中小企業の事業承継の課題とは?円滑な事業承継のためにできることを解説!

事業承継とは?

中小企業や個人事業にとっても、事業承継は重要な課題です。あなたが経営者である場合、ある程度高齢になってくると事業を引き継ぐ後継者の選定が必要となります。

 

事業承継とは、会社などの「事業」を後継者に引き継いでもらうことです。事業承継では、現金や預貯金、不動産などの資産だけではなく「事業」そのものが引き継がれます。「事業」とは、会社の個別の資産だけではなく、会社の経営権やブランド、事業上のノウハウ、信用や取引先、知的財産、負債など、全てが含まれたものです。

 

中小企業とは?

中小企業とは、中小企業法において定義が定められており、事業規模が次に定める基準に合致するものです。

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

 

企業数という視点でみると、大企業は1万1,000社、中小企業は380万9,000社で、そのうち中規模企業が55万7,000社、小規模事業者が325万2,000社となっています。したがって、日本の法人の、約99.7%が中小企業に該当すると言えるでしょう。

業種 企業数 従業員数
大企業 1万1,000社 1,433万人
中小企業 380万9,000社 3,361万人
  そのうち

中規模企業

(55万7,000社) (2,234万人)
  そのうち

小規模事業者

(325万2,000社) (1,127万人)

 

中小企業における事業承継の問題は?

このように日本の法人の大部分を占める中小企業ですが、それだけに中小企業における事業承継の問題は、大きな社会的課題となっています。

中小企業の経営者を年代別で分類すると、60~70代が一番多く高齢化が進んでいます。高齢となると事業運営上必要な判断力や体力といったものも低下しますし、病気など健康上の理由で会社経営ができなくなってしまう可能性もあります。こうした際に、事業の後継者がいないと、会社を継続して健全な状態で運営していくことはできません。

そのため、中小企業の多くの企業では、事業承継を円滑に行うことが重大な課題となっています。しかし、その課題を解決できていない中小企業の経営者が多くいるのが現状なのです。

 

中小企業の事業承継できないことによる廃業数は増加しています

中小企業庁の統計によれば、2006年から2013年における中小企業の休廃業数は増加傾向となっています。

具体的には、東京商工リサーチによると2006年の中小企業の廃業数は20637件だったものが、2013年には28943件と増加しています。別のデータによる帝国データバンクによると、2006年には23999件だった廃業数が、2012年には26050件となっており、いずれにせよ増加傾向であることがわかりますね。廃業とは、企業の倒産数も含まれた数値ですが、倒産件数自体は増えていないため、中小企業においては、倒産以外の休廃業が増えている、という傾向があります。

また、休廃業を行っている企業における経営者の年齢は、65歳以上の高齢者の割合が特に増加しており、2006年には高齢経営者の割合は14.2%だったものが、2012年には45.6%にへと達しています。この傾向はさらに強くなっており2019年現在ですと、休廃業企業の半数程度が65歳以上の高齢経営者の場合であると言えるでしょう。

このような高齢経営者の廃業は、事業承継ができなかったためであると考えられます。日本の産業と雇用を守るためには、事業承継を円滑に行い、利益を上げている中小企業を存続させることが必要となります。

 

中小企業における事業承継が円滑に進まない理由とは?

中小企業における経営者の意向としてはできれば、自分の子供や親族などに事業を継いでほしいというもの。これは中小企業は非常に属人性が強い部分があるため、そうした傾向が多くなるのは否めないでしょう。それでは、この中でどういう理由によって、事業承継が円滑に進まないことになるのか見ていきましょう。

 

⑴後継者の資質や能力の不足

親族内承継では、後継者に経営者としての適切な資質や能力がない、というのが最も大きな課題となっており、中小企業庁による調査では、中規模企業の7割、小規模事業者の6割がここを課題として回答しています。

 

この課題を解決するためには、早期の後継者教育を行うことが必要となります。

後継者教育には時間がかかり、平均すると約10年はかかると言われています。従って、経営者自身がまだ健康で活力がある時期から開始し、経営に必要な知識やスキルを伝授したり、経営者としての経験や人脈を持てるようにすることが大切です。

また、経営者としての価値観や会社の経営理念も伝えていく必要があります。

 

⑵相続税や贈与税の負担が大きい

親族への事業承継においては、自社株式を無償で後継者に対して引き継ぐことがほとんどです。この場合、税金として、相続税や贈与税が課税されることとなります。

 

事業承継の場合、引き継ぐべき株などの評価額が非常に大きくなる傾向にあるため、高額な相続税や贈与税を支払う必要があり、これが負担となって事業承継が円滑に進まない理由になったりもします。

 

経営者が亡くなってから事業承継する場合には、相続を受けた方に相続税が発生します。

事業承継では、事業やそれに付随する建物、設備、株式など、様々なものを引き継ぎます。

これらを承継する場合、一般的な財産の相続と同様、の税率での相続税が発生します。

ここで問題となりやすいのが株式相続で発生する相続税です。上場企業の株式であれば、株価は明確ですが、非上場企業の株式の場合、株価は明確ではありません。そのため、相続税計算には、相続が発生した時点での株式の評価額を算出する必要があります。

 

