なぜ解体業で後継者不足が深刻なのか
理由は3つあります。ひとつは、経営者の高齢化です。創業から数十年が経ち、80年代から90年代に事業を立ち上げた世代が引退期に入っています。
ふたつめは、事業の見通しの立てにくさ。スクラップ相場の変動、電動車の増加による部品構成の変化、法令対応の負担。子どもに「継げ」と言い切りにくい環境があります。
みっつめは、許可の壁です。解体業や破砕業の許可は、単に事業を引き継げば済むものではありません。この複雑さが、承継を先送りにさせています。
道1:従業員に譲る(社内承継)
現場を知る従業員に譲る方法です。ヤードの回し方も仕入れ先との関係も理解している人であれば、事業の継続性という点では最も安心できます。
ただし2つの壁があります。ひとつは資金。後継者が自社株を買い取るには相応の金額が必要で、金融機関からの借入や段階的な譲渡といった設計が要ります。もうひとつは個人保証です。オーナーではなかった人が、突然会社の借入に保証を入れることになります。
詳しくは従業員に譲りたい解体業|資金と保証の壁で扱っています。
道2:第三者に譲る(M&A)
他社に譲る方法です。後継者がいなくても事業と雇用を残せ、経営者は対価を得られます。個人保証も原則として解除されます。
解体業のM&Aで買い手になるのは、同業でエリアを広げたい会社、破砕まで内製したい会社、そして中古部品の調達を強化したい販売事業者などです。許可の取得に時間がかかる業種だからこそ、既に稼働している事業には引き継ぎ手がつきます。
株式譲渡であれば許可は法人に残るため、手続きの面でも現実的です。相手探しに半年から1年半程度かかる点を見込んでおいてください。
道3:廃業する
3つめは畳む道です。ただし解体業の廃業には、他業種にない負担があります。
ヤードに残った車両・部品・スクラップの処理、油水分離槽や設備の撤去、賃借地であれば原状回復、そして従業員の退職金。土地が自社所有でも、更地に戻す費用は小さくありません。許可の返納手続きも必要です。
これらはすべて経営者の負担として残ります。売却であれば支出が不要になるうえ対価がつくため、金額だけを比べても不利になることが多いのが実情です。廃業と承継の比較で具体的に扱っています。
先送りが選択肢を狭める
後継者不足そのものは、いまや珍しいことではありません。問題は、決断を先送りすることで選べる道が減っていくことです。
経営者が体調を崩してから動き出すと、時間的な余裕がないぶん条件面で妥協せざるを得ません。許可の更新を逃せば、事業そのものの価値が失われます。従業員が先に離職してしまえば、引き継ぐ相手の魅力も下がります。
元気なうちに3つの道を比較し、どれを選ぶかを決めておく。それだけで、いざというときの選択肢が残ります。