同じ県内に二つの別の市場がある

飛騨は積雪が多く山道が続き、四輪駆動やスタッドレスが前提の土地です。美濃は平野が広がり、名古屋への通勤で高速道路を日常的に使う顧客がいます。

走行距離も、傷む部位も、車の選び方も違います。県全体で語ると、どちらの実態からもずれた説明になります

自社の顧客がどの市町から来ているか、通勤で県外へ出る顧客がどれだけいるか。この分布を整理しておくことが、承継の説明の出発点になります。

以下は岐阜の商圏に即した内容です。承継の方式の選び方や企業価値の見方といった土台の部分は、自動車整備工場の事業承継自動車整備工場のM&Aをあわせてご覧ください。

飛騨側で問われる冬の備え

積雪期が長い地域では、スタッドレスへの入れ替えと保管、バッテリーと始動系の点検が季節の定番になります。山道を走る顧客にはブレーキと駆動系の負荷も加わります。

この季節の型は、毎年同じ順番で回っています。いつ、どの顧客に、何を勧めてきたか。この年間の型が引き継がれないと、代替わりの年に売上が落ちます

タイヤを何本預かっているか、保管顧客の車検継続率はどうか。手間のかかる仕事が収益にどう効いているかを、数字で確かめておく価値があります。

岐阜運輸支局での手続の見通し

認証工場・指定工場の届出は、中部運輸局の管轄下で行います。承継の方法によって、届出で済むのか取り直しが必要になるのかが変わります。

会社を存続させる形(株式譲渡や親族内・社内承継)であれば、事業者としての同一性が保たれるため手続きは比較的シンプルです。事業だけを譲る形では、新たに取得し直す必要が生じる場合があります。

指定工場では設備や整備主任者の要件も関わってきます。制度や運用は変わることがありますので、実際の可否は管轄の窓口と専門家に確認しながら進めてください。

美濃側で効く高速道路の日常使い

名古屋方面へ通う顧客は走行距離が伸びやすく、点検の周期も地元中心の顧客とは変わります。高速走行が多いぶん、タイヤや足回りの見方も違ってきます。

同じ工場の中に、飛騨型と美濃型の顧客が混ざっていることもあります。その場合、二つの型を使い分けていることが強みになります。

地元中心の顧客と長距離を走る顧客の比率を整理しておくと、入庫の中身が具体的に伝わります。台数だけを示すより、実態が届きます。

観光で通る車と地元の車

白川郷や下呂、高山といった観光地を抱え、県外から来る車が通ります。幹線沿いの工場では、移動中の不調による飛び込み対応が一定数あります。

冬季は雪道に不慣れな県外車のトラブルも持ち込まれます。この対応は突発的で読みにくい一方、地域で頼られる工場かどうかを分ける場面でもあります。

年にどれだけの件数があり、どう対応してきたか。記録が残っていれば、それは地域での位置づけを示す材料になります

後継者がいない場合に取りうる道

岐阜県の整備工場も、後継者の問題と無縁ではありません。帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」では、全国の後継者不在率は50.1%でした。7年連続で改善しているとはいえ、まだ2社に1社です。小規模企業に絞ると57.3%となります。

日本自動車整備振興会連合会の「自動車特定整備業実態調査」(2025年度)では、全国の事業場数は92,251、うち指定工場は29,810で、事業場数は4年ぶりに減りました。整備要員は402,367人、その平均年齢は47.7歳(自家用を除く)です。美濃側では名古屋圏への通勤が採用の競合を生み、飛騨側では母数そのものが限られます。同じ調査では、整備要員の平均年収は442万8,900円で前年度より4.0%上がりました。人の確保にかかる負担は年々重くなっています。

第三者への譲渡なら、認証や指定、顧客、整備士の雇用も、まとめて引き継いでもらえる可能性があります。飛騨側では、冬に車を見てもらう先が地域から一つ減ることの重みもあります。廃業と譲渡の両方で比べたうえで判断してください。

まとめ

岐阜の整備工場は、豪雪の飛騨と通勤圏の美濃という、条件のまったく違う二つの市場のどちらかに立っています。県全体では語れません。

承継を考えるなら、顧客の市町別分布、冬の季節の型とタイヤ保管の効き方、運輸支局での手続の見通し、地元中心と長距離の顧客比率、観光の飛び込み対応の記録。この5つを整理しておくことが準備になります。

よくある質問

Q. 飛騨と美濃で事情が違い、説明に迷います。 A. 県全体ではなく、自社の顧客がどの市町から来ているかで示すのが分かりやすい方法です。分布を整理すれば、どちらの市場に属しているかが客観的に伝わります。相手も判断しやすくなります。

Q. タイヤ保管の手間が重く、続けるべきか迷っています。 A. 保管顧客とそうでない顧客で車検の継続率を比べてみてください。差が出ているなら、それは保管が顧客をつなぎ留めている証拠になります。手間の対価がどこに表れているかを確かめる価値があります。

Q. 冬に県外車のトラブル対応が増えます。収益になりますか。 A. 単発が多く読みにくい部分ですが、年にどれだけの件数をどう対応してきたかの記録が残っていれば、地域で頼られている証拠になります。対応力として示せる材料です。