シフト管理が難しくなる背景

ガソリンスタンドは、朝夕の混雑や天候による来店の波、季節ごとの需要の変化など、忙しさが一定ではありません。加えて、限られた人数でやりくりしているため、一人の欠員が全体に大きく響きます。こうした事情が、シフト管理を難しくしています。

その場しのぎの調整を繰り返していると、特定の人に負担が集中し、疲れやすさや不満から離職につながる悪循環に陥りがちです。シフトを場当たり的に組むのではなく、仕組みとして整えていく視点が求められます。

無理のないシフト設計から始める

効率化の出発点は、店の忙しさの波を把握し、それに合わせて人を配置することです。混み合う時間帯に手厚く、落ち着いた時間帯は最小限にといった具合に、必要な人数を見立てておくと、過不足のない配置に近づきます。感覚だけに頼らず、日々の状況を振り返る習慣が役立ちます。

あわせて、働く人の希望や事情にも目を配ることが大切です。無理のある勤務が続くと定着に響くため、店の都合と個々の事情のバランスを取りながら設計する姿勢が、長く働いてもらう土台になります。

多能工化で配置に柔軟さを持たせる

シフトが硬直しやすい大きな要因は、「この作業はこの人しかできない」という状態です。給油や洗車、レジ、点検など、複数の業務をこなせるスタッフが増えれば、誰かが休んでも他の人で補える柔軟さが生まれます。これが多能工化の狙いです。

多能工化を進めるには、日ごろから幅広い業務を経験できる機会を意識してつくることが欠かせません。一人ひとりができる仕事の幅が広がれば、シフトを組む自由度が増し、急な欠員にも慌てず対応できるようになります。

ただし、多能化には順序があります。誰にでも何でもできる状態を目指すと、どれも中途半端になります。まず「二人目ができる状態」を目標にしてください。一人しかできない業務が一つ減るたびに、シフトの自由度は目に見えて上がります。

負担を平準化して偏りをなくす

シフトを組むうえで見落とされがちなのが、負担の偏りです。頼みやすい人に忙しい時間帯が集中したり、特定の人にばかり早番や遅番が回ったりすると、不公平感が積み重なります。誰にどれだけの負担がかかっているかを見えるようにし、偏りを是正することが大切です。

負担が平準化されると、働く人の納得感が高まり、職場の雰囲気も安定します。一部の人の頑張りに支えられた運営は長続きしません。全員で無理なく支え合える配分を意識することが、持続的な体制につながります。

仕組みで属人化を防ぐ

シフト作成そのものが特定の人の頭の中だけで完結していると、その人が不在のときに立ち行かなくなります。誰が見ても状況が分かるように配置や希望を共有できる形にしておくと、担当者が代わっても混乱しにくくなります。道具に頼りすぎる必要はありませんが、情報を見える形にしておくことは有効です。

シフト管理を仕組みとして整えることは、日々の運営を安定させるだけでなく、特定の人に依存しない体制づくりにもつながります。人手不足の時代だからこそ、限られた人材を無理なく生かす工夫が問われます。

運営の安定が経営の強みになる

シフトが安定し、人が定着する店は、それ自体が経営の強みになります。特定の人に頼りきらず、無理なく回る体制は、日々の収益を支えるだけでなく、将来の事業承継やM&Aを考える際にも評価されやすい要素です。運営の土台がしっかりしている店は、引き継ぐ側にとっても安心材料になります。

私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化し、人材や運営の課題から経営全体まで幅広くご支援しています。人手不足の悩みから将来の承継まで、相談無料・秘密厳守で伴走します。

組む前に、埋めるべき枠を確定させる

シフトを組む作業が重いのは、何人必要かが毎回そのつど判断されているからです。先に枠を確定させておけば、あとは人を当てはめるだけになります。

  • 時間帯ごとに、最低何人いれば店が回るか
  • 曜日によって、その人数がどう変わるか
  • 資格や技能が必要な業務に、誰が対応できるか
  • その人が必ずいなければならない時間帯はどこか
  • 混雑する時間帯に、何人厚くするか

三つ目と四つ目が、この業種では決定的です。人数が揃っていても、必要な資格を持つ人がいなければ成り立たない業務があります。単なる頭数ではなく、誰が何に対応できるかの一覧を先に作ってください。

一つ目については、実際の忙しさから決めてください。「いつもこれくらい」で決めていると、実態とずれていきます。時間帯ごとの来店数を数週間記録すれば、根拠のある人数が出ます。

誰が組んでいるかを見直す

シフトを組む作業が社長や特定の一人に集中していると、その人の負担になるだけでなく、休めなくなります。

  • 組んでいるのは誰か
  • その作業に、毎月どれくらいの時間がかかっているか
  • その人が休んだり辞めたりしたら、誰が組めるか
  • 組むために必要な情報が、その人の頭の中だけにないか
  • 誰かの事情への配慮が、口伝えになっていないか

五つ目が、引き継ぎを難しくしている最大の要因です。「この人は水曜は無理」「この二人は組ませないほうがよい」といった事情が、記録されずに頭の中にある。これでは、他の人には組めません。

ただし、こうした事情には扱いに注意が要るものもあります。本人の事情に関わることは、本人の了解を得たうえで、必要な範囲だけを共有する形にしてください。誰でも見られる場所に、私的な事情を書き並べるのは避けてください。

希望と穴埋めの扱いを決める

組む作業が難しくなるのは、希望と必要人数が合わないときです。あらかじめ決めておくと、そのつど悩まずに済みます。

  • 希望はいつまでに出してもらうのか
  • 締切を過ぎた希望は、どう扱うのか
  • 希望が重なったとき、どういう順で調整するのか
  • 急な欠員が出たとき、誰がどう埋めるのか
  • 穴埋めに入った人に、どう報いるのか

