定期会員モデルとは何か

定期会員モデルとは、顧客に毎月一定の料金を支払ってもらい、その対価として洗車や点検などのサービスを継続的に提供する仕組みです。近年、さまざまな業種で広がっているサブスクリプションの考え方を、ガソリンスタンドのサービスに取り入れたものといえます。

その都度の支払いに頼る従来の形と異なり、会員である限り継続して収益が生まれます。顧客にとっては、決まった料金で必要なサービスを気軽に受けられる利点があります。店舗と顧客の双方にとって、関係を長く保ちやすい仕組みです。

従来の商売では、来店してもらって初めて売上が生まれます。天候や季節によって来店が落ち込めば、収入も揺らぎます。定期会員モデルは、この不安定さを和らげる仕組みです。来店の有無にかかわらず一定の収入が見込めるため、経営の土台が安定します。日々の売上に一喜一憂するのではなく、腰を据えて店舗づくりに取り組めるようになる点が、この仕組みの大きな魅力です。

どんなサービスを会員制にするか

会員制になじみやすいのは、繰り返し必要とされるサービスです。代表的なものを挙げると、次のような分野が考えられます。

会員制と相性のよいサービス

  • 洗車:定期的に利用され、習慣になりやすい
  • オイル交換:一定の期間ごとに必要になる
  • 点検:安心のために継続して受けたい

これらは、いずれも繰り返しの需要があるサービスです。会員になれば気兼ねなく利用できるため、来店の頻度が高まりやすくなります。まずは需要の高いサービスから会員制を設計し、手応えを見ながら広げていく進め方が現実的です。

継続収益がもたらす価値

定期会員モデルの最大の価値は、収益の見通しが立てやすくなることです。会員数が把握できていれば、毎月おおよそどれだけの収益が見込めるかを予測しやすくなります。売上の波に左右されにくくなり、経営の計画が立てやすくなります。

また、会員である間は継続して来店してもらえるため、顧客との関係が深まります。日頃から接点を持てれば、他のサービスへの案内もしやすくなり、一人の顧客から得られる価値が高まります。継続収益は、目先の売上だけでなく、長い目で見た顧客との関係の土台になります。

新しい顧客を集めるには、相応の労力と費用がかかります。その点、すでに関係のある会員に継続して利用してもらう方が、負担は小さく済みます。既存の顧客を大切にし、長く付き合ってもらうことが、結果として効率のよい経営につながります。会員という形で関係を明確にしておくことは、こうした顧客との結びつきを意識的に育てる仕組みでもあるのです。

会員管理の仕組みを整える

会員制を運営するには、誰がいつ加入し、どのサービスを利用しているのかを正確に把握する仕組みが欠かせません。会員の情報や利用の状況を記録し、更新や請求を滞りなく行える体制を整えることが、安定した運営の前提になります。

管理が手作業に頼っていると、会員数が増えるにつれて負担が大きくなり、ミスも起きやすくなります。会員の情報を一元的に管理できる仕組みを取り入れることで、少ない手間で正確に運営できます。加入から更新、利用の記録までを効率よく扱える体制づくりが重要です。

アプリを活用する

会員制を運営するうえで、アプリの活用は大きな助けになります。会員が自分の利用状況を確認したり、来店の予約をしたりできれば、利便性が高まります。店舗からも、会員に向けてお知らせやおすすめのサービスを届けやすくなります。

アプリを通じて日頃から接点を持てれば、会員との関係が途切れにくくなります。利用の記録がたまることで、一人ひとりに合った案内もしやすくなります。デジタルの仕組みを取り入れることは、会員制を効率よく、かつ効果的に運営するための鍵になります。

料金設計の考え方

会員制を成り立たせるには、料金の設計が要になります。料金が高すぎれば加入をためらわれ、安すぎれば採算が合わなくなります。提供するサービスの価値と、顧客が納得できる水準の折り合いを見つけることが求められます。

