金額で語ると何が起きるか
相場に連動する事業では、売上金額が事業の実力を表しません。
例えば次の2つのケースは、金額だけ見れば同じです。
- 処理台数が2割減り、相場は横ばい
- 処理台数は横ばいで、相場が2割下がった
しかし中身はまったく違います。前者は事業が縮小しています。後者は外部要因のなかで量を維持したということです。
金額だけで説明すると、後者の会社が不当に低く評価されます。これは金融機関との折衝でも、承継の交渉でも同じです。
量で示すべき指標
この業態で使える指標を挙げます。
- 処理台数:月別、年別。事業の最も基本的な規模です。
- 取扱トン数:品目別に。鉄、非鉄、それぞれの推移。
- 1台あたりの回収量:解体の精度が表れます。
- 部品の出庫点数:部品事業の量。
- 入庫元の件数:仕入ルートの広がり。
- 稼働率:設備や人の使われ方。
これらは相場に影響されません。だからこそ、事業の実力を示す材料になります。
量と単価に分けて説明する
実務で最も説得力があるのは、売上の変動を量の要因と単価の要因に分解して示すことです。
例えばこう説明します。
- 売上は前期比で2割減少した
- そのうち、単価の下落による影響が大部分を占める
- 処理台数と取扱トン数は前期並みを維持している
- したがって事業の量は縮小していない
この説明ができるかどうかで、相手の受け止め方が変わります。金融機関に対しても、買い手に対しても同じです。
逆に「相場が悪かったので」という言葉だけでは、言い訳に聞こえます。数字で分解して示すことが必要です。
記録がなければ語れない
ここが実務の壁です。トン数と台数を記録していない会社は、この説明ができません。
売上金額は会計上必ず記録されます。しかし量は、意識して残さなければ後から遡れません。
今から始めるべき記録を挙げます。
- 月別の入庫台数(引取元の区分も)
- 月別の解体台数
- 品目別の出荷トン数と、その平均単価
- 部品の出庫点数と金額
- 期末の在庫量(品目別のトン数)
いずれも日々の伝票から集計できるものです。難しいのは仕組みを作ることではなく、続けることです。
月次の締めの作業に組み込んでください。1枚の表に毎月追記するだけで、3年たてば強力な資料になります。
承継・M&Aでどう効くか
買い手が知りたいのは、「この会社は今後も同じだけ処理できるのか」です。
相場は買い手にも読めません。だから買い手が見るのは、相場に左右されない部分です。
- 台数とトン数の推移が安定しているか、伸びているか
- 入庫元が分散しているか、特定の1社に依存していないか
- 設備と人の稼働に余裕があるか(伸ばせる余地があるか)
- 歩留まりが同業と比べて劣っていないか
これらを数字で示せる会社は、交渉で有利になります。「なんとなく順調です」では、買い手は評価できません。
金融機関との関係でも同じ
個人保証を外したい、設備投資の融資を受けたい。こうした場面でも、量で語ることが効きます。
相場が下がって単年度の利益が落ちた期でも、「量は維持しており、相場が戻れば利益も戻る」と説明できれば、判断が変わり得ます。
そのためには、平時から資料を出しておく必要があります。悪い期にだけ言い出しても、後付けの言い訳に見えます。
社内でも効く
最後に、社内への効果を挙げます。
相場が下がった月に「今月は売上が悪かった」とだけ伝えると、現場は無力感を覚えます。自分たちの努力と関係のないところで評価されるからです。
一方、「単価は下がったが、台数は前年を上回った」と示せば、努力が認められます。そして次に何をすべきかも見えます。
量の指標は、現場が動かせるものです。だからこそ、共有する価値があります。
1枚の表から始める
難しい仕組みは要りません。次のような表を月次で埋めていくだけです。
- 年月
- 入庫台数
- 解体台数
- 鉄の出荷トン数と平均単価
- 非鉄の出荷トン数と平均単価(主要品目のみ)
- 部品の出庫点数と金額
- 期末在庫のトン数
すべて既存の伝票から集計できます。月次の締め作業に組み込めば、追加の手間はわずかです。
3年分たまると、季節性も、傾向も見えます。そこから初めて「量は伸びているのか」という問いに答えられるようになります。
比べる相手を持つ
自社の数字だけを見ていると、水準が高いのか低いのか分かりません。
比較の材料としては、次のようなものがあります。
- 自社の過去(3年前と比べてどうか)
- 1台あたりの回収量(同業者や出荷先に一般的な水準を聞く)
- 業界団体が公表している統計
- 設備の能力に対する稼働率
2番目が実務的に有効です。出荷先は多くの事業者から受け入れているため、「うちの品位や回収量は他と比べてどうですか」と聞けば、率直な答えが返ってくることがあります。改善の起点になります。
※ 指標の設計は事業構成によって異なります。自社にとって意味のある指標を選んでご活用ください。