ものづくり補助金とはどんな制度か
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が生産性の向上や革新的なサービスの提供に取り組む際、その設備投資などを後押しする趣旨の制度です。名前から製造業向けと思われがちですが、対象は製造業に限られず、サービス業を含め幅広い業種が活用の対象になり得ます。ガソリンスタンドも、事業の付加価値を高める取り組みであれば検討の余地があります。
大切なのは、単に古くなった機械を買い替えるという発想ではなく、投資によってどのように生産性が高まり、新しい価値が生まれるのかという視点です。制度の趣旨を正しくつかむことが、活用への第一歩になります。詳しい要件や対象の範囲は制度の見直しによって変わることがあるため、検討の段階で専門家に確認することをおすすめします。
ガソリンスタンドでの活用が考えられる場面
ガソリンスタンドでは、給油という主力事業に加え、洗車や車検、整備、タイヤ交換といった油外の分野に力を入れる動きが広がっています。こうした分野で、これまで手作業に頼っていた工程を新しい設備で効率化したり、これまで提供できなかったサービスを新たに始めたりする取り組みは、生産性向上や革新的サービスという制度の趣旨と親和性があります。
たとえば、作業時間を短縮する新しい機器の導入や、顧客により質の高いサービスを届けるための設備更新などが、投資の候補として考えられます。自社の強みをどこで伸ばすのかを見極めたうえで、それを支える投資を描くことが、活用の起点になります。
候補が複数あるときは、「今いちばん困っていること」から選んでください。効果が大きそうなものより、困っている度合いが強いもののほうが、導入後に使われます。困っていない領域に入れた設備は、便利であっても使う動機が弱く、そのまま使われずに終わることがあります。
「生産性向上」という視点で投資を描く
この制度で重視されるのは、投資が生産性の向上につながるという道筋です。同じ人数、同じ時間でより多くの、あるいはより質の高いサービスを生み出せるようになるか。その説明が求められます。ガソリンスタンドであれば、限られた人員のなかで一人あたりが生み出す価値をどう高めるかを、具体的に描くことが鍵になります。
ここで大切なのは、投資の前後で何がどう変わるのかを、自分の言葉で語れることです。作業がどれだけ楽になり、どんなサービスが新しく提供できるようになるのか。そのイメージが明確であるほど、計画に説得力が生まれます。逆に、漠然と設備を新しくしたいというだけでは、趣旨に沿った投資として描きにくくなります。
申請から活用までのおおまかな流れ
制度の活用は、思い立ってすぐ資金が手に入るというものではありません。まず公募の要件を確認し、それに沿った事業計画を練り上げ、申請を行います。審査を経て採択されてはじめて、計画に沿った投資に進むという段取りになります。全体として相応の時間がかかることを前提に、余裕を持って動くことが大切です。
- 制度の趣旨と要件を確認する
- 自社の課題と投資の狙いを整理する
- 事業計画をまとめて申請する
- 審査・採択を待つ
- 採択後に計画に沿って投資を実行する
- 実績を報告し、必要な手続きを行う
採択された後にも、実績の報告など一定の手続きが続きます。手を挙げて終わりではなく、計画を実行し、その成果を示すところまでが一連の流れです。全体像を早めに把握しておくと、落ち着いて臨めます。
採択後の報告と継続的な取り組み
この種の制度は、投資を実行した後にも、事業の成果を報告する仕組みが設けられていることが一般的です。計画通りに投資が使われ、狙った効果が出ているかを確認するためのものです。したがって、申請の段階から、実行と報告まで見据えて計画を組み立てておくことが望まれます。
報告の負担を過度に恐れる必要はありませんが、計画と実態が大きくずれないよう、日ごろから記録を残しておく姿勢が役立ちます。制度を一度きりのものと捉えず、事業を継続的に磨いていく取り組みの一部として位置づけると、投資が生きてきます。
活用にあたって気をつけたい点
制度の活用にあたっては、いくつか注意しておきたい点があります。まず、補助はあくまで投資の一部を後押しするものであり、自社の負担がなくなるわけではありません。資金繰り全体を見渡し、無理のない範囲で投資を計画することが前提になります。
- 公募には期間があり、時期を逃すと申請できないこと
- 採択されるとは限らず、計画の質が問われること
- 採択後にも実績の報告などの手続きが続くこと
- 制度の要件は見直されることがあること
これらを踏まえると、制度ありきで投資を決めるのではなく、まず自社にとって必要な投資を見定め、そのうえで活用できる制度を探すという順序が健全です。判断に迷う点は、専門家に相談しながら進めるのが安心です。
専門家に相談しながら進める安心
補助金の制度は要件が細かく、公募のたびに内容が見直されることもあります。自社だけで最新の情報を追い、計画に落とし込むのは負担が大きいものです。業界に詳しい専門家に相談することで、自社の投資がどの制度と相性が良いか、どう計画を描けば趣旨に沿うかが見えてきます。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、ガソリンスタンド(SS)業界に特化して、事業承継やM&A、企業価値向上、補助金の活用をワンストップで支援しています。設備投資をどう描くかという段階から、お気軽にご相談ください。金額や補助率などの具体的な条件は最新の情報を確認する必要があるため、あわせてご案内します。