設計にあたっては、いくつかの料金帯を用意する方法もあります。基本的なサービスだけの手軽な会員と、幅広いサービスを含む充実した会員を分けて用意すれば、顧客が自分に合った形を選べます。継続してもらうことが前提だからこそ、無理なく続けられる水準に設計することが大切です。長く利用してもらえる料金であるほど、収益は安定します。

会員を続けてもらう工夫

定期会員モデルは、加入してもらうことよりも、続けてもらうことの方が重要です。加入したものの利用しないまま退会されては、継続収益にはつながりません。会員に価値を実感してもらい、来店を習慣にしてもらう工夫が欠かせません。

そのためには、会員だからこその満足を届けることが大切です。丁寧な応対や、会員に向けた案内、利用しやすい仕組みなど、続けたいと思ってもらえる理由を積み重ねます。日頃の接点を大切にし、会員との関係を育てることが、長く続く収益の源になります。

あわせて、どれだけの会員が継続し、どれだけが離れているのかを把握しておくことも欠かせません。退会が続くようであれば、料金やサービスの内容に見直すべき点があるのかもしれません。会員の声に耳を傾け、必要に応じて仕組みを調整していく姿勢が、長く支持される会員制を育てます。作って終わりではなく、育て続けることが、この仕組みを成功させる鍵になります。

承継・売却での評価につながる

定期会員モデルの価値は、日々の収益にとどまりません。将来、事業を承継したり売却したりする場面でも、大きな意味を持ちます。継続して収益を生む会員の存在は、事業の安定性を示すものとして評価されやすいからです。

買い手や後継者にとって、毎月一定の収益が見込める仕組みは、引き継いだ後の見通しを立てやすくする魅力です。その都度の売上に頼る事業よりも、継続する関係を持つ事業の方が、将来の価値を見積もりやすくなります。定期会員モデルを育てておくことは、事業そのものの価値を高め、承継や売却を有利に進める備えにもなります。

また、会員という形で顧客との関係が整理されていることは、引き継ぎそのものを円滑にします。誰がどのサービスを利用しているかが明確であれば、後継者や買い手は事業の実態を把握しやすくなります。属人的な関係に頼るのではなく、仕組みとして顧客とのつながりが残る点は、将来を見据えた店舗づくりにおいて大きな意味を持ちます。日々の収益と将来の価値、その両方を支えるのが定期会員モデルなのです。

専門家とともに設計する

定期会員モデルは、サービスの設計から料金、会員管理、アプリの活用、そして将来の承継まで、幅広い視点を必要とするテーマです。一人で組み立てると、料金の見立てや運営の負担で迷いが生じやすくなります。業界に詳しい専門家に相談することで、自店に合った仕組みを整理しやすくなります。

私たち株式会社フォーバルの自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化して経営の相談を承っています。相談無料・完全成功報酬・秘密厳守・全国対応で、継続収益の仕組みづくりから将来を見据えた事業の設計までご一緒します。

会員数より、やめていく速さを見る

会員モデルの数字を追うとき、最も目につくのは会員数です。増えていれば順調に見えますし、現場の励みにもなります。しかし、この数字だけを見ていると、事業の状態を読み違えます。

本当に見るべきなのは、毎月どれだけの方がやめているかです。仮に毎月新しく入る方と、やめる方が同じ数であれば、会員数は横ばいでも、新規を集める労力は毎月かかり続けます。やめる速さが変わらないかぎり、労力を止めた瞬間に会員数は落ち始めます。

ですから、会員数の推移と並べて、その月に入った数とやめた数を記録してください。この二つを分けて見ると、事業の実態がはっきりします。増えているのは新規が多いからなのか、やめる方が少ないからなのか。前者であれば足元は不安定で、後者であれば基盤ができつつあるということです。

