みんなで育てていく意識が、常連客を増やす取り組みを長く続ける力になります。
自店に合った活用を見つける
アプリの活用といっても、立地やお客様の層によって効果的な使い方は異なります。通勤利用の多い店と、週末利用が中心の店とでは、案内の内容も変わってきます。他店のやり方をそのまま持ち込むのではなく、自店の実情に合わせて調整することが欠かせません。
どのように始め、どう運用するか迷ったときは、業界に詳しい専門家に相談し、自店に合った形を一緒に描くことをおすすめします。外からの視点が入ることで、自店の強みや改善の糸口が見えてくることもあります。
他店の事例をそのまま持ち込んでもうまくいかないのは、来店の頻度も客層も立地も違うためです。自店のお客様が、月に何回来ているのかを先に確かめてください。その頻度が、設計の出発点になります。
最初の関門は、入れてもらうこと
アプリの取り組みでつまずくのは、機能の中身ではなく入れてもらう場面です。給油の数分のあいだに、その場で操作してもらう必要があります。次の点を、始める前に詰めてください。
- どの場面で声をかけるか(給油中か、会計時か)
- 何と言って勧めるか(言い方を全員で揃える)
- 操作にどれくらいかかるか、実際に測ったか
- その場で手伝えるのか、案内だけ渡すのか
- 断られたとき、どう引くか
三つ目は必ず測ってください。五分かかる手順なら、給油の合間には終わりません。長ければ、その場で入れてもらうのは諦めて、後で入れてもらう形を考えることになります。
五つ目も決めておいてください。断られたときに食い下がると、その方は次から来にくくなります。「またご興味があればお声がけください」で終える。これを全員で揃えておけば、無理な勧め方は起きません。
入れた後に使われなくなる理由
入れてもらっても、しばらくすると使われなくなることがあります。よくある原因は次のとおりです。
- 使う場面が、来店時の一瞬しかない
- 開くのに手間がかかる(毎回の入力が必要など)
- 通知が多すぎて、切られている
- 逆に、何も届かないので存在を忘れられている
- 貯まったものを使う機会がないまま時間が過ぎた
三つ目と四つ目は、両極端ですがどちらもよく起こります。頻度を決めて、その頻度を守ってください。思いついたときに送る運用だと、多い月と何もない月ができます。月に何回、と決めておくほうが結果的に読まれます。
五つ目については、貯まる速さと使える機会の釣り合いです。何年かかっても使えないなら、貯める意味を感じてもらえません。逆に簡単に貯まりすぎても、こちらの負担になります。自店の来店頻度に合わせて設計してください。
従業員が使えていないと広がらない
お客様に勧める側が、その中身を理解していなければ勧められません。次のことを確かめてください。
- 従業員自身が、実際に入れて使ってみたか
- よく聞かれる質問に、その場で答えられるか
- 操作に困っている方を、手伝えるか
- 勧めた結果を、本人が知る機会があるか
一つ目は、始める前に必ず済ませてください。使ったことのないものを勧めるのは、誰にとっても難しいことです。実際に入れてみれば、どこで迷うかも分かります。その気づきが、そのままお客様への案内に活きます。
四つ目は、続けてもらうために重要です。「今月は何件増えました」と伝えるだけで、勧める側の姿勢が変わります。数字を共有せずに「勧めてください」とだけ言い続けると、やがて形だけになります。
何を見て、続けるかどうかを決めるか
この取り組みは、費用も手間もかかります。続けるかどうかを判断するために、次を見てください。
- 入れてくれた方の数(累計ではなく、月ごとの増え方)
- そのうち、実際に使っている方の割合
- 使っている方の来店の頻度が、そうでない方と違うか
- 案内を出した後に、来店が動いたか
三つ目が、この取り組みの効果を最も直接に示します。入れている方の来店が多いなら、それがアプリのおかげなのか、もともとよく来る方が入れてくれただけなのかは断定できません。それでも、差があるかないかを知っておく意味はあります。
四つ目については、案内を出した日と、その後数日の来店を並べて見てください。動きが見えないなら、内容か、届け方か、時期のどれかを変える余地があります。変えたら、また同じように見る。この繰り返しが取り組みを育てます。
なお、お客様の連絡先や来店の履歴を預かる以上、その情報を誰がどう扱うかを決めてから始めてください。会員アプリで来店データを集めるもあわせてご覧ください。
入れてもらえない方をどう扱うか
どれだけ勧めても、入れない方は一定数います。地域によっては、そちらが多数派ということもあります。この方々を切り捨てないでください。
- 紙の会員証など、別の形を残しておく
- 店頭での案内を、アプリだけに寄せない
- 特典の内容に、大きな差をつけすぎない
- 操作が難しいのか、そもそも必要を感じていないのかを聞いてみる
三つ目は、判断の分かれるところです。差をつけなければ入れる動機が生まれませんが、差が大きすぎると入れない方に不公平感が残ります。長く通ってくださっている方が損をする形にはしないでください。
四つ目については、聞いてみると案外はっきりした答えが返ってきます。「機械が苦手」なのか「今のままで困っていない」なのかで、打つ手が違います。前者なら手伝う形を厚くし、後者なら勧め方そのものを見直すことになります。
やめるときのことも考えておく
取り組みが合わなかった場合、あるいは仕組みを別のものに替える場合に備えて、次を確かめておいてください。
- 契約をどう終えられるのか
- お客様の情報を、どういう形で引き出せるのか
- 貯まっているものを、どう扱うのか
- お客様に、いつどう伝えるのか
三つ目は、後回しにできない問題です。貯めていただいたものを一方的に無効にすれば、その方との関係が終わります。使い切っていただく期間を設けるなど、扱いを決めてから告知してください。
二つ目については、始める時点で確かめておくべきことです。情報を持ち出せない仕組みだと、実質的にその事業者から離れられなくなります。この点は、承継や売却の場面でも効いてきます。お客様との関係が、自社の資産として残る形になっているかどうかです。
何を届けると読まれるか
案内の中身は、値引きの告知ばかりになりがちです。それだけだと、値引きのないときは読まれなくなります。次のような内容を混ぜてください。
- 時期に応じた車の手入れの目安(季節の変わり目など)
- 店の混みやすい時間帯、空いている時間帯
- 設備の点検などで、営業に影響がある日の予告
- 取り扱いを始めたものの案内
- 地域の道路や催しに関わる、来店に影響する情報
二つ目と三つ目は、お客様にとって実際に役立つ情報です。混む時間を避けたい方は多く、こうした案内は歓迎されます。そして、こういう内容が混ざっていると、値引きの案内も読まれるようになります。
五つ目については、その地域にいる店だからこそ届けられる情報です。全国どこでも同じ内容の案内には、この店から届く意味がありません。手間はかかりますが、ここが差になります。
まとめ
会員アプリの活用は、給油だけの関係を一歩進め、常連客を増やす有効な手立てです。ポイントで再来店を促し、会員機能でメンテナンス時期を案内し、日々の接点を保つことで、お客様との関係が途切れにくくなります。
導入や運用のハードルは、既存の仕組みの活用と現場の巻き込みで下げられます。自店に合った活用の形に迷ったときは、一人で抱え込まず、業界に精通した専門家の伴走を得ながら、無理のない一歩から始めていきましょう。