なぜガソリンスタンドを買うのか
買収の目的は大きく3つに分かれます。ひとつは同業による規模の拡大。仕入れ条件の改善と管理コストの分散を狙うものです。
ふたつめは、幹線道路沿いという立地の取得。EV充電拠点、コンビニ、飲食、洗車専門店など、燃料以外の用途を見据えた取得です。みっつめは、燃料の安定調達。運送会社や建設会社が、自社車両向けの給油拠点を確保する目的で取得するケースがあります。
目的によって、見るべき指標が変わります。燃料販売を続けるなら販売数量と粗利、立地目的なら土地の形状と接道、自家消費なら位置と処理能力が中心になります。
買収案件はどう探すのか
売却を検討しているガソリンスタンドが、その意向を公にすることはまずありません。従業員や掛売り顧客への影響を避けるため、秘密保持を前提に水面下で進むのが通常です。したがって、公開情報からガソリンスタンドの買収案件を探すのは現実的ではありません。
業界に特化した仲介・アドバイザーに、買収の希望条件をあらかじめ伝えておくのが最も確実な方法です。エリア、規模、セルフの有無、併設事業、土地の所有形態といった条件を登録しておけば、条件に合う相談が入った段階で打診を受けられます。
地下タンクと土壌のリスク
ガソリンスタンドの買収で最大の論点が、地下タンクと土壌です。
地下タンクは、設置年、腐食防止措置の有無、漏えい検査の記録を確認します。設置から40年を超えるタンクは、規制対応や更新の必要性が高まります。将来の撤去費用も見込んでおく必要があります。
土壌については、過去に漏えいの記録がないか、周辺で問題が起きていないかを確認します。調査を実施するかどうかは費用と時間の兼ね合いですが、跡地の転用を目的とする買収であれば、実施を前提に考えるべきです。土壌汚染リスクが売却や土地活用に及ぼす影響もあわせてご覧ください。
許認可の確認
危険物施設の許可、揮発油販売業の登録、そして危険物保安監督者の選任。これらが適正に維持されているかを確認します。
株式譲渡であれば許可は法人に残りますが、事業譲渡では譲受側で取り直しが必要です。取得までの期間を見込まずに日程を組むと、引き継ぎ後に営業できない空白が生まれます。危険物取扱者の資格を持つ従業員が残るかどうかも、事業継続の前提として確認してください。
買収相場の考え方
ガソリンスタンドの買収相場は、時価純資産に営業利益の数年分を加える考え方が土台になります。ただしこの業態では、土地の評価と地下タンクの将来費用が価格を大きく動かします。
自社所有の土地であれば不動産価値が加算されますが、そこから地下タンクの撤去費用や土壌対応の見込み額が控除されます。この差引きをどう見積もるかが、交渉の中心になります。売り手が撤去費用を過小に見ている場合も多く、丁寧に説明することが合意への近道です。
新規参入で気をつけること
ガソリンスタンドの新規参入を検討する企業に、最もお伝えしたいのは人材の問題です。危険物取扱者の資格者がいなければ営業できません。買収時に在籍していても、退職すれば事業が止まります。
処遇の変更は慎重に進め、前経営者に一定期間残ってもらう設計を検討してください。掛売り顧客や灯油の配送先への説明も、前経営者から行うほうが受け入れられやすくなります。