また、贈与税は、株式を贈与の形で事業の承継をする者に送った際に発生します。相続税対策で生前贈与を実施した際にも発生します。株式の贈与によって発生する贈与税も、他の通常の贈与税で使われるものと同じ税率が適用されます。

 

ただし、事業承継の一環で株式を贈与する場合、贈与税の評価額当たりの税率が高いため、贈与する株式が多いと、税金の負担がかなり大きくなってしまう点に注意が必要です。

また贈与者が亡くなった場合、亡くなる3年前までの間に行われた贈与は、相続扱いになり、相続税に加算されてしまいます。

 

更に、贈与する株式は、贈与税の控除が発生する110万円以下分であれば非課税となるので、贈与税を払わずに事業承継分の株式を、後継者に引き継ぐことができます。ただし、少額ずつしか贈与できないため、必要な株式を譲渡するまでにかかる期間が長くなります。

 

⑶後継者がそもそも親族にいない

事業を引き継ぐ意思をもった後継者が親族内にいない場合も増えてきています。

以前の様に家業を継ぐのが当たり前の時代ではなく、子供が自由に職業選択するようになった昨今では、事業承継を引き受けてもらえないケースは多いです。

 

この場合、親族外承継やM&Aによる事業承継を選択肢として検討する必要がでてきます。

 

事業承継の方法とは?

それでは、事業承継の方法についてそれぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。上記で親族内承継の問題点については指摘しましたが、それ以外の従業員承継や、M&Aといった選択も検討するべきです。

 

(1)親族内承継

メリット

①一般的に、内部や外部の関係者から賛同を得られやすい。

②後継者を早期に決定することができるため、後継者教育等のための長期の準備期間を確保することが可能になる。

③相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の分離を回避することが可能となる。

 

デメリット

①親族内に、経営能力と意欲の両方をもった後継者候補がいるとは限らない。 

②相続人が複数いる場合、他の相続人への配慮が必要など、後継者の決定や経営権の集中に調整が必要となる。

 

(2)従業員等への承継

メリット

①優秀な役員や従業員に事業を承継できれば、社内の他の社員からの賛同を得やすい。

②社内で長期間勤務している従業員に承継する場合は、経営の一体性を保ちやすい。

 

デメリット

①親族内承継の場合と同様、従業員内に経営者となることへの強い意志を有している適任者がいないおそれがある。

②後継者候補の従業員に株式取得等のための資金力が無い場合が多い。

③個人債務保証の引き継ぎができない場合がある。

 

(3)M&A

メリット

①身近には適任な後継者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができる。

②現経営者が会社売却の利益を獲得することができる。

 

デメリット

①従業員の雇用の継続や、譲渡価格などの条件を満たす買い手を見つけるのが困難である。

②譲渡先の経営方針が異なる場合、経営の一体性を保つのが困難である。

 

以上のようにそれぞれの事業承継方法には、メリット・デメリットがあります。それぞれの方法をよく検討したうえで、専門家と相談しながら最適な事業承継方法を選択しましょう。

 

中小企業の事業承継をサポートする仕組みは?

上述のように、経営者の高齢化による事業承継ができずに廃業してしまう企業の増加は社会問題となっています。そのため、国や自治体が中心となって、税制の優遇措置や各種支援制度の充実化が図られています。こうした中小企業の事業承継をサポートする仕組みについてご紹介します。

 

(1)税制の優遇措置

贈与税においては年間110万円の基礎控除を受けることができ、暦年課税と、相続時精算課税の2つの控除があります。暦年課税は、基礎控除額までの贈与に対しては贈与税が課税されないというものとです。

 

相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫に対し財産を贈与した場合に特別控除額2,500万円の範囲内の金額には贈与税が課税されないという制度です。なお、相続時精算課税で相続時に合算される贈与財産の価額は、「贈与時の価額」を基準に算出されます。そのため、将来の相続時に、贈与時よりも価額が上昇しそうな場合は課税価格が有利となりますので、将来値上がりが予想される財産について適用するとよいでしょう。

 

上記の制度は一般的な贈与・相続時に適用されますが、事業承継による自社株式の贈与又は相続については、それ以外に事業承継税制を適用することができます。

 

平成30年度税制改正においては、事業承継税制の特例措置が設けられ、一定の要件のもと実質的には贈与税・相続税を税負担ゼロで後継者へ株式を承継することができるようになりました。

 

(2)資金調達における優遇制度

事業承継を行う際には、株式や資産の相続、贈与にかかる納税のための資金や、事業承継後の事業資金などが必要となります。このための資金を円滑に調達するために、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を条件に、事業承継時に必要な資金を融資する制度があります。

 

例えば、日本政策金融公庫では、経営承継円滑化法における都道府県知事の認定を前提に、後継者個人の株式取得資金の融資が可能となっています。日本政策金融公庫では、通常は個人に対する融資を行っていませんが、特例的な措置として行われています。また、信用保証協会でも、経営承継円滑化法における都道府県知事の認定を前提に、事業承継にかかる資金においては、通常の保証枠と別枠で信用保証を行ってくれます。

 

まとめ

中小企業における事業承継には、人やカネの問題が大きく関わってきますが、国や自治体のサポートも充実してきています。また、事業承継をサポートする専門事業会社も増えてきているため、まずは気軽にご相談してみてはいかがでしょうか?

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう


TOP