相場の基本的な考え方

中小企業のM&Aでは、時価純資産に営業利益の数年分を加える方法(年買法)が実務の中心です。解体業も例外ではありませんが、この土台に業態固有の調整が大きく乗ります。

重要なのは、帳簿上の純資産をそのまま使うわけではないという点です。土地の含み益、重機の実勢価値、在庫の実際に売れる金額、そして将来発生する原状回復費用。これらを時価に置き直したうえで評価します。

評価を押し上げる要素

解体業で高く評価されるのは、次のような会社です。

許可が揃っている——解体業・破砕業の許可、引取業・フロン類回収業の登録、産業廃棄物の許可。特に破砕業まで持っていると、処理を内製できるぶん収益性が高く見られます。取得に時間がかかる許可ほど、価値になります。

ヤードが自社所有で広い——保管能力は処理量の上限を決めます。自社所有であれば不動産としての価値も加わります。

仕入れルートが複数ある——ディーラー、整備工場、保険会社、レッカー業者、自治体。特定の1社に依存していないほど、収益の再現性が高いと評価されます。

販路が確立している——中古部品のEC販売、輸出、リビルト向けの供給先。スクラップ相場に左右されにくい収益源があると、評価は安定します。

評価を下げる要素

逆に、次のような状態は減額の対象になります。

保管数量が届出の上限を超えている、油水分離槽や排水設備が基準を満たしていない、周辺から苦情が出ている——法令面の不安は、買い手にとって将来の是正コストです。

在庫が動いていないのも問題です。数年前に外した部品が帳簿価額のまま残っていれば、買い手は実勢価格まで割り引きます。相場が下がった素材を抱えている場合も同様です。

そして、社長個人が仕入れも値付けも一人で回している状態。属人性が高いほど、譲渡後の継続性が疑われます。

原状回復費用という固有の論点

解体業の評価で特徴的なのが、原状回復費用の扱いです。ヤードを賃借している場合、契約終了時に更地に戻す義務があるのが通常で、その費用は数千万円規模になることもあります。

買い手はこの将来費用を織り込んで価格を提示します。売り手が費用の見込みを把握していないと、交渉の終盤で大きく減額されて驚くことになります。早い段階で見積もりを取り、自分で数字を持っておくことをおすすめします。

詳しくはヤードの原状回復にかかる費用で扱っています。

土地の評価をどう見るか

ヤードが自社所有であれば、不動産としての価値が加算されます。ただし、解体業に使ってきた土地は用途が限られるため、周辺の相場がそのまま適用されるとは限りません。

市街化調整区域にあるか、接道条件はどうか、他業種への転用が可能か。こうした条件によって評価は変わります。事業の価値と土地の価値を分けて考え、それぞれどう扱うかを整理しておくと、交渉が明確になります。

自社の見立てを知るところから

ここまで挙げた要素は、いずれも会社ごとに事情が異なります。一般的な相場観だけで判断すると、実際の評価と大きくずれることがあります。

決算書3期分と許可関係の書類があれば、おおよその見立てを無料でお伝えできます。売ると決めていなくても構いません。まずは現在地を知るところから始めてみてください。