三つ目は、公平さに関わります。同じ人の希望ばかりが通っている状態は、周りに伝わります。前回誰が譲ったかを記録しておき、順番で調整する形にすると納得が得られます。

五つ目については、決めておかないと不満が溜まります。いつも同じ人が穴を埋めているなら、その負担は目に見えていません。誰が何回入ったかを記録し、何らかの形で報いる仕組みを考えてください。

急な欠員に、どう備えるか

体調不良や家庭の事情による欠員は、必ず起きます。起きてから考えるのではなく、備えを決めておいてください。

  • 連絡はどこに、どういう手段で入れるのか
  • 受けた人が、次に誰へ連絡するのか
  • 誰に声をかけるかの順番を決めているか
  • 誰も入れない場合、どう営業するのか
  • その判断を、誰がしてよいのか

四つ目を決めていない店が多くあります。「なんとかする」で済ませていると、結局は社長が出ることになります。一部の業務を止める、営業時間を短縮する、といった選択肢をあらかじめ用意しておいてください。

五つ目については、その場にいる責任者が判断してよい範囲を決めておいてください。社長に連絡がつかない時間帯にも、判断が必要になります。権限委譲と役割分担で扱った線引きと同じ考え方です。

なお、労働時間や休日の扱いについては、決まりに従う必要があります。人手が足りない場面ほど無理が生じやすいため、社会保険労務士に相談したうえで、社内の決まりとして整理しておいてください。労務トラブルを未然に防ぐもあわせてご覧ください。

偏りが見えているかを確かめる

負担の偏りは、感覚では気づけません。次のことを、月ごとに数えてみてください。

  • 一人あたりの勤務日数と、時間の合計
  • 土日や祝日に入っている回数
  • 早番と遅番の割合
  • 急な穴埋めに入った回数
  • 希望が通った回数と、通らなかった回数

数えてみると、特定の人に偏っていることに初めて気づくことがあります。本人が文句を言わないほど、偏りは見えません。そして、黙って引き受けてきた人ほど、辞めるときは突然です。

二つ目については、家庭の事情がある方に配慮した結果、独身の方に集中しているという形がよく起こります。配慮は必要ですが、その負担が誰かに寄っていることも見えている必要があります。見えていれば、別の形で報いることもできます。

組みやすさは、採用と定着にも関わる

シフトの組み方は、単なる事務ではありません。働く側から見ると、次のように映ります。

  • 希望がどれくらい通るのか
  • 予定が何日前に確定するのか
  • 急な変更がどれくらいあるのか
  • 断りにくい雰囲気があるかどうか

二つ目は、応募の段階から気にされる点です。予定が直前まで決まらない職場は、他に予定を入れられません。これは、他の仕事や家庭の事情と両立したい方にとって決定的な条件になります。確定の時期を早められるなら、それ自体が募集の際の強みになります。

三つ目については、変更が多い職場は、続けてもらえません。一度決めたシフトを、こちらの都合で頻繁に動かしていないかを確かめてください。変更が必要な場合も、依頼であって指示ではない、という姿勢が伝わるかどうかで受け取られ方が変わります。

この点が整っていると、限られた時間なら働けるという方を採用しやすくなります。人手不足の中では、この幅を広げられるかどうかが実際に効いてきます。スタッフの確保と定着もあわせてご覧ください。

紙で始めて、必要なら仕組みへ

シフトの管理をどうするかは、規模によって答えが変わります。いきなり仕組みを入れる必要はありません。

  • まず、様式を一つに統一する
  • 置き場所を決め、全員が同じものを見る状態にする
  • 希望を出す形と締切を揃える
  • ここまでで回るなら、そのまま続ける
  • 人数が増え、集計や共有が負担になったら仕組みを検討する

二つ目が、実は最も効きます。複数の場所に別々の版があると、どれが最新か分からなくなります。一か所に決めるだけで、行き違いは大きく減ります。

五つ目に進む場合は、今の運用のどこが負担なのかを特定してから選んでください。希望を集めるのが大変なのか、組む作業そのものが大変なのか、共有が大変なのか。困っている場所が違えば、必要なものも違います。デジタル化の始め方もあわせてご覧ください。

組んだ後に確かめること

シフトは、組んだ時点で終わりではありません。月が終わったら、次を振り返ってください。

  • 予定どおりに回ったか、変更が何回あったか
  • 変更の理由は何だったか
  • 人が足りずに困った時間帯はどこか
  • 逆に、手が余っていた時間帯はないか
  • 設定した必要人数が、実態と合っていたか

四つ目は、見落とされがちです。足りない時間帯には気づきますが、余っている時間帯には誰も気づきません。ここに気づければ、その分を足りない時間帯に回せます。人を増やさずに解決できる余地が、まだ残っているかもしれません。

五つ目については、必要人数は一度決めたら固定ではありません。来店の状況も、設備も、扱う業務も変わります。半年に一度は見直してください。

まとめ

ガソリンスタンドのシフト管理は、無理のない設計、多能工化による柔軟な配置、負担の平準化を組み合わせることで、人手不足に強い体制へと近づきます。シフト作成の属人化を防ぐ工夫も、安定した運営を支えます。

限られた人材を無理なく生かす仕組みは、日々の運営と将来の選択肢の両方を支えます。自店に合った形を、必要に応じて専門家の視点も交えながら整えていきましょう。