まず必要な資金の全体像を把握する
資金調達を考える前に、譲り受けにどれだけの資金が必要になるのかを把握することが出発点です。必要なのは事業を買い取る対価だけではありません。引き継いだ後の運転資金や、設備の更新に備えた資金など、取得後にかかる費用まで見込んでおく必要があります。
ガソリンスタンドは、地下タンクをはじめとする設備を抱える業態です。譲り受けた後に想定外の投資が必要になる可能性もあるため、資金には一定の余裕を持たせておくことが望まれます。全体像を早めにつかんでおくほど、無理のない計画が立てられます。
自己資金と借入のバランス
買収資金は、自己資金だけでまかなえることは多くありません。多くの場合、自己資金と金融機関からの借入を組み合わせて用意します。自己資金の割合が高いほど返済の負担は軽くなりますが、手元資金を使い切ってしまうと、取得後の運営に支障が出かねません。
大切なのは、手元にどれだけ残しておくかを含めてバランスを考えることです。取得直後は何かと出費が重なりやすいため、余力を残した資金計画が安心につながります。どの程度を自己資金でまかない、どの程度を借入に頼るかは、事業の状況に応じて慎重に見極めます。
自己資金をどれだけ入れるかは、返済の重さを直接左右します。多く入れれば返済は軽くなりますが、手元の現金が薄くなります。少なく入れれば手元は厚いものの、毎月の返済が重くのしかかります。どちらが正しいという答えはありませんが、判断の軸は置けます。
その軸は、想定外のことが起きたときに、何か月耐えられるかです。設備が壊れた、大口の取引先が離れた、思わぬ修繕が必要になった。譲り受けの直後ほど、こうした出来事は起こりやすいものです。手元の現金は、その期間を買うためのものだと考えてください。自己資金をすべて頭金に入れてしまうと、この余裕がなくなります。
金融機関からの借入を検討する
借入を検討する際は、取引のある金融機関に早めに相談することが基本です。事業の譲り受けに対する融資は、買い手の信用力や、譲り受ける事業の見通しをもとに判断されます。事業計画を分かりやすく示せるかどうかが、話の進み方を大きく左右します。
金融機関は、譲り受ける事業がこれからどう利益を生み、どのように返済されていくのかを重視します。ガソリンスタンドの事業がどのような収益構造を持ち、買い手のもとでどう伸ばせるのかを、根拠を持って説明できることが求められます。準備した資料の質が、信頼に直結します。
保証制度の活用も視野に入れる
借入にあたっては、公的な保証制度の活用も選択肢になります。保証を利用することで、金融機関が融資に応じやすくなる場合があります。事業承継やM&Aを後押しする支援の枠組みも整えられてきており、こうした制度を知っておくと資金調達の幅が広がります。
制度は要件や手続きが定められており、どれが自社に適するかは状況によって異なります。使える枠組みを漏れなく把握し、適切に組み合わせるには、専門的な知識が役立ちます。早い段階で相談し、利用できる制度を確認しておくことをおすすめします。
制度の内容や使える条件は、時期や地域、事業の状況によって変わります。過去に聞いた話や、他の方から伝え聞いた条件が、今の自分に当てはまるとは限りません。使えるつもりで計画を組んだのに、実際には対象外だったという行き違いは避けたいところです。
ですから、名前を知っている制度があっても、必ず窓口や金融機関に、自分の場合はどうかを確認してください。相談の際に、譲り受けようとしている事業の概要と、必要な金額の見込みを整理して持っていくと、話が具体的に進みます。
無理のない返済計画を立てる
資金を借りて事業を譲り受ける以上、返済の計画は避けて通れません。譲り受けた事業が生み出す利益の範囲で無理なく返せる計画かどうかが、その後の経営の安定を左右します。返済に追われて事業への投資ができなくなっては、本末転倒です。
返済計画は、楽観的な見通しではなく、慎重な前提で立てることが肝心です。売上が思うように伸びない局面や、想定外の出費があっても耐えられる余裕を織り込んでおきます。取得後に描いた計画とのずれが生じたときにも、早めに手を打てるよう、定期的な見直しを前提にしておくとよいでしょう。
資金調達は交渉と並行して準備する
資金調達は、相手との交渉が固まってから慌てて動くのではなく、早い段階から並行して準備しておくことが理想です。資金の目処が立っていれば、交渉の場でも自信を持って臨めますし、相手にも真剣度が伝わります。反対に、資金の見通しが不透明なままでは、話がまとまりかけても最後で止まってしまうことがあります。
譲り受けの検討と資金の準備を並行して進めるのは、経験がないと負担の大きい作業です。どの段階で何を準備すべきかを見通しながら進めるには、M&Aの実務に精通した支援者の存在が心強い助けになります。
並行して進めるべき理由は、資金の見通しが立っていない状態では、交渉で不利になるためです。売り手から見れば、本当に払えるのかどうかが分からない相手とは、話を先に進めにくいものです。ほかに手を挙げている相手がいれば、そちらが優先されます。
とはいえ、金額も条件も固まっていない段階で、正式な申し込みができるわけではありません。現実的なのは、取引のある金融機関に、どういう案件を検討しているかを早めに伝えて、感触を確かめておくことです。守秘の取り決めがある場合、どこまで伝えてよいかは事前に仲介や専門家に確認してください。
専門家と一緒に道筋を描く
