目的の違う2つの制度
解体業許可は自動車リサイクル法に基づくもので、適正な処理を確保するための制度です。
古物商許可は古物営業法に基づくもので、盗品の流通を防ぐための制度です。所管も、審査の観点も、まったく異なります。
したがって、解体業許可を持っていても、古物営業にあたる行為をするなら別に許可が必要になります。逆も同じで、古物商許可があっても解体はできません。
どこからが古物営業にあたるのか
おおまかな考え方として、一度使用された物を買い取って、また売るという行為が対象になります。解体・リサイクル業の現場に当てはめると、判断が分かれるのは次のような場面です。
取り外した中古部品を売る
解体して取り出した部品を、他社や個人へ販売する。この形は古物営業にあたると整理されるのが通常です。
整備工場への卸売、部品検索ネットワークを通じた販売、自社ECでの小売、いずれも同様に考えられます。
解体せずに車をそのまま転売する
引き取った車を、まだ使えるものとして中古車のまま売る。これは中古自動車の売買にあたります。
「解体するつもりで引き取ったが、状態が良かったので中古車として販売した」という流れは実際にあります。この場合、使用済自動車としての処理と中古車としての流通で、手続きも法律の扱いも変わります。
スクラップとして素材で売る
鉄やアルミを素材として売る行為は、中古品の売買とは性質が異なります。ただし雑品の中に使える部品が混在する場合など、境目が曖昧になることがあります。
輸出する
買い取った中古部品や中古車を海外へ販売する場合も、国内で買い取る行為が伴う以上、同様に考える必要があります。
迷ったら取得しておく
実務上の結論を申し上げると、中古部品を扱う可能性が少しでもあるなら、取得しておくほうが安全です。
理由は3つあります。
- 取得の負担が、解体業許可に比べれば軽い
- 持っていないことが後で問題になった場合の影響が大きい
- 取引先から確認されることがある
3つ目は見落とされがちです。整備工場や部品商が仕入先を選ぶ際、許可の有無を確認する場面があります。持っていないことが、取引の障害になることがあります。
取得したら台帳を付ける
許可を取れば終わりではありません。取引の記録を残す義務があります。ここが実務の負担になります。
解体・リサイクル業の現場では、次の点に注意が必要です。
- 誰から仕入れたかの確認:個人から車や部品を買い取る場合、相手方の確認が求められます。
- 記録の保存:一定期間の保存が必要です。紙の帳簿でも構いませんが、点数が多い業態では管理しきれなくなります。
- 在庫システムとの連携:販売管理と別に台帳を付けていると二重入力になります。最初から一体で設計するほうが続きます。
台帳が付いていない状態は、承継やM&Aの調査で必ず指摘されます。管理体制の問題として、会社全体の評価に影響します。
怪しい持込みを断る基準
制度の趣旨は盗品の流通防止です。実務でも、疑わしい持込みは実際にあります。
次のような場合は、確認を徹底するか、断る判断が必要です。
- 所有者と持ち込んだ人が一致せず、事情の説明が曖昧
- 書類が揃わないのに急いで引き取ってほしいと言われる
- 車体番号が判読できない、または加工された形跡がある
- 相場からかけ離れた条件を提示される
断る基準を文書にして、現場の全員が同じ判断をできるようにしておく。社長が不在のときに判断を迫られる場面を想定してください。
承継のときの扱い
古物商許可も、受けているのは会社という法人です。株式が移っても許可自体は残ります。ただし役員が変われば変更の届出が必要です。
個人事業として許可を受けている場合は事情が異なります。個人の許可は引き継げないため、後継者が新たに取得する必要があります。法人化を検討する理由の一つになります。
事業譲渡の場合も、買い手が自分で取得することになります。解体業許可と併せて、取得に要する期間を逆算しておいてください。
取引先から確認される場面
許可の有無が実際に問われるのは、次のような場面です。
- 整備工場や部品商が、新規の仕入先として審査するとき
- 部品検索ネットワークやECモールに出店するとき
- 自治体の入札に参加するとき
- 保険会社や大手事業者と取引を始めるとき
取引の規模が大きい相手ほど、自社のコンプライアンスの観点から仕入先を確認します。許可がないことが、取引の入口で断られる理由になり得ます。
この業界では、長年の関係で取引が続いてきた面があります。しかし世代が変わり、相手方の担当者が代わると、あらためて確認されることがあります。
台帳を続けられる形にする
取得後に最も苦労するのが記録の継続です。日々の取引に紛れて後回しになり、気づけば数か月分が溜まっている。よくある状態です。
続けるための工夫を挙げます。
- 販売管理と一体にする:別々に付けていると必ず片方が滞ります。売上の入力が台帳の記載を兼ねる設計にします。
- 入力する人を決める:全員がやる仕組みは、誰もやらない仕組みになりがちです。
- その場で記録する:事務所に戻ってからでは思い出せません。現場で端末に入力できる形にします。
- 月に一度、抜けを点検する:溜めてから探すより、こまめに見るほうが早く済みます。
この運用は、承継の際にそのまま会社の価値になります。買い手が最初に見るのは、こうした日常業務が回っているかどうかです。
※ 古物営業にあたるかどうかの判断は、取り扱う物や取引の形態によって異なります。個別の判断は所管の警察署および専門家にご確認ください。