「生産性が上がる」を自社の言葉に置き換える
生産性の向上という言葉は、そのままでは計画に書けません。自社の現場で、何がどう変わることなのかに置き換える必要があります。ガソリンスタンドの場合、次のような形になります。
- 同じ人数で、これまでより多くの作業をこなせるようになる
- これまで外に出していた作業を、自社でできるようになる
- 一つの作業にかかる時間が短くなり、他のことに手を回せる
- 手作業で起きていたやり直しが減る
- 資格や熟練が要る作業を、より多くの人ができるようになる
二つ目は、整備を併設している店で当てはまることがあります。これまで他所に頼んでいた作業を自社で行えるようになれば、外に出ていた分が自社に残ります。効果を説明しやすい形の一つです。
五つ目は、この業種では特に意味があります。一人しかできない作業があるということは、その人が休めば止まるということです。設備によってできる人が増えるなら、それは効率の話であると同時に、事業が続くかどうかの話でもあります。
投資の前後を数字で挟む
効果を説明するには、前と後の両方が要ります。導入を決める前に、次のことを測っておいてください。後から遡って測ることはできません。
- その作業に、今どれだけの時間がかかっているか
- 一日または一月に、何回発生しているか
- 何人で行っているか
- やり直しや手戻りが、どれくらいの頻度で起きているか
- 外に出している作業があるなら、その費用
測り方は厳密でなくて構いません。数日間だけでも実際に時計で測ってみると、感覚とのずれが見つかることがあります。「五分くらい」と思っていた作業が十五分かかっていた、というのはよくあることです。
そして、この測定は申請のためだけの作業ではありません。どこに時間がかかっているかが分かれば、設備を入れる以外の手も見えてきます。測った結果、設備ではなく手順の見直しで足りると分かることもあります。それは失敗ではなく、良い発見です。
導入したものを使いこなすまで
新しい設備は、置いた日から効果が出るわけではありません。使いこなすまでの期間を、計画に織り込んでおいてください。
- 誰が操作を覚えるのか、その時間をどう確保するか
- 操作を覚えるあいだ、これまでの作業をどう回すか
- 導入直後は、かえって時間がかかる可能性がある
- 安定するまでにどれくらいかかると見ているか
- その期間中の、売上や作業量への影響
三つ目を想定していないと、導入直後に「失敗だった」と感じることになります。慣れていない作業が遅いのは当然です。ここで元のやり方に戻してしまうと、投資が無駄になります。あらかじめ「最初のひと月は遅くなる」と全員に伝えておいてください。
また、操作を覚える人を一人に限定しないでください。その人が辞めたり休んだりした時点で、設備が使えなくなります。少なくとも二人、可能なら三人が扱える状態を目指してください。権限委譲と役割分担で扱った考え方と同じです。
報告と、その後に続くこと
採択された場合、実施の後にも作業が続きます。次のことを、導入の時点で決めておいてください。
- 報告に必要な資料を、誰が、どこに集めるのか
- 効果を示す数字を、どういう形で記録し続けるのか
- 報告が何年にわたって続くのか
- 導入した設備の扱いに、どういう制約がつくのか
四つ目は、承継や売却を考えている場合に重要です。補助を受けた設備は、その後の処分について制約がかかることがあります。数年以内に代替わりや売却の可能性があるなら、この点を申請の前に必ず確認してください。後から知ると、判断が縛られます。
なお、対象となる事業者や経費、報告の内容、制約の期間は、制度ごと、回ごとに異なります。本記事は投資を成果につなげるための考え方の整理までとし、条件の中身は必ず公募要領と窓口でお確かめください。
設備を選ぶときに見落とされること
どの設備を入れるかを決めるとき、性能や価格に目が行きます。しかし現場では、次のような点が使い勝手を大きく左右します。
- 設置する場所に、実際に収まるか(搬入の経路も含めて)
- 電源や配管など、付帯する工事が必要か
- 使うために資格や講習が要るか
- 消耗品や部品が、必要なときに手に入るか
- 故障したときに、どれくらいで来てもらえるか
- 何年くらい使える見込みか
二つ目は、見積りに含まれていないことがあります。本体の価格だけを見て決めると、工事の費用が後から乗ってきます。見積りを取る段階で、付帯する工事まで含めた金額を出してもらってください。
五つ目は、この業種では特に重要です。設備が止まれば、その作業ができなくなります。近くに対応できる拠点があるかどうかで、実際の使いやすさが変わります。安さだけで選ぶと、ここで困ることがあります。
複数の業者から見積りを取るときは、これらの条件を揃えたうえで比べてください。設備投資資金の調達方法の比較で、見積りを比べる際の観点を扱っています。
まとめ
ものづくり補助金は、生産性向上や革新的なサービスに向けた設備投資を後押しする趣旨の制度で、ガソリンスタンドの油外強化や設備更新にも活用の余地があります。大切なのは、投資によって何がどう変わるのかを明確に描き、制度の趣旨に沿った計画としてまとめることです。
制度の要件や具体的な条件は変わりうるため、最新の情報の確認と、業界に詳しい専門家への相談を欠かさないことが安心につながります。まずは自社に必要な投資を見定めるところから、一歩を踏み出しましょう。