買い手にとっての資金調達は、必要額の把握、自己資金と借入のバランス、金融機関との対話、保証制度の活用、返済計画と、考えるべき論点が幾つも連なります。これらを一人で組み立てるのは容易ではありません。だからこそ、業界と実務の両方に詳しい専門家と一緒に道筋を描くことが有効です。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化し、譲り受けを検討する買い手の支援も行っています。資金の見通しから相手探し、成約後の引き継ぎまで伴走します。ガソリンスタンドの譲り受けをお考えの方は、相談無料・秘密厳守でお気軽にご相談ください。
譲渡代金だけを用意しても、足りない
資金の計画で最も多い見落としは、譲渡代金さえ用意すれば済むと考えてしまうことです。実際には、代金を払った翌日から、事業を回すためのお金が別に要ります。ここを織り込まずに借入の枠を決めると、引き継いだ直後に資金が詰まります。
SS の場合、この運転資金は決して小さくありません。燃料の仕入代金は先に出ていき、掛売の回収は後になります。取引量が大きいほど、この立て替えの額も大きくなります。前の経営者がどれだけの資金を常に寝かせて回していたのかを、必ず確認してください。
あわせて、代金以外の費用も見ておく必要があります。調査にかかる費用、専門家への報酬、名義の変更に伴う手続きの費用など、譲り受けの過程で発生するものがあります。何がどれだけ必要になるかは、譲渡の形や規模によって変わるため、話を進める段階で仲介や専門家に一覧を出してもらってください。
引き継いだ直後は、数字が落ちるものと考える
返済の計画を立てるとき、譲り受ける事業の直近の数字をそのまま使いたくなります。しかし現実には、経営者が変わった直後は、多くの場合いったん数字が下がります。
理由はいくつもあります。前の経営者との関係で続いていた取引が離れる、従業員が入れ替わって現場の力が落ちる、常連のお客さまが様子を見る。どれも珍しいことではなく、むしろ起きるのが普通です。回復には、それなりの期間がかかります。
ですから、返済の計画は、直近の数字ではなく、落ちた状態でも回るかどうかで組んでください。想定より順調にいけば、繰り上げて返せばよいだけです。逆に、順調にいくことを前提に組んだ計画は、少しの下振れで行き詰まります。この余裕をどれだけ見ておくべきかは、事業の中身によって変わるため、金融機関や専門家と数字を突き合わせて決めてください。
設備の更新費用を、最初から勘定に入れる
SS を譲り受けるときに、他の業種と大きく違うのが、設備の存在です。地下のタンク、計量する機器、洗車の設備。いずれも寿命があり、いずれ更新か対応が必要になります。そしてその費用は、まとまった額になります。
厄介なのは、この負担が譲り受けた直後の数字には現れないことです。今は動いているのですから、日々の収支には出てきません。ところが数年後に、まとまった支出として一度に来ます。返済がまだ残っている時期にそれが重なると、非常に苦しくなります。
ですから、資金の計画には、返済とは別に、設備のための積み立てを組み込んでください。そのためには、それぞれの設備がいつ設置されたもので、これまでどう手入れされてきたかを知る必要があります。譲り受ける前の調査で、この点は必ず確認すべき項目です。何をどこまで確認すべきかは設備の種類によるため、設備業者や専門家に同席してもらうことをお勧めします。
返すお金は、その事業が生む利益から出る
借入の相談をするとき、話の中心は担保や保証に向かいがちです。もちろん重要な要素ですが、根本は別のところにあります。返済の原資は、譲り受けた事業がこれから生む利益です。ここが成り立たなければ、担保をどう積んでも、いずれ行き詰まります。
ですから、資金の計画を立てる作業は、実は事業の計画を立てる作業と同じです。この店が年にどれだけの利益を生み、そのうちいくらを返済に回せるのか。この数字が出せていなければ、いくら借りるべきかも決められません。
そして、この計算をしてみた結果、返済に回せる額が思ったより小さいのであれば、それは借り方を工夫する場面ではなく、価格や条件を見直す場面です。無理な借入で成立させた譲り受けは、その後の何年かをずっと苦しくします。金融機関に相談する前に、この計算を自分の手で一度やっておいてください。
土地や建物の権利関係を、先に確かめる
資金の相談を進めるうえで、早い段階ではっきりさせておきたいのが、店舗の土地と建物がどうなっているかです。所有しているのか、借りているのか。借りている場合、その契約は経営者が変わっても続くのか。
ここが不確かなままだと、借入の相談自体が進みません。担保として扱えるかどうかにも関わりますし、そもそも事業が続けられるかという前提に関わります。借地の場合、地主の承諾が必要になることもあります。
この確認は、資金の話より先に済ませておくべきです。契約の内容や必要な手続きは個別に異なるため、契約書を用意したうえで、専門家に読んでもらってください。後から判明して計画全体を組み直すより、はるかに手間が少なくて済みます。
まとめ
ガソリンスタンドを譲り受ける買い手にとって、資金調達は成否を分ける重要な要素です。まず必要額の全体像を把握し、自己資金と借入のバランスを取り、金融機関や保証制度を上手に活用しながら、無理のない返済計画を立てることが基本の道筋になります。
資金の準備は、交渉と並行して早めに進めることが肝心です。論点が多く一人では組み立てにくい作業だからこそ、業界と実務に精通した専門家の伴走を得ながら、着実に道筋を描いていきましょう。