やめる理由の多くは、不満ではなく忘却

解約が出ると、サービスの内容に問題があったのではないかと考えがちです。もちろんそれもありますが、実際に多いのは、使わなくなったから、という理由です。生活が変わって来店の機会が減り、使っていないのに毎月引き落とされていることに気づいて、やめる。この経路が最も多いのです。

これは裏返すと、来店が途切れた時点で解約はほぼ決まっているということです。解約の申し出があってから引き止めても、そのときにはもう遅い。手を打つべきなのは、来店が空き始めた段階です。

ですから、会員の来店の間隔を見ていられる仕組みを持ってください。しばらく来ていない方に一声かける、期限が近いことを知らせるといった働きかけは、解約の申し出を受けてから何かをするより、はるかに効きます。ここに手が回らないのであれば、会員数を増やす前に、その体制を先に整えるべきです。

既存のお客さまが移ってきただけ、という状態を避ける

会員モデルを始めると、まず入ってくださるのは、もともとよく来ている方です。これは自然なことですが、注意も要ります。それまで都度払っていた方が会員に移った場合、その方から得る額は、増えるとは限らないからです。

会員価格が都度の価格より割安であれば、同じ利用でも売上は下がります。会員数は増え、継続収益の形は整ったのに、月々入ってくる額は以前より少ない、ということが起こりえます。

この見極めのために、始めてしばらくは、会員の方の利用が以前と比べてどう変わったかを追ってください。利用が増えて総額も増えているのであれば成功です。利用が同じで額だけ下がっているのであれば、料金の設計を見直す必要があります。会員制の導入そのものが目的にならないよう、この確認は早い段階で行ってください。

お金と個人情報を預かる責任が発生する

会員制にすると、お客さまの連絡先や車両の情報、そして支払いに関わる情報を、継続的に預かることになります。都度の現金取引では発生しなかった責任です。

管理の方法は、扱う情報の種類や決済の仕組みによって求められる水準が変わります。自社で何をどこまで保持するのか、外部の仕組みに任せる部分はどこかを整理し、決済を扱う事業者や専門家に確認したうえで進めてください。ここを曖昧にしたまま始めると、後から作り直すことになります。

あわせて、店内で誰がその情報に触れられるのかも決めておいてください。小規模な店ほど、全員がすべてを見られる状態になりがちです。悪意がなくても、扱いを誤れば信用を失います。会員という形で長く付き合う相手だからこそ、この点は最初に整えるべきです。

会員契約は、事業を譲るときにそのまま渡せるとは限らない

会員モデルの利点として、事業を譲るときに評価されやすいという点がよく挙げられます。継続して収益が入る形が見えるためです。この見方自体は正しいのですが、前提があります。その会員契約が、譲った後もそのまま続くことです。

契約の相手が誰になっているのか、譲渡にあたって会員一人ひとりの承諾が要るのか、決済の仕組みは引き継げるのか。これらは契約の形や譲渡の方法によって扱いが変わります。想定していたのに引き継げなかったとなれば、評価の前提が崩れます。

ですから、会員の規約や決済の取り決めを作る段階で、将来の譲渡や事業の再編を視野に入れておくのが賢明です。とはいえ、この領域は個別の事情に左右されるため、規約を整える際に、契約や事業承継の実務に詳しい専門家に一度見てもらってください。始めてから何年も経ってから直すより、最初に整えておくほうが手間もかかりません。

まとめ

定期会員モデルは、洗車やオイル交換、点検といった繰り返しの需要を会員制にすることで、継続収益を生み出す仕組みです。収益の見通しが立てやすくなり、顧客との関係も深まります。会員管理やアプリの活用、無理のない料金設計が、安定した運営の鍵になります。

続けてもらう工夫を重ねれば、会員は事業の土台になり、承継や売却の場面でも価値ある資産として評価されます。長い目で店舗の安定を築く手立てとして、検討する価値は十分にあります。まずは小さく始め、手応えを見ながら育てていく姿勢が現実的です。判断に迷うときは、業界に精通した専門家の伴走を得ながら進めてください。