なぜ条例が増えているのか
金属スクラップや使用済自動車を扱うヤードのうち、適正な管理がされていないものが問題視されてきました。油の流出、火災、騒音、盗品の流通といった懸念です。
使用済自動車については自動車リサイクル法がありますが、金属スクラップ一般を扱うヤードは、その枠に収まりません。この隙間を埋める形で、都道府県や市町村が条例を整備してきました。
結果として、同じ業態でも所在地によって求められることが違うという状況が生まれています。
よく見られる規制の型
条例の内容は自治体ごとに異なりますが、共通して見られる要素があります。自社の条例を読むときの手がかりとして整理します。
① 届出または許可
一定の面積を超える、または一定の品目を扱うヤードについて、事前の届出や許可を求めるものです。対象になるかどうかの基準が条例ごとに違います。
② 保管の基準
積み上げの高さ、囲いからの距離、品目ごとの区分。倒壊と飛散を防ぐための基準です。
③ 遮蔽
外から中が見えないようにする、飛散を防ぐという目的で、囲いや目隠しの設置を求めるものです。高さや構造が指定されることがあります。
④ 床と排水
油が染み込まない構造の床、排水の処理、油水分離設備。自動車リサイクル法の要件と重なる部分です。
⑤ 作業時間の制限
騒音への配慮から、作業できる時間帯を定めるものです。早朝や夜間の操業が制限されます。
⑥ 記録と報告
取扱量の記録、定期的な報告を求めるものです。既存の帳簿と別に作る必要があるかを確認してください。
⑦ 責任者の選任
管理する責任者を定め、届け出ることを求めるものです。この人物が退職したら届出が必要になります。
自社に適用される内容の調べ方
次の順序で確認してください。
- 都道府県の条例を確認する:自治体のサイトで「ヤード」「金属くず」「再生資源」といった語で探します。
- 市町村の条例も確認する:都道府県と市町村の両方に規定がある場合、両方に従うことになります。
- 窓口に問い合わせる:条文を読んでも自社が対象か判断できないことが多くあります。図面と扱う品目を持って相談してください。
- 確認した内容を記録する:日付、担当者、回答を残します。数年後に人が代わったとき、この記録が効きます。
2番目を飛ばしがちです。都道府県だけ確認して安心していると、市町村の規定に抵触していることがあります。
複数拠点を持つ場合
拠点が別の自治体にあれば、それぞれ違う条例が適用されます。管理が一気に複雑になります。
実務としては、次のような表を作ってください。
- 拠点ごとに、適用される条例の名称
- 届出の有無と、届出した日
- 責任者として届け出ている人の氏名
- 報告義務があれば、その時期
- 作業時間の制限
この表を複数人が見られる場所に置く。拠点を任せている責任者にも共有する。1人の頭の中にある状態は必ず崩れます。
条例が新設・改正されたとき
この分野は動きがあります。今は規制がない地域でも、数年後に整備される可能性があります。
新設される場合、既存の事業者には猶予期間が設けられるのが通常です。ただし猶予期間内に施設を改修する必要があるため、早く知るほど計画が立てやすくなります。
情報の追い方としては、自治体の広報、業界団体からの通知、同業者との情報交換があります。年に一度は自治体のサイトを確認する習慣にしてください。
承継の場面でどう見られるか
買い手は必ず確認します。具体的には次の点です。
- 適用される条例に対して、届出が済んでいるか
- 施設が基準を満たしているか
- 満たしていない場合、改修に必要な費用と期間
- 過去に指導を受けた履歴
未対応であれば、改修費用が価格から差し引かれます。しかも買い手は余裕を見て見積もるため、自分で改修するより差引額が大きくなることがあります。
逆に、対応済みのヤードは追加投資なしで操業を続けられます。これは明確な価値です。承継を考えているなら、条例対応は先に済ませておくほうが手元に残る金額が増えます。
条例と自動車リサイクル法の重なり
両方が適用される場合、厳しいほうに合わせるのが基本です。片方を満たしていれば足りる、という関係ではありません。
実務で混乱しやすいのは、次のような場面です。
- 自動車リサイクル法では舗装の範囲が限定的でよいが、条例で敷地全体が求められる
- 高さの制限が、法令と条例で異なる
- 届出の窓口が別で、様式も別
対応としては、要件を1枚の表に並べて、厳しいほうを採用するのが確実です。「どちらの話だったか」を都度考えなくて済みます。
移転や新設を考えるなら先に確認する
用地を探す段階で、その自治体の条例を確認してください。同じ県内でも、市町村によって求められるものが違うことがあります。
用地を取得してから「この市では届出が下りない」と分かる展開は、取り返しがつきません。候補地の段階で窓口に相談するという順序を守ってください。
あわせて、用途地域や都市計画上の制限も確認します。条例だけ見ていても足りません。
※ 条例の内容、対象範囲、手続きは自治体によって大きく異なります。自社に適用される内容は必ず所管の窓口へご確認ください。