商圏分析とは何か
商圏分析とは、自店を利用してくれるお客様がどの範囲に住み、どのように行き来しているのかを把握し、立地の特徴を整理することです。感覚だけに頼らず、客観的な視点で自店の置かれた状況を見つめ直すことで、これまで気づかなかった強みや課題が見えてきます。
SSは、立地によって集まるお客様の性質が大きく変わります。住宅地に近いのか、幹線道路沿いなのか、周辺にどんな施設があるのかによって、求められるサービスも異なります。だからこそ、自店の商圏を丁寧に読み解くことが、的確な打ち手の土台になります。
難しく構える必要はありません。誰がこの辺りにいて、どう動いていて、そのうちどれだけが自店に来ているのか。これを確かめる作業だと考えてください。
そして、この作業は一度で終わるものではありません。周りは動き続けますから、定期的に見直す前提で取りかかってください。
商圏人口をつかむ
まず把握したいのが、自店の周囲にどれだけの人が暮らし、どのような世代構成になっているかです。世帯の様子や年齢層の傾向は、車の利用のされ方や求められるサービスに影響します。地域の人口の動きを知ることで、これからの需要の見通しも立てやすくなります。
人口の傾向は、地域によって大きく異なります。若い世帯が多い地域と、高齢化が進む地域とでは、必要とされる配慮も変わってきます。商圏人口を把握することは、誰に向けて何を提供すべきかを考える出発点になり、無駄のない打ち手につながります。
住んでいる人だけでなく、働いている人や通っている人も含めて考えてください。日中に人が集まる場所が近ければ、住宅が少なくても需要は生まれます。
数字そのものより、その推移を見ておきたいところです。増えているのか減っているのか。方向が分かれば、先の見通しも立ちます。
競合の状況を把握する
自店の周囲にどんな競合があるかを知ることも欠かせません。近隣のSSや大手、セルフ店の位置や特徴を把握することで、自店がどこで選ばれ、どこで競り負けているのかが見えてきます。競合との違いを理解することが、独自の強みを打ち出す手がかりになります。
競合を見るときの視点
- 近隣の店の位置とお客様の流れ
- それぞれの店が提供するサービスの特徴
- 自店が優位に立てる点と弱い点
- 競合にない自店ならではの価値
競合の把握は、価格で張り合うためではなく、自店の立ち位置を見極めるために行います。相手と同じ土俵で戦うのではなく、自店にしかない価値をどう伸ばすかを考える。そのための材料として、競合の状況を客観的に整理することが大切です。
把握するときは、店の数だけでなく、それぞれが何で選ばれているかを見てください。同じ商売でも、狙っている層が違えば、直接の競合とは限りません。
そして、近隣の動きに反射的に合わせないことです。相手の事情はこちらとは違います。まず自店の数字を見てから判断してください。
交通量と動線を読む
SSにとって、前を通る車の量や流れは来店に直結する要素です。どの方向から車が来て、どの時間帯に多いのか、入りやすい立地なのかといった点を把握することで、自店の立地の強みと弱みが具体的に見えてきます。日々の観察も貴重な情報源になります。
交通量を読むときは、単に多いか少ないかだけでなく、通行する車がどんな目的で動いているかにも目を向けたいものです。通勤の流れなのか、地域内の生活の移動なのかによって、求められるサービスは変わります。動線を丁寧に読むことが、立地を生かす打ち手につながります。
量そのものより、中身が大事です。同じ台数でも、毎日通る車と、通り過ぎるだけの車では、来店につながる度合いが違います。どういう車がどの時間に通るのかを見ておいてください。
あわせて、反対車線からの入りやすさも確かめてください。入りにくければ、目の前を通っていても寄っていただけません。
分析から自店の位置づけを整理する
商圏人口、競合、交通量といった情報がそろったら、それらを組み合わせて自店の位置づけを整理します。どんなお客様に囲まれ、どんな競合のなかで、どのような流れの中に立っているのか。全体像を俯瞰することで、自店の強みと課題が輪郭を持って見えてきます。
大切なのは、集めた情報を眺めて終わらせず、自店にとっての意味を読み取ることです。強みはどこにあり、何が伸び悩みの原因なのか。この整理ができてはじめて、次に何をすべきかという打ち手の方向が定まります。分析は、行動につなげてこそ価値を持ちます。
整理した内容は、書いた形で残しておいてください。承継の場面でも、金融機関との話でも、そのまま説明の材料になります。頭のなかにあるだけでは伝わりません。
分析を打ち手につなげる
商圏分析で見えた強みと課題は、具体的な打ち手に落とし込むことで実を結びます。強みを生かすなら、それを求めるお客様に向けた発信やサービスの充実が考えられます。課題があるなら、その背景を踏まえた対応を検討します。分析は、打ち手を選ぶための羅針盤です。
打ち手を考える際は、あれもこれもと手を広げるのではなく、優先順位をつけて取り組むことが大切です。自店の立地に合った、効果の見込める施策から着実に進める。商圏分析を土台にすれば、限られた力を無駄なく振り向けることができます。
つなげるときは、一度に多くを変えないことです。一つ試して結果を見る。同時にいくつも変えると、何が効いたのか分からなくなります。
そして、打った手の結果を記録してください。何を変えて、どう動いたか。この積み重ねが、次の判断を確かなものにします。
専門家とともに立地を生かす
