なぜ役員全員が対象になるのか

許可は会社に与えられますが、会社を動かすのは人です。適正な処理を行える体制かどうかを判断するため、役員の適格性が問われます。

そして、1人でも要件に触れれば会社として許可を受けられない仕組みになっています。「その人だけの問題」では済みません

対象になるのは、代表者だけではありません。取締役、監査役、そして実質的に経営を支配している者も含まれ得ます。名義上は役員でなくても、実態で判断される場合があります。

どういう事情が問われるのか

具体的な要件は法令で定められており、許可の種類によっても異なります。詳細は所管の窓口でご確認ください。一般に、次のような類型が関わります。

  • 一定の刑罰を受け、その後一定期間を経過していないこと
  • 過去に許可を取り消され、一定期間を経過していないこと
  • 暴力団員等に該当すること、またはその影響下にあること
  • 心身の状態により業務を適正に行えないこと
  • 破産手続開始の決定を受けて復権していないこと

2番目に注意してください。過去に他社で許可を取り消された経験がある人を役員に迎える場合、影響が及ぶ可能性があります

また、廃棄物処理法の許可と自動車リサイクル法の許可では、要件の範囲が異なる場合があります。両方を持っている会社では、それぞれについて確認が必要です。

いつ確認するのか

次の場面では、必ず事前に確認してください。

① 後継者を役員に迎えるとき

親族内承継でも確認が必要です。後継者本人だけでなく、同時に就任する役員全員が対象になります。

② 買い手側から役員が入るとき

株式譲渡では、買い手が役員を送り込みます。その人物が要件に触れないかを、契約を結ぶ前に確認する必要があります

譲渡が済んでから発覚すれば、許可が失われ、事業が止まります。取り返しがつきません。

③ 従業員を役員に登用するとき

長年働いてきた人でも、過去の事情は分かりません。

④ 家族を役員に入れるとき

形式的に入れる場合も、要件の対象になります。

⑤ 許可を新たに取得・更新するとき

この時点で全役員について確認されます。

どう確認するのか

実務上の難しさがあります。本人の過去を調べる手段は限られています。

現実的な方法を挙げます。

  • 本人に申告を求める:要件を示して、該当しないことを書面で確認する。
  • 誓約書を取る:許可の申請で求められる書類の形式に沿う。
  • 必要な証明書類を取得してもらう:申請に添付するものと同じ。
  • 買い手側の役員については、契約で表明保証を求める

4番目が承継の場面で重要です。「要件に該当しない」ことを契約上の約束として取り、違反した場合の扱いも定める。弁護士と設計してください。

そして、確認した記録を残してください。いつ、誰について、どう確認したか。行政の確認で問われた際に示せます

該当が判明したときの対応

就任前に判明した場合、その人を役員にしないという判断になります。

就任後に判明した場合は深刻です。取れる対応を挙げます。

  1. 速やかに所管窓口へ相談する:隠して発覚するのが最も悪い結果を招きます。
  2. 役員から退いてもらう:要件に触れる人を外す。
  3. 変更の届出を行う
  4. 専門家に相談する:弁護士、行政書士。

1番目を躊躇しないでください。自己申告と、行政に発覚した場合では扱いが違います

実質的な支配という論点

見落とされやすい点です。登記上の役員でなくても、実質的に経営を支配している者が対象になり得ます

次のような形が問題になり得ます。

  • 前経営者が役員を退いたが、実際には経営判断を行っている
  • 大株主が役員ではないが、実質的に指示している
  • 役員は名義だけで、別の人が動かしている

承継の場面で、前経営者が退任後も影響力を持ち続ける形は、この観点でも検討が必要です。顧問や相談役として関わるなら、役割と権限を明確にしてください。

承継の計画に組み込む

この確認は、承継のスケジュールに影響します。

順序としては次のようになります。

  1. 誰を役員にするかを決める(後継者、新任役員)
  2. それぞれについて要件の確認を行う
  3. 問題がなければ、株主総会で選任する
  4. 登記する
  5. 各許可・登録について変更の届出を行う

2番目を飛ばさないでください。3番目まで進んでから問題が判明すると、やり直しになります

そして、確認には日数がかかる書類があります。役員が複数いれば人数分の時間が必要です。承継のスケジュールに余裕を持たせてください。

役員構成を先に整える

承継を控えている場合、役員に誰を入れるかを早めに決めてください。後から入れ替えると、その都度の届出が必要になります。

確認すべき点を挙げます。

  • 後継者を役員に入れる時期
  • 登記上の役員と、実際に経営に関与している人が一致しているか
  • 名前だけ残っている役員がいないか
  • 親族を形式的に入れている場合、その必要性

3番目が見落とされやすいところです。登記に残っている限り、その人も要件の対象になります。関与していない役員は整理してください。

そして役員を増やす前に、その人の状況を確認してください。確認しないまま登記して、後から問題が発覚するほうが厄介です。

確認を年に一度の仕事にする

要件は一度確認すれば終わりではありません。役員の状況は変わります。

決算のタイミングで、役員全員について次を確認する運用をお勧めします。

  • この1年で変化がなかったか
  • 登記上の役員に変更がないか
  • 変更があった場合、届出を済ませているか

記録を残してください。確認した事実そのものが、体制を整えている証拠になります

※ 欠格要件の具体的な内容は法令で定められ、許可の種類によって異なります。また改正されることがあります。個別の判断は所管の窓口および専門家へご確認ください。