2つの方法

① 車上作動処理

エアバッグを車体に取り付けたまま、専用の器具を使って作動させる方法です。作動させてしまえば、その後は通常の解体作業の中で扱えます。

この方法を行うには、所定の講習を受けた人が、定められた手順で作業する必要があります。安全を確保するための距離、周囲への配慮、作動後の確認といった手順が定められています。

② 取り外して回収

未作動のまま取り外し、回収する方法です。取り外したものは所定の流れで引き渡されます。

この方法では作動させないため、暴発のリスクを常に意識した取り扱いが求められます。保管中も同じです。

どちらを選ぶか

判断の材料を整理します。

車上作動処理が向く場合

  • 処理台数が多く、1台あたりの時間を短縮したい
  • 作動音や周囲への影響が問題にならない立地である
  • 講習を受けた人を複数確保できる

作業としては早く済みます。ただし作動音が発生するため、住宅が近い立地では近隣への説明が要る場合があります。

取り外し回収が向く場合

  • 作動音を出せない立地である
  • 処理台数がそれほど多くない
  • 保管場所を適切に確保できる

音は出ませんが、未作動のものを社内に保管することになります。保管の管理が新たな課題になります。

実務では、両方を状況に応じて使い分けている会社もあります。

安全上の注意

どちらの方法でも、次は共通します。

  • 作業する人を限定する:誰でも触ってよいものではありません。担当を決めます。
  • 手順を文書にする:口伝えでは抜けが生じます。写真付きで残してください。
  • 保護具を使う:目と手の保護は最低限です。
  • 作業中に他の人が近づかないようにする:区画を分けるか、時間を分けます。
  • 作動済みかどうかを見分ける:事故車では、既に作動しているものと未作動のものが混在します。

最後の点が実務では厄介です。外観だけで判断できないことがあります。判断に迷うものは未作動として扱う、という原則にしておくのが安全です。

未作動のものを保管するとき

取り外し回収を選ぶ場合、保管の管理が必要になります。

  • 他の可燃物と離れた場所に置く
  • 衝撃が加わらない置き方をする
  • 高温になる場所を避ける
  • 誰でも触れる場所に置かない
  • 数量を把握し、引渡までの期間を短くする

最後の点を軽視すると、気づけば相当な数量が溜まっているという状態になります。定期的に引き渡す運用にしてください。

記録として残すこと

処理した記録は、移動報告とあわせて残ります。行政の確認では次が見られます。

  • 処理台数と、エアバッグ類の処理数の整合
  • 作動処理を行う人の講習の受講状況
  • 取り外し回収の場合、保管状況と引渡の記録

1つ目に注意してください。処理した台数に対して、エアバッグ類の処理が明らかに少ないと、適切に処理されていないのではないかと疑われます。エアバッグが装備されていない古い車もあるため一律ではありませんが、説明できる状態にしておいてください。

人が入れ替わるときが危ない

この作業は、担当者が固定されがちです。長く同じ人がやっていると、手順が本人の頭の中にしかない状態になります。

その人が辞めたとき、休んだとき、あるいは新しい人が入ったとき。事故はこのタイミングで起きます

次の3つを整えておいてください。

  1. 手順を写真と動画で記録する
  2. 講習を受けた人を複数確保する
  3. 新しい人には、必ず経験者が付いて作業させる期間を設ける

これは安全のためであると同時に、承継の場面でも評価される部分です。危険を伴う作業が属人化していない会社は、それだけで買い手の安心材料になります。

事故車が入ってきたときの手順

最も判断が難しいのが事故車です。作動済みのものと未作動のものが混在し、外観では判別しきれません。

実務としては、次の順序をお勧めします。

  1. 車両を作業区画に入れる前に、外観で作動の有無を確認する
  2. 判断がつかないものは「未作動」として扱う印を付ける
  3. バッテリーの端子を外し、一定時間おく
  4. 担当者が手順に従って処理する
  5. 処理した内容を記録する

3つ目を省略しないでください。電源が残った状態での作業は避けるべきです。

また、大きな衝撃を受けた車では、内部で損傷している可能性があります。取り扱いをより慎重にし、無理な力を加えないでください。

他の危険部材と一緒に考える

エアバッグ類は、この業態で扱う危険部材のひとつです。同じ考え方が要るものを並べます。

  • 未作動のエアバッグとインフレーター
  • 駆動用リチウムイオンバッテリー
  • 燃料と廃油
  • 高圧の冷媒容器

いずれも担当を限定し、手順を文書化し、保管場所を分け、教育の記録を残すという対応が共通します。

これらをばらばらに管理していると抜けが生じます。「危険部材の取り扱い」として1つの手順書にまとめ、年に一度見直す。この形にしておくと、人が入れ替わっても安全の水準が保てます。

※ 作業の手順、必要な講習、記録の様式は制度の運用によって異なります。実際の作業は所定の手順に従い、詳細は関係機関へご確認ください。