商圏分析は、集める情報も見るべき視点も多く、一人で進めると迷いがちです。そんなときは、業界に詳しい専門家の視点を取り入れることで、自店の立地の強みと課題を客観的に整理できます。分析から打ち手までを一緒に考えることで、着実な収益改善につながります。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化して、収益改善や経営の見直しを支援しています。自店の立地をどう生かすか迷ったときは、お気軽にご相談ください。
相談するときは、調べた内容を持っていってください。何も材料がない状態で相談するより、こちらの見立てを示したうえで意見をもらうほうが、具体的な話になります。
資料で分かることと、歩いて分かること
周辺の状況を調べるとき、資料で得られる情報には限りがあります。人口や世帯の数は分かっても、その人たちがどう動いているかは分かりません。
歩いて分かるのは、時間帯による人の流れ、入りやすさの感覚、周辺の雰囲気、通る車の速度。同じ交通量でも、通り過ぎる道なのか立ち寄る道なのかで意味がまったく違います。
だから、資料を集めたら、必ず自分の目で確かめてください。とくに、自店の前を車で通ってみることをおすすめします。日々見ている景色とは違って見えます。
自店の実績と、突き合わせる
周辺の情報だけを見ても、打つ手は出てきません。大事なのは、自店の数字と突き合わせることです。
周辺にこれだけの人がいて、実際に来ているのはこれだけ。この差が、伸びしろなのか、そもそも届いていない層なのかを考える。ここから具体的な手が出てきます。
だから、調べる前に自店の記録を整理しておいてください。どの時間帯にどれだけ来ているか、どういう方が多いか。この土台がないと、外の情報を活かせません。
近くに同業があることは、不利とは限らない
周辺を調べると、競合の存在が気になります。しかし、近くに同じ商売の店があること自体は、必ずしも不利ではありません。
その一帯が給油の場所として認識されていれば、人が集まる理由になります。問題は、価格だけで比べられる関係になっているかどうかです。
だから、見るべきは店の数より、自店が何で選ばれているかです。ここに答えがなければ、競合が少なくても安泰ではありません。
周りは、変わり続ける
一度調べて終わりにすると、数年で実態と離れます。道路ができる、大きな施設ができる、逆に閉じる、住宅が増える、人が減る。
こうした変化は、事前に分かることもあります。地域の計画、近隣で始まる工事。日頃から気にかけていれば、大きな変化には気づけます。
だから、年に一度は周辺を見て回る機会を持ってください。前と何が変わったかを確かめるだけでも、判断の材料になります。
調べすぎて、動かなくならない
情報を集め始めると、きりがありません。もっと調べてから決めよう、という状態が続き、いつまでも動き出せなくなります。
この分野の情報は、完璧に揃うことはありません。どこかで区切りをつけて、今ある材料で判断する必要があります。
だから、調べる前に何を知りたいのかを決めておいてください。この問いに答えが出たら終わり、と決めておけば、際限なく続けずに済みます。
思い込みが、覆ることがある
長く営業していると、うちのお客さまはこういう方だ、という感覚ができあがります。しかし、実際に確かめると違っていることがあります。
近隣の方が中心だと思っていたら遠方からの方が多かった、通勤の方が中心だと思っていたら日中の来店が支えていた。
この気づきが得られれば、調べた甲斐があります。感覚と実際がずれているところにこそ、打つ手が隠れています。
お客さまに、直接聞いてみる
手間のかからない調べ方として、来ている方に聞いてみるという方法があります。どこから来たのか、なぜこの店を選んだのか。
資料からは分からない答えが返ってきます。近くに勤めている、通り道だから、前に対応がよかったから。こちらが想像していた理由と違うことも珍しくありません。
改まった調査にする必要はありません。日々の会話のなかで少しずつ聞き、気づいたことを書き留めておく。これだけでも、相当の材料が集まります。
承継の場面でも使える
整理した内容は、事業を引き継ぐ場面でそのまま説明の材料になります。この立地に何があり、どういう方が来ていて、どこに伸びしろがあるのか。
相手はこの地域を知りません。だから、こちらが整理して示せるかどうかで、伝わり方が変わります。数字だけでなく、地域の事情を含めて説明できると理解が進みます。
そして、良い面だけでなく、弱い部分も書いておいてください。両方を把握している資料のほうが、信頼されます。
届いていない層に、気づく
調べていくと、周辺にいるはずなのに来ていない層が見えてきます。ここが、伸びしろの候補です。
ただし、来ていないのには理由があります。知られていない、入りにくい、必要がない、別の店を使っている。理由によって、打つ手はまったく違います。
だから、来ていないと分かったら、なぜかを考えてください。知られていないだけなら伝える方法を考えればよく、そもそも需要がないなら別の層を見るべきです。
まとめ
商圏分析は、自店の立地の強みと課題を客観的に見極め、収益改善への打ち手を導く出発点です。商圏人口、競合、交通量を把握し、それらを組み合わせて自店の位置づけを整理することが、その土台になります。
大切なのは、分析を眺めて終わらせず、優先順位をつけて打ち手につなげることです。自店の立地をどう生かすか迷ったときは、いつでもご相談ください。強みを生かす道筋を一緒に描きます。