2つのリスク
暑さは、2つの意味で経営リスクです。
① 健康被害
熱中症は命に関わります。屋外で、重量物を扱い、保護具を着けての作業。条件が揃っています。
そして事故が起きれば操業が止まり、承継の場面でも問われます。
② 離職
より頻繁に起きるのがこちらです。夏を越せずに辞める。あるいは夏の経験を理由に、翌年の前に辞める。
この業界は採用が難しいため、1人辞めることの損失が大きいのです。
設備でできること
日陰を作る
最も基本的で効果があります。
- 作業場所に屋根、テント、シェードを設置する
- 休憩できる日陰を複数箇所に作る
- 重機のキャビンの空調を維持する(故障を放置しない)
3番目を軽視しないでください。空調の壊れた重機で夏の作業をさせるのは、危険であると同時に離職の原因になります。
空調服と冷却用品
- 空調服の支給(消耗品なので継続的に)
- 冷却タオル、保冷剤
- 通気性のよい作業服
費用は1人あたりで見れば大きくありません。会社が用意することに意味があります。「自分で買え」では配慮が伝わりません。
休憩室
- エアコンが効く
- 座れる、横になれる
- 冷たい飲み物がある
- 作業場所から近い
4番目が実務で効きます。遠ければ休憩に行きません。移動時間が惜しいと感じて我慢します。
水分と塩分
- 飲み物を会社が用意する(水、経口補水液、塩分タブレット)
- 作業場所の近くに置く
- いつでも飲める状態にする
運用でできること
設備より即効性があり、費用がかかりません。
作業時間を組み替える
- 始業を早め、暑い時間帯を避ける
- 最も暑い時間帯は、屋内や日陰の作業に充てる
- 重量物を扱う作業は午前に集中させる
- 昼休みを長く取る
2番目が現実的です。部品の検査、撮影、データ登録、清掃といった屋内でできる作業を、暑い時間帯に回す。工程の組み替えだけで負担が変わります。
休憩を制度にする
「疲れたら休め」では休みません。周りが働いているなかで自分だけ休むのは、心理的に難しいものです。
- 時間を決めて全員で休む
- 一定時間ごとに強制的に休憩を入れる
- 気温が一定を超えたら休憩を増やす
制度にすることが要点です。個人の判断に委ねると、我慢する人が出ます。
1人作業をさせない
熱中症は、本人が異常に気づけないことがあります。
- 暑い時期は、複数人で作業する
- 1人で作業する場合、定期的に声をかける
- 互いに様子を見る習慣をつくる
倒れた人を早く発見できるかどうかが、結果を左右します。
異常に気づく体制
次の兆候を全員が知っている状態にしてください。
- 汗が出なくなる
- 受け答えがおかしい
- ふらつく、動きが鈍い
- 頭痛、吐き気を訴える
- 顔色が悪い、または異常に赤い
そして発見したときの手順を決めて掲示してください。
- 涼しい場所へ移す
- 衣服を緩め、体を冷やす
- 水分と塩分を取らせる(意識がある場合)
- 受け答えがおかしい、水を飲めないなら救急を呼ぶ
- 1人にしない
4番目の判断基準を明確にしてください。「様子を見よう」で手遅れになるのが最も避けたい展開です。
高齢者と新人に注意する
リスクが高いのは次の人たちです。
- 高齢の従業員:暑さを感じにくく、水分を取る量が少なくなりがちです。
- 入ったばかりの人:暑さに慣れていない。無理をしがちです。
- 持病がある人:服薬している場合は特に。
- 休み明けの人:連休明けに発生しやすくなります。
2番目に注意してください。新人は「弱いと思われたくない」と我慢します。声をかけ、休ませる側から促す必要があります。
採用と定着への効果
暑さ対策は、負担を減らすだけでなく採用にも効きます。
- 求人票に具体的な対策を書ける(空調服支給、休憩室にエアコン)
- 見学のときに示せる
- 働いている人が家族に説明できる
- 辞めない実績が積み上がる
1番目が意外に効きます。「屋外作業」という条件に、対策が併記されているかどうかで応募者の受け止め方が変わります。
そして承継の場面でも、労働環境への配慮と労災の記録は必ず確認されます。今年の夏に手を打った記録が、数年後に効いてきます。
記録を残す
対策を講じたら、記録してください。労務管理の面でも、承継の場面でも材料になります。
残す内容を挙げます。
- 実施した対策とその時期(設備の導入、支給品)
- 作業時間の変更を決めた文書
- 休憩のルール
- 教育を行った記録(熱中症の兆候と初動)
- 体調不良が発生した場合の内容と対応
5番目を隠さないでください。発生したこと自体より、その後どう対応したかが見られます。対応の記録がある会社は、管理体制があると評価されます。
逆に「何も起きていない」と説明しても、記録がなければ確認できません。ヒヤリハットとして残しておくことが、体制の証明になります。
※ 熱中症の予防と対応については、関係機関の最新の情報をご確認ください。体調に異常がある場合は、速やかに医療機関へご相談ください。